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探検の書 [祝780,000PV突破!]  作者: 火取閃光
第5章 魔法公国
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5-15 石喰討伐

「フィデリオ君……アレがワシ達の目標だよ。見えるかい……?」


「アレが……石喰(スティンター)……。思っていたよりも小さくて、蛇? っぽいんですね……」


 石喰の見た目は、前世の神話上の生物[ワーム]の様な魔物だった。


 身体中に、焦茶色の岩の様な皮膚に身を包み、大きな口を器用に使って周りの土や岩を捕食している。


 周囲の鉱山跡地内部は、石喰に捕食されたのかボコボコと穴が空いている。


 全長は5m前後で、意外と細い蛇っぽい見た目で、Hランク迷宮にいた魔物に比べると、見た目と雰囲気共に威圧感が感じなかった。


「そうだね。君は、野生の魔物を見るのは初めてかい?」


「いえ、初めてでは無いです。でも、基本的に迷宮の魔物を倒す事が多いです」


「なるほど……。野生の魔物は、迷宮の魔物に比べて小さい事が多いんだ。それは、迷宮内と外とでは、空気中に含まれる魔力量と濃度が関係しているんだ」


「……つまり、濃度と量が少ない外に適応した結果、軒並み体格が小さく進化した……って事ですか?」


「その通りさ。更に言えば石喰の場合、ワシ達が欲している宝玉が、奴等にとって胃袋代わりをする性質がある。それによって奴等は、効率良く土や石に含まれた魔力を食べているのさ」


「ヘェ〜それは凄い……」


「ただし、あの宝玉は、思った以上に衝撃に弱い。奴等を倒す為に必要な力をぶつけると、その衝撃で砕ける程だ……」


「なるほど、その為の鋼糸(こうし)ですね」


 ピーターの説明を受けて、事前に渡された魔鉄製のワイヤーの使い道が分かった。


「その通りさ。石喰は、身体中に石を身に纏っていて、まるで首が無い様に見えるが……生物である以上、締め殺す事は可能さ。


 鋼糸(これ)を使い、締め殺す又は首を切断する事で、宝玉を壊さずに採取する事が出来るんだ」


「なるほど……。一応聞いておきますが、魔法の使用は良いですか?」


「ダメだよ。あの宝玉には、属性魔力に染まりやすく、一度でも染まったら戻せない性質がある。


 だから、例え魔法一撃で殺せたとしても、宝玉が属性魔力に変化したら使い物にならないのさ。


 因みに、無属性魔法なら染めずに宝玉を採取出来るけど、大抵その一撃で宝玉が砕けるから、絶対にやらない様にね?」


「ふむ……確かに、Gランク級の難易度ですね……」


 ただ、倒すだけならあの程度、Hランク迷宮を踏破していなくても出来る。


 ただし、討伐武器の指定と魔法禁止と言う制約で、その難易度の高さに納得した。


「石喰の頭が、地面から浮いた時に山になった部分が、およそ首の部分だ。そこへ鋼糸魔鉄線をくくり付け、一気に切断すれば依頼完了だ。行けるかい?」


「了解です。取り敢えずやってみます」


 俺は石喰が、地面を捕食する瞬間をジッと待つ。


 頭を上げている瞬間の奴等は、警戒心が強いからだ。


 そして、奴等の一体が群れを外れて、俺達に近付き地面を捕食し始める。


 その瞬間がチャンスだった。


 俺は石喰の正面、最短ルートを一気に駆け上がり、魔鉄で出来た鋼糸(ワイヤー)を輪っかにする。


 石喰は、鼻や目が無い分、魔力感知に優れた魔物だ。


 その為、下手な死角が無い分、最短ルートで素早く仕掛けるのが最善な行動だ。


 石喰の目の前に到達して、漸く奴も俺に気が付く。しかし、もう既に遅い。


 石喰が頭を上げるのと同時に、俺も飛び上がり、輪っかになったワイヤーを奴の首へと掛ける。


 そして、首元へワイヤーが入ると、即座に目一杯の力で締め殺しに行く。


 ギチッギチッと言う鈍い音が鳴り響く。


 暴れようとする石喰だが、既にワイヤーが肉に喰い込み、血飛沫が噴き出す。


 声にならない叫びを上げる石喰の頭と背中に足を乗せて、遂に俺は石喰の首を切断した。


 頭の無い石喰が、力無く地面へ倒れる。しかし、それをピーターが優しく受け止め、解体用の剣で腹部付近を掻っ捌く。


「フィデリオ君、良い手際だ。これが、目的の宝玉だよ。うん、傷や欠けた跡がない良い物だ。依頼達成だ」


「ありがとうございます!」


「この宝玉一つで、貯蔵の腕輪一つを作れる。君の仲間達やお嬢さんを含めて、何個必要なんだい? この際だ。遠慮は要らないから、素直に言いなさい」


「えーっと……仲間とエリザベートさんを含めると、最大9個ですね……。本当に良いのですか?」


 魔道具を作ってもらうのは、俺を含めた仲間達とエリザベート、そして俺達と契約しているアルガー達。


 ピーター級の職人が制作する[貯蔵の○○]と言う魔道具一つで、およそ3,500万ロブもする。


 エリザベートが本国にある公爵家に連絡した時、俺達の分まで支払ってくれると言って頂いた。


 途轍もない金額に、申し訳なさと感謝で一杯だったが、それはあの事件の迷惑料だと、ユージン公爵は言っていた。


「9個か……。ならば手早く行おう。準備は良いかい?」


「了解です!」


 そうして、俺達は石喰を複数体討伐に成功した。


 その間、何体かは、宝玉が欠けていたりして、狩り直しになった結果、俺達は全身返り血塗れになり、帰りに服を洗濯する羽目になった。


 そして、アンスールに戻り、冒険者ギルドの手続きやら何やらを済ませたピーターは店に戻り、俺は仲間達の元へ戻った。


「リオ、お帰り」


「お帰りっす。大丈夫だったすか?」


「……二人とも、なんかあった?」


 石喰討伐に行く前よりも、ルカとエリザベートを含めた全員の雰囲気が、少しだけ和らいでいる事に気が付く。


「まぁ、リオが居ない間に話し合ってね……」


「……そうっす。お互いに、和解したっす。今まで、迷惑かけたっす。ごめんなさいっす」


「……いや、俺の方こそごめん。みんなには、凄く迷惑掛けている……。これからも、不甲斐ない団長だけど、これからもよろしくな」


「よろしくっす」


 ギスギスとした雰囲気が、少しだけ改善した。


 まだ、俺の中では、彼等に全てを打ち明けて良いか悩ましい限りだ。


 しかし、彼等の様子を見るとピーターの言う通り、信じて伝えても良いのかもしれないと、少しだけ心が軽くなった。

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