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探検の書 [祝780,000PV突破!]  作者: 火取閃光
第3章 Iランク冒険者
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3-89 叔母

 真夏日が去り、ようやく涼しい日が続く季節になった、猿の月・13日・ユウキの日。予定していた中層探索終了から1ヶ月の休養期間が終わった。


 途中から参加したローズやギルバートも、最初よりも順調に仲間達と打ち解け合っている。修業の方も俺個人は、仰力感知と仰力操作、仰力放出の3つを行いつつ、アルガーやルカ達の修業相手に努めていた。


 そんなある日、俺は祖母ミンクに頼んでいた新しい防具を取りに祖母の鍛冶屋に向かっていた。中層・下域にいた双腕熊の攻撃で、鎧や盾など防具は修理不可になった。


 それは、俺の魔纏撃に耐えられず、耐久値が減った状態で酷使した所為だ。その為に、俺は貯金を崩して鎧と籠手を鋼製に、盾を魔鉄製にした。


 本当は全身魔鉄製にしたい所だが、魔鉄自体が阿保みたいに高価で、貯金を考えると盾しか買えなかった。また、魔鉄は非常に頑丈な反面、鉄や鋼よりも重い。大体重さで言えば8〜10倍の重量だ。戦闘方法を考えると現状これしか持てない。

 

「あ、アミラ! 久しぶり! ご懐妊おめでとう」


「リオ坊ちゃん……ありがとうございます」


 最近は、祖母ミンクの新しい弟子達に仕事を取られ、入り口付近で受付案内みたいな事をやっているアミラーシアに会った。ライザルの子を妊娠しているが、見た感じまだ妊娠しているか分からない程度に、お腹が膨らんでいる。


「ライザルさんとのご結婚おめでとう。ライザルさんにも言ったけど、何か困った事があったら言ってね。出来る範囲で手伝うよ」


「ありがとうございます。こうしてお腹の子やあの人と一緒になれたのも、リオ坊ちゃんがきっかけみたいなものです。私は今、幸せです」


 普段よりもニコニコ具合が、深まっているアミラーシアに少しだけ照れた。自分は、昔からライザルと遊んでいただけだったが、その光景がライザルの子供が出来た時の父親像として、想像しやすかったらしい。


「そっか……お腹の子にも、アミラにも無理の無い様にね……。所で話が変わって、俺の頼んでいた防具を取りに来たんだけど出来てる?


 一応、今日が引き取り予定日ってミンク婆ちゃんが言っていたんだ。ミンク婆ちゃん、居る?」


「ああ、そう言えば……さっきリオ坊ちゃんの叔母にあたるメルシェ嬢ちゃん夫妻とそのお仲間が、師匠と奥でお話をしています。リオ坊ちゃんが来たら連れて来て欲しいとの事です」


「噂のメルシェ叔母さんか……どんな人?」


「私の印象よりも、見たほうが早いかと」


「まあ、そうだよね。行こうか」


 アミラーシアに連れられた俺は、祖母がいる仕事場へ向かった。途中、俺を見たことが無い弟子達が、案内を変わろうとしたが俺が孫だと知り、俺が身内よりも師匠(ミンク)に孫がいる事に対して驚愕していた。


「師匠、失礼します。リオ坊ちゃんをお連れしました」


「あ! リオ君、こんにちは! 防具出来ているよ!」


「ミンク婆ちゃん、ありがとう。でも、その前にそちらの方がメルシェ叔母さんでしょうか?」


「おお〜っ!! お前が、兄貴の息子のフィデリオかーっ!! 私が、叔母のメルシェだ! よろしくな!」


 小柄で茶髪の元気な妊婦が、俺に近づき頭をガシガシと雑に撫でて来た。お腹はアミラーシア同様に、そこまで大きく膨れていない。


 叔母メルシェは、祖母ミンクよりも少し背が大きく150cm前半くらいで、着脱が簡単な青いワンピースを着ている。髪は肩に掛かる程度の長さで、左目付近に泣き黒子が特徴の女性だった。


「よろしくお願いします! いつ王都に来られたんですか?」


「口調が硬いぞ! さっきだな。これから兄貴に会う予定なんだが、今日兄貴って居るか?」


「口調を崩すね。父ちゃんは、メルシェ叔母さん達が来るって事で、最近は家に居るよ。あ、そう言えばなんだけど、手紙が届いてから父ちゃん達が、叔母さん達やお仲間さんの自宅候補を何軒か抑えたって言っていたよ。


 叔母さんも、もうお母さんになるんだから、もう少し身体を気にしたほうが良いと思うよ」


「うぐっ。わ、分かってるよ。さっき母ちゃんにも言われたから……」


 口を尖らせて拗ねるメルシェは、ジト目で俺を見る。本人も祖母に散々言われたのか、子供に指摘された事が恥ずかしいのか少し顔を赤くし、涙目になっていた。


「ぷぷぷ。メルシェ、甥っ子に注意されている」


「か、母ちゃん! 笑うなよ!」


「うふふ。あ、リオ君、これ頼まれた防具」


「うん、ありがとう。どれも良い感じだ。特にこの盾。少し重いけど安心感が半端ない……! 良い物をありがとうね」


 祖母から手渡しされ、注文していた防具を着て確認する。全体的に動きには支障は無い。強度が増した分、少しだけ重さが増えたので、誤差を修正する為に慣らしが必要な程度だ。


 対して、魔鉄製の大楯は、かなり勝手が違った。元の鉄製の大楯は少し軽かったが、魔鉄製(これ)は、かなり重く感じた。慣れるまで少し時間がかかりそうだっだが、同時に腕から伝わる確かな安心感と魔力の伝達し易さに、かなり感動した。


「ヘェ〜魔鉄製の盾か……。フィデリオは、もう冒険者になったのか? 今、どの辺? ってか今何歳だっけ?」


「今年で10歳だね。冒険者には、Iランクになって4ヶ月ぐらいだね。近々、下層に行く予定かな」


「っ!? それは優秀だな! なら、甥っ子に何か叔母さんから買ってあげよう。何が欲しい?」


「えっ? いや、特に無いよ? それよりも、叔母さん達の話を聞く方が良いかな……。情報の方が、お金や物よりも重要な時って結構あるし」


 手を鳴らし、ワクワク顔で懐にあるお財布に手を伸ばしたメルシェへ、俺は困惑しながら彼女達の冒険譚を希望した。


「アハハハ! 確かに! それなら、今夜にでも話すか! っとそうだ! フィデリオ、こいつが私の夫のマルチェロだ。よろしくな!」


「メル、そんな雑な紹介しなくても……。ご紹介に預かりました、Fランク冒険者のマルチェロと申します。よろしくな、フィデリオ君」


「マルチェロさん、此方こそよろしくお願いします」


「それじゃ、兄貴の所へ行くぞー!」


 叔母だけ1人で"えいえいおー!"っとやりそのまま部屋を出る。叔父マルチェロは、そんな叔母に苦笑しつつ追いかけ、他の仲間達と共に自宅へ向かった。

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