3-88 新たな仲間
「リオ、これで4人になりましたっすね!」
「順調に仲間が増えて来たわね」
「そうだね。アルガーも含めても、仲間は後1人は欲しいね」
「リオ、アルガーって?」
流石に、小柄熊のアルガーは、この場所へ連れて来れなかった。
最近は、他の街へ行くことを考えて、獣魔ギルドが併設する獣魔小屋に、預けられる訓練を行っていたりする。最初は嫌がっていたが、次第に慣れ始め半日程度なら預けても暴れなくなった。
「ああ、俺の契約している小柄熊のアルガーだよ。可愛い奴なんだ。後で紹介するよ。今は自宅で両親に可愛がって貰っていると思う」
「へぇー! リオって多才だね……うん! 後でボクも触りたいな……えへへ……」
「それで、続きなんだけど、俺はアルガーを基本的に、運搬人みたいな立ち位置で考えている。それで俺とルカは前衛。ファーラとローズは後衛。
ま、俺は一応どっちも出来るから中衛って考えたとしても、敵を撹乱してくれる素早い前衛が後1人欲しい所だね。俺も出来なくは無いけど、あまり好きじゃないしね……」
「いや、出来るんだ……」
「そりゃね……弱点でもあるから克服しないと、ね」
俺の万能性と言うか、器用貧乏な面を初めて知ったローズは顔を引き攣った。
「そう言えば、ローズ」
「ファーラ、どうしたの?」
「私達って、リオ達がIランク迷宮を踏破するまで、集まって修業をしているのよ。出来れば、貴方も参加して欲しいんだけど、どう?」
「え!? い、いいの!?」
「いや、むしろ、そうして貰えるとこっちも助かる。俺達は、あと少しでIランク迷宮を踏破出来そうだ。そうしたら、今度はみんなと踏破予定だから、今の内に強くなって貰えると時間を無駄にしなくてするし」
「ボクの方こそ、お願い!」
両手を上げて"やったー!"と喜ぶローズに、アルガーに似た癒しの感情が湧いた。ホッコリとしていると"ガシャッガシャッ"と鎧が擦れる音が、後ろから聞こえた。
「すまない。少し良いだろうか?」
「うん? 貴方は……?」
「ああ……私はギルバート。流れのIランク冒険者だ」
「僕はフィデリオです。それで、どうかしましたか?」
ギルバートと名乗る小柄な青年は、深刻そうでいて、少し期待の眼差しを此方に向けていた。
「いや、仲間を募集していると話が聞こえてね。私も入れて欲しいと思ったんだよ」
「一応、こっちにも事情があるので、それを了承して頂きたいのですけど……良いですか?」
「事情? それは、どう言ったものだろうか?」
俺はギルバートに俺達の事情を話した。彼も俺の条件と聞き不安そうな表情を向けていたが、話が進むに連れて安堵した表情になった。
「こう言った事情なんですが、大丈夫そうですか?」
「いや、大丈夫だ。むしろ、修業を付けて貰えるのなら此方から、お願いしたいと思っていた所だ」
「ギルバートさんって……運搬人じゃ無いっすよね?」
「そうね……私も長く運搬人をやって来たから分かるけど、どちらかと言えば新人に近い雰囲気な気がするわ……」
俺には分からなかったが、運搬人をやっていたルカとファーラの2人には、異質の雰囲気を感じたのか少し懐疑的な視線でギルバートを見ていた。
「運搬人……? いや、よく分かった……ましたね。その通り、私は王都から南の街[エリプタン]で、3年近く雑用と修業を行い生計を立てて来ました。
だが、最近個人修業にも限界を感じ、迷宮探索をする為に3週間前に王都へ来たばかりなんです」
ギルバートは、恥ずかしそうな面持ちで、頭を掻きながら話した。その時の言葉遣いは、丁寧だったが無理している感じはなく、むしろ自然体に近い感じがした。
「失礼。ギルバートさんって多分、ファーラと同い年くらいですよね? 3年前って事は、冒険者になる前まで何をしていたのでしょうか?
ああ、いえ……関係の無い質問でした。忘れて下さい」
だからこそだろうか。ギルバートの自然体な丁寧口調を隠して、荒っぽいぶっきら棒で無理している口調をしている彼が、怪しく見えてしまい気になった。
「いえ、構いません。冒険者になる前までは、商人をしていました。ただ、一身上の都合で商人を辞めて、冒険者になりました。武術は、商人になる為の自衛手段の一環として、続けていました」
「なるほど……戦い方はどんな感じなんですか?」
ギルバートの一身上の都合という部分は、本人から触れないで欲しいと言う視線を受けた為、触れなかった。此処までの経緯を語っている彼の表情は、とても悲しい気持ちを我慢している様だったからだ。
「一応、剣と盾を使った戦い方ですね。出来れば前衛を希望します」
「うん。分かりました。一応、俺達は強くなる傍ら世界中を旅して回る予定でいます。また、事情で説明した通り、正式な解散日がまだ未定です。
ギルバートさん、それでもよろしいですか?」
「此方こそ、よろしくお願いします」
握手を交わしギルバートも仲間になった。少々、事情を持っていて怪しさもあるが、他の仲間達とも性格的に合いそうだった。
「なら、善は急げだ! 2人を仲間達に紹介して、早速修業するよ! 2人とも時間は大丈夫?」
「ボ、ボクは大丈夫!」
「私も大丈夫だ」
ルースから貰ったお金で支払いを行い、ギルズ達がいるIランク迷宮へ向かった。ローズ達を紹介する為だ。
「みんな! お待たせ! 新しい仲間を紹介するよ! 馬人族のローズとパーソン族のギルバートだ! よろしく頼むよ!」
「ろ、ローズです! 17歳で冒険者歴2年目です。よろしくお願いします!」
「ギルバートだ。22歳で冒険者歴3年目だ。しかし、迷宮も碌に探索した事がない。だから、貴方達に助言を仰ぎたいと思っている。是非、助言をして欲しい。よろしく頼む」
2人は暖かく迎え入れられた。少し、心配だったギルバートも他の仲間達と交流するに連れて、自然体な丁寧口調で交流している姿が見えた。
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