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探検の書 [祝780,000PV突破!]  作者: 火取閃光
第3章 Iランク冒険者
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3-78 Iランク中層探索15

「リオ、リオ……交代だから、起きて〜」


「う……うん、ありがとう。何かあった?」


「特に無いよ〜。でも、此処からが1番暗くなるから、何かあるかも知れない〜……気を付けてね〜。おやすみ」


「おやすみ」


 真夜中、メルルと夜番の交代する為に起こされる。感覚的には6時間くらい眠る事が出来たので、かなり楽になった。


《グルルッ》


「おっ? なんだ、アルも起きたのか……ごめんな。それに、お前が居てくれて心強いや。アルガー、ありがとう」


《グルッ》


「気にすんなってか? そっか、そうだな……なら力を貸してくれ。多分、来るならこの時間帯だと思う。だから、全員を起こせて、威圧出来る俺がこの時間帯に選ばれたんだからな……」


 静寂が支配する闇の世界。夜目は聞いているが、周囲の体外魔力(ゴド)濃度が高い所為で、上手く気配が感じ取れない。俺と同様に起きたアルガーと共に、周囲を警戒する事で何とかなった。


《グルルッ!!》


「アル、どうした……? ってそう言うことか……!? 


(何処だ……何処かに居る……? アルが俺には感じ取れなかった何かを感じたから、警戒した。アルは馬鹿じゃ無い……つまり、敵が何処かから俺達を見ている…….又は、探りを入れている……)」


 突然、地面に伏せて大人しかったアルガーが、起き上がり警戒を強める様な唸り声を上げる。それに、直ぐに察した俺は、武器を取り周囲を良く警戒した。


《グルルッ! グルルッ!》


「っ?! アレか……!? 通りで分からなかった訳か……! アレは黒色狼(ブラックウルフ)って奴だな、間違いない……!!


(取り敢えず、魔力威圧……! 此処から消え失せないと、殺し尽くすぞ……!!)」


「グルガッ?! グッ! グルルッ!!」


「チッ! まだ追い払えず、足止めが精一杯か……! なら、みんな! 敵襲だ! 起きて!」


『っ!?』


 魔力威圧時に敵へ侵食した魔力は、黒色狼(ブラックウルフ)の魔力抵抗と拮抗する。抵抗している間は、動きを止めていたが、いつ動き出すか分からないと判断した俺は、味方に対して起きる様に魔力威圧を放つ。


「リオ君、状況は!?」


「相手は黒色狼! 数は10体! 魔力威圧でも、足止めが限界! 起こしてごめん!」


「いや、上出来にゃ……意識を覚醒させるだけじゃ無く、その足止めも出来て時間を稼げるから、謝る事は無いにゃ」


「来るぞ! みんな、構えろ……!」


「も〜折角、眠りにつけたのに〜! 黒色狼(おまえ)なんて死んじゃえ〜!!」


 この中で1番怒っていたのは、メルルだった。メルルは、魔法を詠唱し俺とナートは燃えた薪を持ち、仲間に敵の位置を照らした。


「この狼……! 意外とやるにゃ……!! 速さだけじゃ無く、他と連携して戦うのは厄介にゃ……!」


「でも、1体当たりの強さは、そこまでじゃ無い! 俺が囮になる! みんなは、その隙に各個体を撃破して欲しい!」


「分かったにゃ! 無理しない程度にお願いにゃ!」


 黒色狼(ブラックウルフ)の大きさは、シルルの契約したグルルと大差ない体格をしていた。しかし、初心者の森の灰色狼(グレイウルフ)達と比べて、連携力が段違いに高かった。


「グルガッ!! グルルッ!?」


「ほら、こっちだ! 真っ黒野郎! セイッ!」


「グルガッ?! グルルッ!!」


「グッ?! 痛っ?! お、重っ?! ガッ!?」


「リオ!」


「チッ! 調子に乗ってんじゃねぇぞ! このクソ狼が!!


(餓狼拳・振溜衝……!!)」


「グピャッ?!」


「狼牙爪・露岩の陣ー鷹視狼歩……!!」


 盾とハンマーでの応戦が、この戦闘では不利になると判断した俺は、ハンマーをその場に捨てる。そして、火で敵の注意を引きつけ、撹乱しながら1体ずつ倒した。


「みんな、眠い中強制的に起こしてごめん!」


「いや、ラートが言っていたけど、良くやった方だよ」


「みんな〜アタイはもう寝るね〜」


「オイラもにゃ……」


《グルルッ?》


「うん? 黒色狼(これ)食いたいの? 良いよ、食べて。ただし、残さず食べるんだよ?」


《グルルッ!!》


「リオも、もう寝て良いよ。アタイは十分休んだから、交代するよ」


「ごめん、ありがとう。後はよろしく」


「お疲れ様」


 この戦闘で覚醒してしまった従者達は、黒色狼の死体を見て涎が垂れていた。俺達も処分に困っていた為、放置して魔物を誘き寄せるよりも、食べて貰った方が良いと判断した。


「これから、2日目の探索を開始するにゃ。今日で、中層の転移陣まで行き、余裕を持って帰る予定にゃ」


「取り敢えず、転移陣で下層まで行った後は、直ぐに戻る方針でよろしく頼みますにゃ。リオ、大体の感覚で案内を頼むにゃ」


「分かった。でも、効率とか歩き易い道とかは流石に無理だから、それは事前に謝っておく。ごめん」


 草原と岩場の中層・下域を進んでいく。道はあるが、森林よりも死角が多い。その為、無属性魔力の魔力探知が出来る俺が先頭に立ち、慎重に進んだ。


「岩場が多くて嫌だね〜。魔物とバッタリ会ったら大変だ〜って言っている側から、魔物発見〜!」


「あれは……デカいにゃ……!!」


「デッカ……クソデカい猪だ……」


「ーーっ?! 突進の構え! 来るにゃ!?」


「ブギィッーー!!」


 全長6m程度の巨大な猪が、突進の構えをして走り出す。加速力に関しては下域の魔物の為、中々だった。しかし、戦闘馬よりも少しだけ劣っていた。


「イッ!? 速さも加速力も馬型の魔物よりも劣るって言うのに、なんて突進力……!?」


「い、岩が粉々〜?!」


「アレは直撃は不味すぎるにゃ! 兎に角回避して、足を狙うにゃ!」


 突進を難無く避けた俺達が見たのは、巨大な岩に頭から突っ込んだのにケロッとしながら、次の突進を開始する猪の姿だ。


「グウッ?! 硬いよコイツ! コイツの足も頭も……! なんて硬さをしてんの……!?」


「リオ! メルルちゃん!」


「我願う……土魔力よ……」


「我願う……風魔力よ……」


「ラートとシルルちゃんと僕で、時間稼ぎをするにゃ! 流石に武器の性能的にも、コイツは硬すぎるにゃ!」


「任せて!」


「了解にゃ!」


 戦闘馬同様に突進中、足や首を狙って攻撃するが、猪の身体全体が戦闘馬よりも硬い。


「ラジエイトソイル! チッ! 貫通しないか……!? メルルちゃん、俺が足止めをする! トドメは任せた!」


「うん! ウィンドボール……!!」


「ブギィッーー! ブギャアッーー?!」


 俺の放つ下級魔法でも即死しない魔物に驚愕する。横っ腹から魔法を受けた猪は、そのまま岩山と激突して暴れる。魔法を受けて脆くなったのか、メルルのウィンドボールを受けると今度は貫通した。


「よし! 何とか倒せたわね! 良くやったわ! リオ、メルル!」


「流石に俺も驚いているよ。まさか、ラジエイトソイルをまともに喰らっても、平気で生きている魔物が中層に居たとは思わなかった。


 居たとしても、Hランクとか下層とかだと思っていたけど……注意が必要だね。魔法も一撃必殺では無いっぽい……」


「みんな! 聞いたかにゃ! これから、魔法を受けても即死しない魔物が、出る可能性が高いにゃ」


「さらに、上層でも、転移陣の付近に陣取った実力が強い魔物、或いは特殊な能力の魔物が居座っている可能性が高いにゃ。全員、気を引きして事に当たるにゃ」


 転移陣(メタスタシスゲート)が近いのか、俺の魔力感知はビンビンに反応していた。猪肉を持ち、持ちきれない残りを食べた俺達は、今までよりもさらに気を引き締めて進んだ。


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