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探検の書 [祝780,000PV突破!]  作者: 火取閃光
第3章 Iランク冒険者
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3-77 Iランク中層探索14

 中層・中域の魔物は、中層・上域に比べて多種多様だった。


「ラート! あの鳥、落下しながら加速しながら、翼で斬りつけてくるにゃ!」


「でも! 飛び上がる時は、それほどでも無いよ! だから、俺が受けて叩き落とす! みんなは、それをどうにかして!」


「了解! アタイがトドメを差してやる! 女の肌に斬りつけやがって! 跡が残ったらどうしてくれんだ!」


 一般的に斬翼蝙蝠(スラッシュバット)と呼ばれる蝙蝠型の魔物は、蝙蝠に珍しい昼行性の魔物だ。その翼は、鉄と同じ程の切れ味を誇り、上空から加速しながら落下して敵を攻撃する。


 コイツは馬型の魔物、一般的には戦闘馬(バトルホース)呼ばれる魔物と戦った後に、騒ぎを聞きつけたのか突然現れた。


 初撃は死角から首を狙われたシルルにナートが気付いて、何とか回避した。その際に、防具の隙間の肌が露出した部分を切り付けられ、出血した。


 斬翼蝙蝠の対処法は至極簡単だ。落下時の加速力は戦闘馬よりも少し遅い程度だが、それなりの速さを所持していた。しかし、逆に空へ飛び上がる時は、今までの速度が何だったのかと言う程に遅かった。


 そうして、対処していると今度は、後方から風を切る音と共に地面が陥没し始める。


「次から次へと、今度はなんだにゃ!!」


「猿だ! 木の上に沢山の猿が何か持っているっ!! って、やばっ?! みんな避けて! 石を投げてくる?!」


「も〜〜っ!! なんなのよ〜?!」


「みんな、落ち着くにゃ! 木の影に避難するにゃ! 石を投げるって事は、その数に限りがある筈にゃ!」


「そこを狙うってことね! 分かったわ!」


 一般的に投擲猿(スローモンキー)と呼ばれる猿型の魔物は、腕が異常に長くお腹に天然の袋を持っている。その袋に石や果物を入れて持ち歩き、木の上を長い腕を使って移動する魔物だ。


 その長い腕は非常にしなやかで、石を投擲した際の威力は地面を陥没させるだけでは無く、木々を貫通する豪速球を投げつける。実際に、俺達も木を盾にしたつもりが、木を貫通して攻撃された為、軽くは無い一撃をモロに喰らった。


「ーーっ?! マズイ! 奴等、投擲物が無くなると同時に移動して逃げるつもりだ!」


「させるかにゃ! うりゃ!」


「木を移動するって事は、木を折られたり揺らされたら、移動出来ないよなーー!?」


「ウギャッ?! ウギャウギャッ!?」


 そして、さらに湖を迂回して先へ進むと、とある異常に遭遇した。


「うがぁああーーっ!? 臭いにゃっ?! 何なんにゃ?!」


「ゔっ?!」


「ゔぅ〜?! くっさ〜い!!」


「おえっ?! くっさ?!」


「くっせぇな?! っ!? みんな! 多分あの兎が原因だと思う!!」


 一般的に、腐臭兎(スメルラビット)と呼ばれる兎型の魔物がいる。その魔物は、あまりの体臭に他の魔物ですら近付く事が出来ず、嗅覚に鋭い獣人種が直で嗅いで気絶したと言う伝説を持つ魔物だ。


「アレかにゃ?! ごめん、オイラ達はこれ以上、近付け無いにゃ!!」


「ごめんにゃ! 僕もラートも無理にゃ!!」


「なら、俺が行く! おりゃ!!」


 ただし、この魔物は臭い事以外何も出来ず、強さで言えば1対1でも上層の魔物とあまり変わらない。ただし、特別嗅覚が鋭く無い俺でも、前世を含めて経験の無い臭さに頭痛と涙が出てしまった。


 腐臭兎は、殺してみると不思議なほど匂いが減った。その為に戦利品に持ち帰ろうとするが、獣人種と従者の魔物達に拒絶されて、泣く泣く廃棄する事にした。


「(絶対あの兎、調理したら美味いやつだ。俺の食欲の勘が言っている。アレはドリアンと同じく美味しいが故に、自己防衛で臭い体臭を放つ類の奴だ……。今度、食べてみよう……!!)」


 そうして、さらに奥へ、奥へと先に進む。数ヶ月前まで、躓いていた森をやっと抜け出す事に成功した。そこは、草原と巨大な岩達が乱雑に置いて場所だ。


「やっと森を抜け出せたにゃ!」


「でも、もうそろそろ、日が落ちそうだから野営の準備をした方が良いね〜」


「そうだにゃ。それと、リオ君、この辺りの魔力濃度は……っって言うか、転移陣はどのあたりにゃ?」


「流石に正確な位置は分からないけど、魔力濃度は湖付近とは段違いに濃いよ。それに、距離は分からないけど、多分転移陣も近い、様な気がする。


 方角は正面を北とした場合、北西の方角からより濃度の高い魔力を感じる。正直言って、ちょっと頭がクラクラしそう……。早く休みたい……」


「ありがとうにゃ。それじゃ、もう1回森の中で枝葉を探して草原で野営にゃ! 見晴らしが良い方が、警戒しやすいにゃ」


「夜番はラート、メルルちゃん、リオ、シルルちゃん、僕の順で行うにゃ。みんなまだ、半睡眠半覚醒での休憩は出来ていないと思うにゃ。


 でも、僕達には従者(かれら)がいるにゃ。まだ、気配察知は僕らと大差ないけど、魔物の勘は馬鹿に出来ないにゃ。各自、自分の従者にしっかり伝えておく様に。よろしくにゃ」


「それと、この前の考察会で話した通り、夜行性の魔物が襲う可能性も捨て切れない。夜目が効き始めた事に油断せず、少しでも怪しいって思ったら直ぐに起こす様に。


 俺も魔力威圧を試すけど、無理そうならみんなを巻き込んだ全方位威圧で強制的に起こすから、それは許してね」


 俺が申し訳なさそうに謝ると、仲間達は苦笑しながら許した。そして、日が完全に落ちる前に野営の準備を行い、早めの夕食を食べた者達から、直ぐに休みを取った。

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