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探検の書 [祝780,000PV突破!]  作者: 火取閃光
第3章 Iランク冒険者
145/391

3-55 ルカ

訂正

国名

・アローゼン→アローゼル

・ゾルピデム→ゾルピデン


もし訂正されていない箇所が

がありましたら、訂正報告していただけると幸いです。

 野営訓練から10日が経過した。あの経験を元に俺達は、装備を整えた後、何度か中層へ足を運んでは、探索失敗と躓いていた。どうしても、中層の最初に居る鼠の大群を抜ける事が出来なかった。


 前回の様な馬鹿正直に、殲滅して突き進むやり方では無く、気配察知と気配隠蔽、手合図を用いた作戦指示、魔力威圧などを使った。しかし、結果は芳しく無い。その為、今日は、各自の気分転換に修業も探索も休みにしていた。


「(一体、どうすれば……あの鼠達を回避出来るだろうか……。多分、馬鹿正直に殲滅するのも手だと思うけど……正直言って現実味が無いしな……。さてさて、どうしたもんか……)」


 俺は祖母アリアに、ポーションの作成方法を教わる為に祖父母宅へ向かっていた。今の時間帯は、昼の鐘が鳴る少し前。その為、神殿通りの大通りにはチラホラと人が歩いている。


「……だよ、アイツら……けんな……奴隷じゃ……」


「(うん?) っと、すみません」


 考え事をしながら歩いていると、目の前から薄汚れた格好の冒険者の男が、表情を歪めてブツブツと恨み節を呟いて歩いて来た。


 咄嗟に気が付いたが、俺は彼の迷宮探索専用の鞄と接触してしまう。考え事をしながら歩いていた俺が悪いので、直ぐに謝罪するが、男はフラッと姿勢を崩すと、そのまま地面に崩れ落ちた。


「お、おいっ!? アンタ! 大丈夫か!?」


 よく見ると、男の顔はとても幼く見えた。正直俺よりも歳上だが、ラートとナートと同い年くらいに見えた童顔の少年だと思われる。


 種族は、王都ではあまり見掛けない獣人種で豚人(とんじん)族の少年だ。豚人(とんじん)族は、朝焼けの様な少し赤みかがった肌色に、つぶれた様な鼻を持つのが特徴だ。


 少年に声を掛けて、肩を揺さぶるが起きる様子は無い。幸い息はしているので、死んでは無いがマトモな状態では無いと俺は思った。俺は直ぐ様、少年と荷物を担いで祖父母の家に直行した。


「アリア婆ちゃん!」


「こら! アリアお祖母様でしょ!」


「今はそんな事どうでも良いよ! 急患が居るんだ! ちょっと見て欲しい!」


「ーーっ?! それを先に言いなさい! この子はなんでこんな事になっているのかしら?」


「分からない! 彼の荷物と俺が少し接触したら、崩れる様に地面に倒れたんだ! 元から顔色は悪かったし、ブツブツとなんか言いながら歩いていたと思う」


「そう……見る限り、外傷は無いわ。それに、内出血の跡も無いから少なくとも怪我では無いわ。顔色が悪いけど、熱や脈も正常よ。見る限り恐らく過労による、疲労困憊で気絶したものだと思うわ。


 彼の目元には、酷い隈があるから相当寝ていないのね……。それに、肌の乾燥具合も気になるわ。リオ君、手伝って頂戴」


「了解です! アリアお祖母様!」


 彼の荷物を地面に下ろして、祖母の指示に従い俺は動く。彼の呼吸は落ち着いているが、顔色が悪く全身がボロボロの状態で予断を許さない状態の為、祖母の顔が薬師の店主から医者の顔に変化した。


 それから、ポーションなどを使い必要な治療を終えた後、顔色も良くなり暫くした頃、彼は目を覚ました。


「……う、うう……こ、ここは……?」


 倒れる前の記憶が分からないのか、薄く開けた目をキョロキョロと動かして彼は状況を確認していた。


「あ、起きられましたか。気分はどうですか?」


「えっ……? あ、えっ? 僕は……どうして、此処にいるんでしょうか……?」


 やはり、倒れる前から、ほとんど気力だけで歩いていた様だった。彼は不思議そうな眼差しでこちらを見ていた。その為に俺は、此処までの事情を彼に説明した。


「そう……でしたか……。ご迷惑を、お掛けしまし、た……っ?! 今! 僕は、どのくらい寝ていたんですか!?」


「えっ? 今は夕飯前の鐘が鳴って直ぐ……って!? 何処に行こうとしているんですか!?」


 急に立ち上がり、荷物を持って出て行こうとする彼は、フラッと倒れて地面へ激突しそうになる。咄嗟に俺は彼の身体を支えて、ベッドへ座らせようとするが、錯乱状態の彼は暴れて俺の拘束を振り解こうとする。


「離してください!? 行かなくちゃ!? ああ〜もう、僕の馬鹿……!!」


「おい! アンタ! 無理すんなよ! さっきまで、過労と脱水症状でぶっ倒れていたんだぞ!? これ以上、無理したら流石に死ぬぞ!?」


「離して下さいって、言っているでしょ!? 僕は早く行かなきゃならないんだ! 退いてください!」


「静かにしなさいっ!!」


 怒号が鳴り響く空間が一気にピシッと静まる。


「「ハ、ハイ!!」」


 優しそうな顔をした、厳格な祖母がポーション片手に激怒しているのを見て、俺達は本能的にヤバいと言う何かを悟った。


「2人とも、少し落ち着きなさい」


「で、でも……」


「ぐだぐだ言わない!」


「ハ、ハイィ〜!」


 とうとう心が折れた彼は、静かにベッドに座り込む。


「まずは、自己紹介からするわよ。私の名前はアリアと申します。この薬屋[ヒイラギ]の店主をしています。貴方を此処へ運んで来たのは、今貴方の前にいる孫のフィデリオです」


「俺は、フィデリオって言います。アンタの荷物とぶつかったら、目の前で倒れたもんだから、祖母に助けを求めて此処へ連れて来ました」


「あ、そう、でしたか……ご迷惑をお掛け、しまし、た……!? ちょ、ちょっと待ってください?! えっ? 此処は薬屋、なんですか?!」


「ええ、そうですよ。あ、治療する際にポーションなどを使用しましたが、お代は結構です。間接的とは言え、私の孫が倒れる原因にもなったのですから、お代はリオに支払わせました」


「ま、大分、家族割引をしてくれたから、気にしないでよ」


「いや、しかし……!!」


「俺はアンタよりも歳下だけど、これでもIランク冒険者をやっているんだ。それなりに蓄えもあるから、気にしないでくれよ」


「えっ……!? 君が?! 失礼だけど、君8歳くらい、だよね……? じょ、冗談だろ……!!」


 何度も、何度も俺と祖母を見る彼の目は、まるで目が飛び出そうなほどに驚愕していた。


「実はそうでも無いんだ。俺、チビだけど、これでも10歳なんだ。冒険者の見習い制度を使ってIランクに昇格したんだ。ギルド証見せようか?」


 予想通りな反応に俺は、自身が持つギルドカードを見せた。


「うわぁ……マジだ……。っと、ご挨拶が遅れました。僕の名前は、[ルカロディウス]と申します。気軽に[ルカ]と呼んでください。僕も5ヶ月前からIランク冒険者になりました」


「俺はフィデリオ。気軽にリオって呼んで下さい。俺は1ヶ月前からIランクになったから、ルカさんは先輩です。俺もよろしくお願いします、ルカさん」


「そんな……僕に、さん付けなんて……それに、言葉遣いも崩して大丈夫だよ」


「分かった。なら、ルカと呼ばせてもらうよ。ルカも言葉を崩して楽に接してくれよ」


「了解っす。改めて、リオ、よろしくっす」


 俺達は握手を交わした。

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