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探検の書 [祝780,000PV突破!]  作者: 火取閃光
第3章 Iランク冒険者
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3-27 耐性習得法

「よし。反省もした。俺達の助言と交渉でお前達の課題も見えてきた。なら、次はどうするんだ?」


「それよりも、父ちゃん達は用事大丈夫なの?」


「あぁ? あんなもん、交渉を有利に進めるための嘘に決まってんだろ。俺らに用事は無ぇよ」


「えぇ……」


 父のさも当然と言わんばかりの開き直りっぷりに、俺は父へ憧れていたイメージにヒビが入った気がした。


「ま、強いて言えば、お前らへ助言をする事が用事か? だから、次はどうするんだ?」


「あーそれなら……俺とナートとメルルちゃんの新しい属性魔法の訓練方法を教えて欲しいんだ。アレって具体的にどんな事をするの?」


「えぇ、そうね。新しい属性魔法習得までの工程を覚えているかしら?」


「えーっと……確か、習得したい属性魔法に対応する耐性を得る事が、大切なんだよね?」


「えぇ、そうよ。耐性……つまり、火魔耐性や水魔耐性みたいな魔法耐性が必要不可欠だわ。そして、その後自身の純魔力である無属性魔法を基に、魔法耐性へ魔力を変質させる事で、新しい属性魔法を習得出来るわ」


「あーそう言えば、昔そんな事を説明されたような気がする」


「(転生(アレ)からもう5年か……本格的な修業からも2年……。長かった様な、短かった様な、不思議な気持ちだ)」


 過去の魔法訓練時に祖父キースと父アモン、母アーシャ達に聞いたことを思い出していた。


「そこで、貴方達に聞きたいのだけど……耐性の習得方法について、どの様な仕組みか理解出来ている人って居るかしら?」


「……?」


「(言われてみれば、耐性ってどんな仕組みだ? 暑さ耐性や寒さ耐性ってあるけど、アレっていつの間にか発現していて、発現条件とか未だに分かんないんだよね……)」


「ちなみに、この仕組みは、魔法だけじゃ無ぇよ。お前らが習得したい毒耐性も同様の仕組みだ」


「……?!」


 俺達は言葉こそ発しなかったが、目を大きく見開き驚いた。


「(魔法耐性と毒耐性は、同じ仕組みで習得出来る……か。つまり、毒耐性は、魔法耐性を身に付けた時と同じ状況で得ることが出来るって事だ。


 俺が持つ土魔耐性と水魔耐性は、属性魔法使用時に起こる微量の身体的な負荷が積み重なった結果だ。従って……)


 『耐性』とは、身体に掛かる負荷に慣れようと、対応しようとする身体の自然な仕組み……って事で良い?」


「正解! リオの言った通り、耐性を得るには、貴方達自身が属性魔法や毒を受ける必要があるわ」


「やっぱり、そうですかにゃ……」


「ま、そんな所だと思ったけどね」


「簡単に身に付いたら苦労しないかにゃ」


「うへ〜。想像の範疇過ぎて逆に嫌だな〜」


 耐性取得の為に必要な事をある程度予測できたから、俺達は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。


「嫌な気持ちは分かるけど、我慢よ。耐性習得するには大きく2つの方法があるわ。『軽負荷法』と『重負荷法』よ。


 『軽負荷法』は、身体に掛かる負荷を軽くする事で耐性を得る事に繋がるわ。利点は、負荷が軽いから誰でも直ぐに始め易い事だわ。対して欠点は、習得までにかなりの時間を必要とする事で、平均して早くて3年、遅くて5年なんてザラにある習得方法よ」


「早くて3年か……流石に長すぎる。それじゃ、重負荷法は言葉通り」


「えぇ、軽負荷法の真逆。身体に掛かる負荷重くする事で耐性を得る事に繋げる方法よ。


 利点は、習得する為の時間が限り無く早いと言う点だわ。それそこ、鐘と鐘の間に習得が可能よ。でも、その欠点は、至極単純明快。死ぬ様な思い、死んでも構わないと言わんばかりの重い負荷をその身に受ける事で耐性を得るわ。


 この習得方法には、協力者の存在は必要不可欠。だけど、協力者も、当事者も、未熟であれば、冗談抜きに死にかねないから一般的には、『邪法』として認知されているわ」


 身の安全を考慮するなら、軽負荷法一択だ。しかし、最短で取得するなら、重負荷法一択だ。どちらにもメリットとデメリットがある。そこは、良く考えないといけないと思った。


「邪法……か。確かに、利点だけ聞くと勘違いを起こす輩は多いなぁ」


「それだけじゃ無ぇ。重負荷法は、習得までの工程がかなり辛い。特に魔法なんかは、生身で直撃に耐える事が必須だ。


 だから、人によっては、それで魔法に対する恐怖心に苛まれて魔法が使えなくなる事もあるんだ。所謂、心的外傷(トラウマ)って奴だな。意思が弱い奴なら、見栄を張っていないで大人しく軽負荷法を勧めるぞ」


「……」


 アモンとアーシャの内容を聞き、俺達はしばらくの間、沈黙して考えをまとめた。


「俺は……そうだな……俺は、魔法に関しては、軽負荷法を行う事にするよ。母ちゃん達が言った事が正しいなら、現状でも魔法は通用する訳だしね。ここを無理する必要は無いと思ったんだ。


 でも、毒耐性については、重負荷法で行いたい……いや、行うんだ。俺達は、父ちゃん達に比べたら、まだ未熟者だ。10歳の餓鬼が何焦ったんだって、思うかも知らないけど、俺は早く大人になりたい。


 大人になって、俺の知らないこの広い世界を隅々まで、冒険して見たい。多くの人に出逢いたい。美味しい物を食べたい。憧れの父ちゃんや爺ちゃん達の見ているモノを、俺も実感したい。


 だから、父ちゃん、母ちゃん、お願いします。俺の毒耐性重負荷法の協力をよろしくお願いします」


 冒険者を決意して5年近く経つ。色々とやりたい事が増えてしまったが、根本的に目指したきっかけとなる両親や祖父達への憧れは健在だった。いや、実際に冒険者に成った今では、あの時以上の思いを募らせていた。俺はそんな素直な気持ちを両親にぶつけた。


「えぇ、分かったわ」


「リオの思い、確かに受け取ったぜ。俺らの方こそ、よろしくな」


 両親も、そんな俺の気持ちを理解したのか、笑って受け取った。


「それで、貴方達はどうするの?」


「うにゃ。オイラ達も早く大人になたいにゃ」


「そうだな。魔法と毒。どっちが急がなくちゃならないかって言ったら、アタイも毒だと思うわ」


「魔法については、アタイもナート君もリオもいるし、まだ何とかなるからね〜」


「僕達もリオと同じ訓練方針でお願いしますにゃ」


「おう、分かったぜ。後悔すんなよ?」


「望む所だ」


 父の少しだけ複雑そうな笑みに、応えるように俺達の目は、炎の様にあくまで熱く燃えていた。

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