ふたなり化しちゃった女子高生がオナホ買いに行く話
「…………うっ! …………はぁ~~~~…………」
自室のベッドに寝転がり、彼女は大きくため息をついた。
そして右手に握ったティッシュを丸めてゴミ箱に向かってポイ。
ゴミ箱には丸まったティッシュが山のようになっていて、凄まじい悪臭を放っている。
ちなみにさっき投げたティッシュは狙いを外してゴミ箱の手前に落ちてしまった。
(はぁ……満たされないなぁ……)
ベッドに置かれた中学校の卒業アルバムを閉じる。
そのまましばらくぼーっとしていたのだが、いつの間にやら眠ってしまった。
彼女の名前は玉田竿理。
花も恥じらう女子高生である。
学校の成績はオール3。
分かりやす~い普通さだ。
ただ……普通ではない部分がひとつだけ……それは……
ある朝起きたら股の間にキノコ(比喩)が生えちゃってた。
それだけならまだいい(?)かもしれないが、キノコ(比喩)は脳に指令を出すのである。
自らの存在理由を必死で竿理にアピールする。
ムラムラする。それはもうムラムラする。
未だかつて経験したことのない性欲の爆発に彼女は苦しめられる。
同級生の男の子たちは普段からこんなに辛い思いをしているのだろうか?
テレビで見るイケメンアイドルも?
乱暴にギターを弾いている硬派なバンドマンも?
竿理が憧れていた歌い手の聖亜さんもそうなのだろうか?
「…………んがっ!? あ~……寝ちゃってたか……」
ベッドからよっこらせと起き上がる竿理、すぐにパソコンの前に座る。
SNSのチェックだ。
「あー! ゆえちゃんがまたエロ配信やってるー!」
ネット上だけの友達でなんとなく付き合っていたが、最近は結構お世話になっている竿理。
彼女はパソコンの隣に置いてあるティッシュを何枚か手に取った――
数分後~~
(は~、立て続けに抜いたら疲れたなぁ……)
立ち上がり服を着る。
「よし! タピってこよ!」
財布とスマホを手に取って部屋を出た。
「うわっ!?」
家から出たタイミングで慌てて隠れる竿理。
「ぎゃはは! でさー、そん時アタシ勃起しちゃっててー」
「やだぁ、大きな声でやめてよぉ♪」
竿理の家の前を自転車で横切っていく、同じクラスのバカップル二人。
「チッ……あいつらこれからヤんのかな? くっそ~羨ましい……」
妬む竿理。
実は生えちゃったのは竿理だけではない。
竿理の住む、群魔県 立林市全体を襲ったテロ攻撃によって、このあたりに住む女の子は皆こうなってしまったのだ!
結果、女の子同士のカップルが大量に発生した。
というか市内の至る所で女子会と呼ばれる乱交パーティーが行われている有様である。
竿理も本当は参加したいのだが……残念なことに、彼女にはネット上の友達しかいない。
欲望は……満たされない。
「なんか萎えちゃったな……今日はもういいか……」
落ち込んでスゴスゴと家の中に入って行く。
部屋に戻って再びパソコンの前に座った。
ネット上だけが彼女の居場所である。
「う~ん、神絵師をいっぱいフォローしてると股間に悪影響だな……」
キノコ(比喩)をイライラさせながら皆の呟きをチェック。
ビビっときたイラストに片っ端から「いいね!」を付けていく。
その中で、ある呟きが彼女の目を引いた。
「あっ! これ『ごちブタ』のピノちゃんだ!」
発見したのはとあるキモオタの呟き。
パッケージに人気アニメのキャラクターにそっくりのイラストが描かれた、新作オナホのレビューをしている。
「オナホ! オナホかぁ……その手があったか!」
慌ててネットでオナホを検索。
本来彼女の人生には無縁の物だったはずだが、今となっては希望の光である。
「うわ、いっぱい出て来た……どうしようかな……」
大手通販サイトで大量のオナホを発見。
とりあえず評価の高いものを選んだ、レビューをチェック。
「…………うう……不意打ちで泣かせるのやめてよぉ……」
亡くなった恋人のことを思い出したというレビューを見て泣いてしまう竿理。
別の目的でパソコンの隣に置いてあったティッシュで涙を拭く。
(買ってみたいけど、私クレカ持ってないからこういうサイトで買い物出来ないんだよなぁ……)
一昔前までは代金引換で買うことが出来たのだが、ドローン配送が主流になって既に十年以上が経ち、代引きというものは無くなってしまった。
(あっ、立林でも売ってるお店あるんだ! ふんふん……利○書店か……よし!)
善は急げである!
竿理は再び財布とスマホを持って外に出た。
「エルク! タクシー呼んで!」
「了解しました。竿理はそこで待っていてくださいね」
竿理は家を出てスマホに向かって話し掛ける。
エルクというのは彼女の持っている汎用AIだ。
様々な種類があるが彼女が使っているエルクはクーデレ幼女型である。
エルクにタクシーを呼んでもらってからは、耳にイヤホンをはめて待つ竿理。
「…………おっ、来たか」
やって来たタクシーに乗り込んで、目的地を座席の画面に入力。
最後にスマホをかざして料金を払えばOKだ。
自動運転のタクシーはドアをロックし一人でに動き始めた。
(ふっふっふ……とりあえず目標はピノちゃんのオナホだね……VRごちブタも使えばもう本物と触れ合ってるのと変わらないジャン! 二次元の世界と繋がれるなんて……あっ、私もレビュー書いてもいいかも! 今時の女子向けオナホレビュー!)
タクシーの窓でニュースを見ながらムフフと笑う竿理。
期待に胸と股間が膨らむ。
しばらく乗っていると、目的の店が見えてくる。
駐車場に降りてから店を見上げた。
「ごくり……ここか。今更だけど恥ずかしくなってきた……」
店の看板には『男の楽園!』とかそんな感じの文字が並んでいる。
現役女子高生の竿理が一人で入るにはちょっと抵抗がある。……ちょっとじゃないかも。
「……行こう! ピノちゃんが私を待ってるんだ!」
覚悟を決め、竿理は歩き出す。
その瞳に愛……ではなく欲望の火をともして。
「ゲッ!?」
店内を挙動不審に歩き回っていた竿理。
何かを見つけ咄嗟に隠れる。
「あはは! 見て見て! これすっごいよー?」
「フフ……じゃあ今夜使ってみる?」
店内で身を寄せ合っていたのは、同じクラスの女子二人。
(あいつら付き合ってたのか……くそっ!)
顔を見られると気まずいのでそ~っと離れた。
大きくまわりこんで別ルートからオナホコーナーへと向かう。
「いたー! 私のピノちゃん! かわいいー!」
オナホコーナーまでやってきた竿理。
目当ての物を見つけテンションが上がる。
「この目! つまんなそ~な顔したこの表情が良いのよね! あぁ~ゾクゾクする……」
すぐに手に取って、商品棚にある袋に入れた。
「あっ! 他のキャラのもあるジャン! ふふ……どうせなら全員と……そうだ、ローションも買っとけってオナホデビューブログに書いてあったっけ」
あれもこれもと袋に入れていく竿理。
「ぶははは! これでもう寂しい夜ともおさらばヨン!」
喜び勇んで店を出て行こうとする、店の出口にあるゲートで自動決済が行われるのだが……
「――えぇ!?」
ビー!!! っという警報が鳴り出入り口がロックされてしまった。恥ずかしい。
「あっー!? 手持ちがもう二十円しかない!?」
スマホで残高をチェックしてびっくり!
これでは帰りのタクシーにも乗ることが出来ないだろう。
「今月分のベーカム(ベーシックインカム)まであと三日だっけ……くっそー! 一日一回タピるとかやるんじゃなかった……」
後悔しても既に遅い。
「はぁ……商品返してこよ……エルクも教えてよ~……」
「申し訳ありません竿理……」
しょぼくれて店内に戻って行く竿理。
ピノちゃんとのひと時はしばしお預けだ。
結局この日はお父さんに連絡して、迎えに来てもらいましたとさ~。