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村人☆リスペクト  作者: 深抹茶
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ドラゴン退治・1

 次はどこに行こうかと、いつものようにギルドに来ていた二人。いつもと違ったのは、チラシのようなものが机や台などいたるところに置いてあることだろう。なんだろうと手にしてみれば、それはあるクエストの募集だった。

「ドラゴン退治?」

「らしいな。しかもダークドラゴン」

 ダークドラゴンは肉食で、村ひとつくらいなら簡単に滅ぼすことが出来る。危険なクエストであるのは確かだろう。しかし今回は国からの依頼だけあって報酬は高く、募集人数も多かった。二人のレベルは現在、ユーリエ・レベル28、フローディ・レベル19。少し難しいクエストを受けるにはちょうどいい。

「参加してみるか?」

「えー……」

「募集人数結構多いからたぶん危なくないだろ」

「いや、街から出たくない。というか小さな村にいきたい」

 大真面目な顔をして告げるフローディに、ユーリエは出かかったため息を飲み込んだ。再度チラシに視線を落とす。報酬もいいし、出来ることなら参加したい。端から端まで読んでみると、書かれている村の名前に目が止まった。これは使える。

「わかった。じゃあノリーニャに行こうぜ」

「ねえ、聞いてた? 街から出たくないんだけど」

「聞いてたって。小さい村に行きたいんだろ? ノリーニャはそんなに大きな村じゃない」

「え、そうなの? 行ったことあったっけ?」

「おう。っても三日くらいしか滞在してないけどな」

「そっか。なら、行ってもみようかな」

 心底楽しみだと、これから行く村に思いを馳せてそれぞれ笑みを浮かべた。


***


 ノリーニャに到着して、まずユーリエがしたのはギルドに行くことだった。それ自体はいつものことなのでフローディは気にも止めずについていく。聞いていた通り小さい村だ。いいな、住みたいな。なんて呑気にしていられたのもユーリエがクエストの登録を済ませるまでのこと。

「ユーリエの嘘つきっ!」

「嘘はついてねーよ。黙ってただけ」

「ばかばかばかばかっ!!」

 ユーリエが受けたクエストは件のダークドラゴンの討伐だった。フローディの叫びが辺りに響くが、気にする人間はいない。そもそも受付以外には人がいないのだ。怒り心頭のフローディを宥めつつ、ユーリエは何とか待ち合わせとなっている村の入り口まで連れて行こうとする。しかし今回ばかりはフローディも頑として聞き入れようとはしない。

「悪かったって、な?」

「ほんとに謝るつもりある? だいたい、最近のユーリエは横暴だよ」

 フローディがさらに言葉を続けようとしたとき、ギルドの扉が外から開かれた。

「あのドラゴン退治に……ユーリエ?」

「マキナ?」

 入ってきたのはマキナたち勇者一行だった。

 お互いにこんなところで再会するとは夢にも思わず、ただ呆然と互いの顔を見つめるユーリエとマキナ。思わぬ登場に驚きを隠せないフローディの背中を軽い衝撃が襲う。

「ひっさしっぶりー」

「キクラ?」

 背中にへばりついているのはキクラだった。最初の警戒心はどこに置いてきたんだと言葉が出かかるが、引き剥がすのが先だと身体を揺する。しかし抵抗むなしく締め付けが強くなるだけだった。そんな四人のところへ、受付が終わったのかザイークとトルナモが歩いてきた。

「何をやっているんですか?」

 呆れた調子で声をかけられた。久々に会って早々呆れられることもあんまりないな。でも前も誰かに呆れられた気がする。なんて思っていれば、再びギルドの扉が開いた。

「ロゼに、エル?」

「なんだ、二人も来ていたのか」

 ドラゴン退治の公募が今日で終了することを知ってロゼとエルもこのノリーニャへやってきたらしい。二人もクエストに申請し勇者一行と和やかに挨拶を交わす。六人が頑張ろうと励ましあっているのに、フローディは未だに不機嫌だ。

「なあ、みんなもいるし、行こうぜ」

「今回ばっかりは許さないんだから。何だよ。いっつも人の意見をないがしろにしてさ」

「それは、その……」

 ユーリエにも少なからずその自覚があるのか、言葉を濁した。

 自分の行いを振り返り、確かに軽率だったかもしれないと恥じる。こんなにも嫌がるのならしょうがない。今回は置いていこうか。

 ユーリエは受付に視線を走らせる。二人の不穏な空気に気づいたのか、ロゼとマキナが近づいてきた。

「どうしたんだ?」

「いや、その……」

「体調でも悪いんですか?」

 親友がドラゴン退治に行きたくないと駄々をこねるのだとは言えず、言葉を濁すユーリエ。手助けする気はないのか、フローディはそっぽを向いた。

「あの、無理しないほうが……」

「そうだぞ。倒れでもしたら困るのは共に戦う仲間なんだから」

 そこまで言われてさすがにユーリエもなんだか申し訳なくなった。やはり今回はフローディを外すべきだ。長い旅なんだから、こんなこともあったっていいだろう。

「フローディが行きたくないらしいんだ。だから、今回は俺一人参加しようと思う」

 困ったように笑って言われれば、罪悪感はあるものの、引っ込みがつかなくなったフローディは声を上げられない。まさか本気ではあるまいとユーリエを見ても視線は合わなかった。ロゼは渋い表情でフローディとユーリエを見比べる。マキナはどうしていいのかおろおろするばかり。不穏な空気に気づいたのか、他の四人もこちらを伺っている。初めに動いたのはロゼだった。


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