砂漠・3
「ユーリエさん! フローディさん!」
いつの間にか戻って砂蛇の体をあちこち調べていた隊員たちだが、そのうちの一人が駆け寄ってくる。手にはなにやら見慣れない宝玉が握られていた。
「それは?」
「実は砂蛇の体内から出てきたんです。貴重なもののようなので、お二人に」
隊員の手から渡されたそれは血が綺麗に拭い去られて、淡い光を発していた。どこか温かみのあるそれに、知らず魅かれてユーリエは手を伸ばす。砂漠の熱とは別の温もりがそこにあった。
「ありがとうございます。いただきます」
「では、調査に戻ります」
お二人はもう少し休んでいてくださいと、いつの間に設営したのか、テントの方を指差した。ぺこりと頭を下げて、二人は中に入る。適度な広さのそこに腰を落ち着けて、もう一度、まじまじと宝玉を見る。独特の色合いのそれは、けして不快になるような色ではなく、むしろ心をぽかぽかと暖めてくれるような色合いだ。どことなく光っているようにも感じる。ユーリエはまるで宝物のようにそれを包み込んだ。何故だか大切にしなければいけない気がする。それが何故かはわからないけれど、守らなければならないもの。
「なんなのかな?」
「わからない。けど……」
「……暖かいね」
「ああ」
フローディはふわりと笑って宝玉を包んだユーリエの手に自分の手を重ねる。なんだかわからないけれど、相棒の大切なものだということさえわかっていれば、それで十分だ。
調査が終わったのか探索隊がパブオに戻ると声をかけてきた。ユーリエたちもそれに倣ってオアシスに足を踏み入れる。訪れたときと同じくらいの歓迎ムードに、二人は辟易してしまった。それに探索隊が砂漠であったことを町長に話せば、町は一気にお祭り騒ぎ。町中を巻き込んだ大宴会へと発展した。
飲めや歌えの大騒ぎの中でユーリエはフローディにこそりと声をかけた。
「次はどこに行こうか」
「どこでもいいけど、とりあえずタルビデにいるのは今日までかな」
フローディも今度は行きたくないなどとは言わず、正直に告げる。
砂漠の民だから熱いわけじゃないかもしれない。ここの人たちだけかもしれない。それはわかっているけれど、しばらくタルビテを訪れることはなさそうだ。
「じゃ、マネットに戻ろうか」
ステータス帳の証明印を短期パスにしておいて貰って本当によかったとお姉さんに感謝しながら、町の人たちにもみくちゃにされる二人。自分たちの頑張りが認められた証拠みたいで、たまにはこんな風に歓迎されるのも悪くはないかもしれない。




