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水城と寺元は書店から公園へと移動した。
田舎と言っても喫茶店はあちこちにあるので、
「何か茶でも飲まないか? 一杯くらいなら奢るぞ」
と、水城は提案したのだが、
「本を買った後だしいいよ。喫茶店のコーヒーって結構するでしょう」
と断られている。ただ、公園の近くにあった自販機で葡萄ジュースを二本購入し、片方を寺元に投げ渡したところ、それは素直に受け取った。
二人は公園内へと入りベンチに腰をかける。
「ありがとうね、これ」
そう言いながら、寺元はジュースを一口飲んだ。それが、清涼飲料水のCMの如き爽やかな飲みっぷりだったので、水城もつられてそれを飲んだ。
キャップを閉め、
「さっきの続きなんだが……」
と、話を切り出そうとしたところ、
「そういえば……」
という寺元の声と被ったため、彼女の話を聞いてから続きを聞くことにした。
「私達、結構仲が良かった筈だけど、お互いの連絡先をまだ知らなかったよね」
との事であった。
(まぁ、仲が悪くはなかったんだろうが良かったかって言われると分からないんだよなぁ)
と、水城にはいまいちピンと来ない。
ただ、お互いの連絡先を知らないのには仲の良し悪し以前の理由がある。
「そりゃそうだ。中学の頃の俺は携帯を持っていない」
これが一因で当時の仲間とも疎遠になってしまっている。
「そういえばそうだっけ。前に聞いた筈なのになんで登録されてないんだろうってちょっと思ってたんだ」
寺元は疑問が晴れたからか、先程より晴々とした表情をすると、重ねて
「それじゃあ、改めて電話番号とか諸々を教えてよ。私も教えるからさ」
と言った。
「分かった」
そう答えると、
(高校一年の頃に連絡先を交換した女子みたく、交換するだけ交換して連絡はしないのだろうな)
などと思いながら交換した。
しかし早速、
『次の休み空けておいてね。図書館で一緒に勉強しよう』
という文を彼女から受信した。
これによって、先程の考えは杞憂に終わったと言っていいだろう。
「空けておくも何も最初から予定は入ってないよ」
「そう、なら良かった」
その後、最近暑い日が増えて来た事や、最近どういった音楽を聴いているのか等毒にも薬にもならないような話をして二人は別れた。
帰路。水城は先程購入した漫画を、寺元は新たに増えた連絡先を見ながらそれぞれの自宅へと向かって行った。