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ザマの戦い ~包囲殲滅返し

 ザマの戦いとは、北アフリカのザマで行われた第二次ポエニ戦争の趨勢を決したローマ軍とカルタゴ軍の決戦である。ローマ軍率いる大スキピオがとった戦術とは、カンナエの戦いでハンニバルにやられた包囲殲滅戦術のそのまんま返しである。すなわち、優秀な重装歩兵部隊で中央を堅持して両翼の騎兵戦を勝利し、そのままの勢いで中央を囲んで敵をミンチにするという作戦である。


この作戦で重要なのは騎兵戦力である。ハンニバルは優秀な騎馬民族ヌミディアと友好関係を持つことで優秀な騎兵戦力を保持していた。そこでローマはハンニバルの前にヌミディア軍を敵本国まで追撃し敵の王を捕らえ、傀儡を玉座に据えることでハンニバルから騎兵戦力を奪いつつ自らの騎兵戦力を強化したのだ。


それに対しハンニバルは捕らえられたヌミディア王の息子を説得しその勢力を自軍に引き込む。しかし、その数に練度はローマ側が確保した騎兵戦力と比べ物にはならない。だがハンニバルにはこの劣勢を巻き返す秘策があった。


ローマとカルタゴの両軍は互いにヌミディアからの騎兵部隊が到着するまで互いに位置を認識しながらズルズルと決戦を先延ばしにする奇妙な間が生まれた。増援の到着と共に両軍は互いに接近を開始。戦いの前に最後の交渉が行なわれたが決裂。紀元前202年10月19日歴史に名高いザマの戦いが始まったのだ。



 戦力と布陣


ローマ軍は内訳は、重装歩兵:20.000名、軽装歩兵:14.000名、ローマ騎兵:2.700名、ヌミディア騎兵:6.000名。重装歩兵を中央に配置し、その前面に軽歩兵を展開する。そして全軍の左右両翼に騎兵を配置するオードソックスな陣形である。


対するカルタゴ軍は歩兵:50.000名、騎兵:3.000名、戦象:80頭。歩兵の数こそローマを圧倒している物のその内実はド素人の市民兵にやる気のない傭兵集団で水増ししたものである。信頼できる古参兵の数は一部しかいない。だが数は力は偉大だ。ハンニバルは歩兵部隊を三つの段に分けた。即ち前面の一段目にやる気のない傭兵部隊を、2段目めに新兵同然の市民兵を、本命の古参軍団を三段目に配し順番にぶつけることでローマ軍団の損耗と疲労を与え古参軍団に有利に戦わせようという腹である。


そしてハンニバルがこの戦で必勝の秘策として持ちだしたのが、戦象部隊である。象は前進しかできない融通の利かない存在だがその突進力は圧倒的である。トラック程のサイズの物体が真っすぐ突っ込んでくることを考えてみよう。象はそのまま雑草でも踏む様に人を踏みつぶし前進するのだ。


この戦象部隊を前面に展開させ、ローマと同じように騎兵を左右両翼に配置。



 戦闘展開


 両軍の戦闘は戦象の突撃から始まった。だがこの突撃は失敗してしまう。象の存在を確認したスキピオが事前に各歩兵部隊に間隔を広く開けさせておいたのだ。象たちは流れる様にこの隙間に誘因されてしまい方向転換に手間取る間に騎手を殺され無力化されてしまう。


戦象の突撃に失敗したのを見てハンニバルは両翼の騎兵部隊を後退させる。ローマ側はすぐさま騎兵部隊の優勢を確保するために追撃を開始する。騎兵が敵の軍団を刺す為には敵の騎兵部隊は絶対に排除しなければならない。なぜなら敵軍団を攻撃している間に後背から攻撃されればなすすべも無く殲滅されてしまうからである。


だが、これはハンニバルの時間稼ぎの策であった。騎兵部隊には戦闘は行わずにひたすらに敵の騎兵部隊を戦場から引き離す様に指示を出していたのであった。騎兵戦で勝てぬと判断したハンニバルは始めからカンナエでローマ軍がそうしようとしたように、中央の歩兵戦を制する事で勝利しようとしていたのだ。



 しかしながら中央の歩兵戦でもローマ側が優位に戦闘を繰り広げていた。傭兵部隊は早々に士気崩壊し後退しようとする。結果前進しようとする二段目の市民軍と衝突する有様であった。そのためハンニバルは予定より早く古参兵を戦場に出す羽目になってしまった。


疲労したローマ軍に対し、古参兵は優勢に戦闘を進めた。ローマ軍戦列中央を大きく押し込み、カルタゴ軍はたわんだ板に包まれるような形になっていた。このまま中央を突破しローマ軍をへし折ればカルタゴの勝利である。


その時、カルタゴ軍の騎兵を駆逐したローマ軍の騎兵部隊が戦場に復帰した。ローマ軍騎兵はカルタゴ軍の後方へ強襲、歩兵戦列の両翼もカルタゴ軍の側面へ機動した。ここにカンナエの再現が成された。包囲されたカルタゴ軍はパニックに陥り、傭兵や市民兵は大半が降伏した。古参兵は必死に抵抗したが、そのために彼らは殲滅された。ハンニバル自身は戦場を脱出してカルタゴへ帰還し、降伏やむなしを主張することになる。この戦いの後講和条約が結ばれ、第二次ポエニ戦争は終結するのである。


これが後に「このザマだよ」の語源となるザマの戦いのあらましである(嘘)

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