町に着きました
俺たちが歩き出してから約3時間程が経って、いい加減草原の景色にも見飽きてきたと思いながら歩いていると、ようやく景色に変化が訪れた。
「ゆう君、あれ町じゃない。」
「ああ、そうみたいだな。」
ようやく人がいそうな所に着きそうだ。もう足がくたくただ。まあでも、歩いている間にモンスターと遭遇しなかったのは、幸運だったのだろう。
「ゆうくーん、疲れたー。」
「疲れてるのは俺だ。お前はほとんど俺の背中の上だっただろうが。」
歩き始めたときは咲姫は俺なんかよりもずっと元気だったくせに、結局俺がおんぶしていくことになったわけだ。まあ別に悪い気分ではなかったのだが。
そんなことをしている間に、町の前までたどり着いた。
「ゆう君、ゆう君。お腹空いたー、何か食べようよ。」
「無理だ。この世界で日本円が使えるとは思えないからな。」
「えっ、じゃあどうするの!このままじゃ空腹で死んじゃうよ。」
「悪い、全然分からん。」
さて、本当にどうしようか。正直町に着けば何とかなると思ってたけどよく考えればそんなわけないんだよな。頭回そうにも俺も腹が減って頭が全然働かない。
「そうだ、ゆう君。私たちの今の目標は人に会うことだからさ、とりあえず誰かに話しかけようよ。」
「確かにそれもそうだな。すっかり忘れてた。」
この世界で俺たちの言葉が通じるかは分からんが、まあジェスチャーでどうにか通じるだろ。
「そうだな、それじゃああそこに立ってる人に話しかけるか。」
「大丈夫かなあの人、私たちがここに来てからあの人全く動いてないよ。」
「天気も良いしひなたぼっこでもしてるんじゃないのか。大丈夫だろ。」
咲姫の心配し過ぎだろ。まあ何かが起きても俺が盾になればいいからな。それに相手は人間だから、スライムよりはマシだと思うからな。
「あのー、ちょっとお話よろしいでしょうか。」
「こんにちは、ここはシントラルの城下町です。」
おお、日本語が通じる!これなら話は早そうだ。咲姫は心配してくれたけど結構いい人っぽいぞ。
「実はこの町に着いたはいいんですけど。お金がなくて困ってるんですよ。」
「こんにちは、ここはシントラルの城下町です。」
あれ、なんかさっきも同じことを聞いた気がするんだが、きっと気のせいだよな。
「出来たら、お金貸してくれませんか。」
「こんにちは、ここはシントラルの城下町です。」
やっぱり同じことを聞いた気がするんだがきっと気のせいだよな。
「あのー、すみません。」
「こんにちは、ここはシントラルの城下町です。」
流石にもうだめだ。絶対こいつ同じことずっといってやがる。確かに名前も知らない奴から金貸してと言われても嫌だと言うのは分かるが、なんで同じことを言い続けるんだ。
「無駄ですよ。その人はそれしか言えないんですから。」
話しかけられた方を見ると、そこには見知らぬ男が立っていた。