高校生は平凡を望む?
見切り発車&初投稿!
エタらないように頑張ります。
7月某日ーー。
じめじめとした空気の中、某所の高校の教室の角には、死んだ魚のような表情机に突っ伏した少年が居た。
「ふぁぁ、もう一眠りするか…」
周りを見れば、昼休憩で学食を食べに行ったり、自分の弁当を友人と談笑しながら食べているクラスメイトの姿がチラホラ、いや、半分ほどがそうだろう。
が、少年はただ机に突っ伏しているだけ。
誰も話しかけに来る様子はーー。
一人だけ居た。
「大地くんっ、どしたの?体調悪い?」
名を白崎詩織という。校内でもダントツで人気の美少女である。腰まで伸びた艶のある濡れたような黒髪。少し垂れ気味の目は優しげである。スッと通った鼻梁に小ぶりの鼻。薄桃色の唇が完璧な配置で並んでいる。
そんな詩織であるが、顔立ちも至極平凡である大地をよく構うのだ。とある事情で居眠りが多い大地だが、そのせいで不真面目な生徒と思われており(平均点を取ってはいるが)、詩織の面倒見の良さから、気にかけられていると思われている。
「いや、なんでもーー。白崎さんっ!?」
あり得ない程の殺気とも言える眼光に晒され、驚きで目が覚める。
しかし、詩織は大地の顔を見ただけでとても嬉しそうな顔をする。
そしてそれを見た周りの男子から発せられる殺気。
「ねぇ、お昼、良かったら一緒にどう?」
より一層強い殺気が部屋を満たす。
大地は、この殺気に気付いて!平穏を俺にください!と心の中で叫んでいた。
「あはは、誘ってくれてありがとう、だけど食べ終わったから他の人とでも食べたらどうかな?」
そう言ってつい先程食べたゼリーの空き容器をヒラヒラと振ってみせる。
しかし、天使の追撃は続く。
「ダメだよ大地くんっ、ちゃんと食べないと!私のお弁当あげるから」
気付いて!俺に構わないで!という大地の思いもいざ知らず。ニコニコしながらクリティカル攻撃を繰り返す天使。
「こんにちは、大地くん」
「詩織は又彼に世話を焼いているのか?寝惚けたままの人に詩織の手料理の味がわかるわけがない。俺が許さないからな?」
刻一刻と増していく圧力に、大地がうんざりした顔をしていると、救世主が現れたーー。ように見えたが、彼の登場は一層この場をややこしくするだけだ。
利賀 祐也だ。
文武両道、才色兼備。そんな言葉が似合うような優男で、思い込みが激しく、言動が気障過ぎるという点を除けば完璧なのだろう。
そして唯一挨拶をしてくれたのは小鳥遊 弥生だ。身長170cmと女子にしては高い背と、その引き締まった体、意志の強いキリッとした目が特徴だ。祐也の通っている道場の師範の娘でもあり、剣道の世界大会優勝者でもある。
「ん?なんで祐也くんの許しがいるの?」
詩織の言葉に一瞬吹き出しそうになる大地であるが、それをしてしまったら負けである。
(神様…利賀君を勇者召喚してください…あ、だけど俺はお腹いっぱいなんで召喚しなくても良いです)
半ば自暴自棄に、大地は何処かで見ているであろう神に念を送る。
念が伝わったのか、それとも偶然か。その瞬間、祐也の足元から、教室全体を覆う魔法陣が現れた。
「ーー!?皆教室から出て!」
異常に気付いた担任の薫先生が叫ぶが、それも遅く、魔法陣から放たれた光で教室は完全に覆われた。
その後、白昼の高校で起きた集団失踪事件として、世を騒がせる事になるのだが、それはもう少し後のお話。