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スカイ・フラグメントー終わる世界に死を受けてー  作者: 薤露_蒿里
第一章 優しすぎるこの世界が
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テルマエ―風呂―

 魔法の訓練に疲れた俺たちは、疲れを癒すためにアーサーの勧めで風呂に向かっていた。向かっていたのはいいんだ。ただ。アーサーとは途中で別れることになると思っていた。しかしだ、アーサーはそれがまるで当然のような顔をして男湯の扉に手をかけている。

「ちょっと待て、お前は女湯だろ?」

「“失礼だと思う……。”」


 なぜ、ぶすっとした表情をするのだろうか……。


「“何やってんだ、早く入りやがれ!”」


 後ろから、グジャランドが登場した。助かった、助け舟登場だ。


「アーサーが男風呂に入ろうとしてるんです!」

「“何言ってんだ? あ、さてはアーサーテメェコイツからかったな!!??”」

「“それは心外別にからかってない……。”」


 そう、言うアーサーの顔には邪悪な笑みが浮かんでいた。


「“やっぱりなぁ……おい、吸血鬼。安心しろ、コイツは一応男だ。”」

「またまたァ、二人してからかってるんですね。全く、チーフも人が悪い!」

「“失礼だと思う……。”」

「“マジなんだよな、これが……俺も信じたくないが……。”」


 グジャランドが非常に残念そうな顔をした。


「“ごめん、チーフ私は心に決めたスライムがいる…‥。”」


 予想がつく、間違いないあのハードボイルドスライムだ。世界一生意気な可愛らしいフォルムのむちゃくちゃ格好いいあんちくしょうだ。つまりは、プルルだ。スライムで心に決めると言ったらそれ以外ありえない。だが、ひとつだけ言いたい。


「BLじゃねーか!」

「“びーえる…‥?”」

「説明しよう! BLとは男色のことである! 貴様も男、プルルも男即ちBLだ!」

「“お前は、また珍妙な言い方すんだな。”“とりあえずとっとと入るぞ!”」

「あ、すみません。」


 グジャランドに話を打ち切られ俺たちはとりあえずで更衣室で服を脱いで風呂に入る。その間も、アーサーのきめ細やかで白い白磁の肌がチラチラと視界に入ってとても気が散った。


「“先に邪魔をしているぞ。”」


 プルルの声だ、どこからともなく生意気くさったスライムのダンディヴォイスが聞こえてくる。スライムが風呂に入るのは正直想像できない。だが、声をたどるとまるでコメディのような風景が広がっていた。浴槽に、絶えず湯を供給し続ける滝のような場所があって、そこでプルルが滝に打たれて振動しながら浮いたり沈んだりを繰り返しているのだ。


「プッ……。」

「“おぉ、いつもそこにいるなコノヤロウ。湯加減いかがですか、コノヤロウ!”」

「“いい塩梅だ、疲れが取れる。」


 あれで気持ちいいのだろうか、俺があの状態だったら間違いないいつ溺れるかとヒヤヒヤしているところだ。


「“プルル、流されないように抑えてあげようか……?”」


 あぁ、それなら気持ちがいいかも知れない。


「“遠慮する。”」

「“どうして?”」

「“どうしてもだ。”」

「“遠慮はいらない……”」


 そう言いながらアーサーはプルルに近づいていく。


「“はぁ、好きにしろ。”」

「“ん、好きにする!”」


 アーサーはプルルを抱きとめている。


「いつもあぁなんですか?」

「“だいたいあんな感じだな。あいつはプルルにお熱なんだよ。”」

「はぁ、年少税では一番可愛いと思ったんですがねぇ。」

「“俺も最初はそう思ってたよ!”“ところで、酒場のサキュバスはどうだ?”」

「あれ、チーフの奥さんですよね?」

「“ちげーよ! そっちじゃねーほうだ!”」

「あ、そっちですか。すごく、エロいです。」

「“だろ?”」


 これぞ、漢同士のボーイズトークというやつだ。実に楽しい。


「“私は、ママが一番いいと思う……。格好良い……。”」

「“いい女だろ? 自慢の女だ、やらねーよ?”」

「“わかってる、私にはプルルが居る……。”」

「“なんだか、複雑な気分になるな。”」

「そういえばプルルさんの好みって……?」

「“そうだな、いい女がいた。可愛げあって、芯が強い女だった。”」

「“私は……?”」

「“お前は、男だろ?”」

「“でも、プルルがすき。”」

「“どっちにしろ、寂しい思いをさせない自信がない。諦めろ。”」

「ところで、その人って……?」

「“俺の名誉に関わるから控えさせてくれ。”」


 なんだかプルルにははぐらかされた気がするがその表情から想像するに俺はフラれたんだと思う。いくら外見がスライムでもこれだけの色男だ、俺が女だったら放っておかない。よほどモテる女かもしくは、男を見る目が無いかのどちらかだ。


「“そういや、魔法を習ってるのか?”」


 少しの沈黙のあと、グジャランドが沈黙を終わらせるために急に切り出す。


「“ん。教えてる……。”」

「“で?どうなんだ?”」

「“魔力は、多分アルコシュの伝説としか比べようがない……。”」

「“そんなにすごいのか?”」

「“アイアスが壊れそうになった。”」

「“それはすごいな……。じゃあ剣はダメか……。”」

「“人間が剣士として吸血鬼と肩を並べる方法……魔法と剣の両立……。”」

「えっと、俺はどっちもかっこいいと思ってます。それに、初めて戦った時は剣でした!」

「“お、お前らああああ!! わかった、俺は嬉しいぞ!! 俺の考えた最高にかっこいい剣士が出来上がる!!!”」


 グジャランドが感激して泣き始めた。なにがそんなに嬉しかったのだろうか、そんなに吸血鬼が好きなのだろうか?

アーサーは男の子なんで大丈夫です!

合法です!むしろ脱法です!!

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