俺の母はおつむが弱い
ふと、頭に湧き出たので。
続くかどうかわかりませんが、一応連載中にしておきます。
ブルルル…ブルルル…
午後の授業。それは、昼食の満腹感と太陽の心地よい日差しの中、眠気に耐え集中力を高める一種の修練。
必死に眠気に耐える俺のもとに、一通のメールが届く。授業中だというのに、いったい誰だろうか…いや大体わかる。どうせいつものやつだ。
「えー…ここのXにこの式を代入し…」
俺は、数学の教師であり、担任でもある池野先生の目を盗み、こっそり届いたメールを確認する。
『差出人:まりん
宛先:やまと
件名:緊急!!
お兄ちゃん大変!またお母さんがナンパされて連れていかれちゃった!!
ps 帰りにプリンを買ってきて』
「あぁ…やっぱり…。またなのか…」
てか妹よ…母が心配ではないのか…。
「幸村、どうかしたのか?」
「あ、先生」
俺のつぶやきに先生が反応する。その表情は、『心配』ではなく『呆れ』である。いつものこととはいえ、俺は悪くないのだから、その表情はやめてほしい。
「あのー…えっとですね…」
もういつものことなので正直に白状する。
「先生、母が心配なので帰ってもいいですか?」
その一言で、先生は「またか…」とつぶやき苦笑する。本当にやめてください、俺は悪くありません。
△△△△△
俺の名前は、幸村大和。今年で17歳になる高校生。
父、幸村長門と母、幸村千里、そしてひとつ年下の妹、幸村海の四人家族の長男。
これといった特技はないが、基本何でもでき、よく言うと万能、悪く言うと器用貧乏。それが俺、幸村大和。
父である長門は、非常に優秀な医者で、『奇跡の腕を持つ医師』なんて呼ばれている、俗い言う『天才』だ。しかし、最近…いや結構前から『あること』に悩まされていて、20代後半からどこがとはいわないが、薄くなってきたらしい。さらに、年齢より老けて見える。
妹の海も、『天才』のひとり。わずか10歳で、とある貿易会社のコンピュータのハッキングに成功させた美少女。完全に犯罪だが、今のところばれてないらしい。俺としては、いつ青い制服着た人たちが来るのか内心ビクビクしてる。なまじ頭がいいため、学校には碌に通わず、ニート生活をエンジョイしている。まぁ妹がニートなのは、他にも理由があるのだが…。
そんな環境で育った俺だが、劣等感などは一切ない。父も妹も天才だが、天才でも出来ないことがある。それを知ってるため、基本何でもできる俺は、それほど劣等感を抱かないのだろう。
ん?ひとり紹介を忘れてるって?まあ待て、今から話す。
母の千里。間違いなくうちの家族で一番癖の強い者が彼女だろう。
童顔で、身長153㎝、体重は知らないが、とてもいいプロポーションをしている。とても今年33歳とは思えないくらいのむっちりロリ巨乳美少女っぷりだ。前に一緒にデパートへ行ったら通報されかけたレベルだ。
そんな母を名詞で表すなら…『ポンコツ』だろうか…ひょっとしたらもっと酷いかもしれない…。
どれくらいポンコツなのか。ひとことで言うと、飴で釣れる。
なんの冗談かと思うかもしれないが、本当だ。『本当』と書いて『マジ』だ。その証拠に、実際釣れた時の動画を持っている。
一度、母型の爺婆が母が中学生のころ、病院に連れて行ったことがあるらしいのだが、何の異常もなかった。つまり、天然のポンコツである。一応父も診たが正常だったもよう。
そんな母だが、見た目良くおつむが弱いため、よくナンパされ、スカウトされ、騙され、攫われる。そのため、家では『母を一人にするべからず!』なんてルールもある。それでも母も人間であるため、ひとりで外にも出るだろう。そしてひとりで外出するたび、ナンパにあれな撮影、詐欺や誘拐などで捕まるのだ。
よく今まで無事に帰ってこられたななんて思うかもしれないが、父の財力に物言わせた行動力、妹の天才的なハッキングセンス、俺の無慈悲な一撃が無ければ、今頃見るも無残なことになっていたと思う。いや、間違いなくなっていた。
また今回も何かでつられて、ホイホイついて行ってしまったのだろう…。これで何度目だろうか…いい加減に学習してほしいものである。
俺は歩道を駆けながら、妹に電話をかける。
プルルルル…プルル…ガチャ
「おう海、母さんの居場所分かるか?」
「お兄ちゃん相変わらずタイミング良すぎ!?チートじゃないの!?」
天才には言われたくはないものである。
「そんなことより母さんの居場所!」
「えーっと…三丁目のラブホ前!」
「おっと近いな、すぐに向かう!」
「プリンよろしく」
そう言い俺は電話を切る。思いの外、ここからかなり近い場所ため、今回は楽そうだ。
「っと…いた!」
三丁目のラブホ前、なにやら話している母と、ナンパしたと思われるチャラそうな男達。
「でもぉ~…お父さんにダメって言われてるしぃ~」
「いいじゃんいいじゃん!ここまで来たんだから親のことなんか気にせずにさ?」
「でもぉ~」
ふむ…母も学習するのか…。ってそうじゃない。チャラ男もチャラ男でなんか勘違いしてるし…。
「いいじゃん!可愛いんだからさ?」
意味不明な理由で母の腕をつかみ、無理やりホテルに連れ込もうとするチャラ男の一匹。面倒だからチャラ男Aで。
俺は母が捕まれた瞬間走り、チャラAに肉薄する。
「なんだてめゴフアッ」
何か言いかけたようだが、俺が打ち出した掌底が顎を打ち抜き、Aの言葉を遮り昏倒させる。もしかしたら、舌を噛み切ったかもしれないが、知ったことではない。
「っ…!?なんだこいつ!?」
「オイゴラァ!!テメェら何他人の母親に手ェ出してんだ!!!」
チャラ男達は口先だけだった…。なんか『西条の暴龍』だの『戦争屋』だのニックネームがあるらしいが、非常に弱かった…。ほとんど一撃で伸びるとは思わなかった。
「ありがとぉ~、やまちゃん」
「いやいいけど…出来ればもう絡まれないでほしいんだけど?」
俺は毎度おなじみの願望を口にする。
「だってぇ~…ケーキ買ってくれるっていってたしぃ~」
今回はケーキか…。
「…はぁー…ま、無事なら良いわ」
なんか…もう疲れた…。
「とりあえず帰ろっか、母さん?」
「わかったぁ~」
今日もまた、俺のいつもの日常が終わりを告げる…。
「ひとりで行動するなってあれほど…!!!!」
「ごべんなざいぃ…!!!」
母の泣き声と、父の怒声が、家じゅうに響き渡る。
家に帰ってからかれこれ五時間。母は父に説教されてる。
もうなんでもいいけど、とりあえず腹減ったから晩飯が食いたい…。
まったくギャグしてないな~など思ってる今日この頃。
頭に湧き出なかったら書かなかったであろう作品。正直、続くかわからないような、そんな小説。
ですが、お読みいただきありがとうございます。
次回は未定