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お喋りバードは自由に生きたい  作者: Mikura
学園の有名鳥

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36.光の魔物



「ブルーノ!?」



 ピーアが倒れたブルーノの頭を抱き上げるようにして覗き込む。アロイスも傍に膝をつき、じっとその容態を窺ったあとちらりと私に視線を向けた。君のせいだな、と言われている気がする。



「気絶しているだけ、ですね。何かにひどく驚いたか、恐怖のあまり失神したように見えますが」


「ブルーノは強靭な精神を持っているはずなんだけど……痛みに臆することも、強敵を前に逃げ出すこともないんだよ。さっきまでセイリアと元気に喋ってただけじゃないか。それが急に……」



 ブルーノが強靭な精神を持っている、というのは分かる。だってマゾっ気があるからね。痛みも恐れなければ強敵には喜んで突っ込んでさぁ私を負かせ!みたいなことを言っているイメージが湧く。

 ……いや、それはともかく。そんなブルーノを気絶させた原因は私なのだろうか。特に何もしていないのだけど。軽く睨んだだけで……もしかしてそのせいか。

 多分【強者の風格】とかいう、自分より弱い相手を威圧するスキルのせいだと思う。オート発動だし、私に敵意を持つもの、私が攻撃対象と見なした者には最大限の威力を発揮しているようなので、イラッとして睨んでしまったためにこのスキルが発動してブルーノを気絶させてしまったのだろう。



(ちょっと悪い事した気分……ごめんよブルーノ)



 精神的にとてもキツい相手だったが、悪いやつではないので失神するほど怖がらせてしまったのが申し訳なくなってくる。

 怪我もしているのにホント、悪かった。癒しは光の神様の管轄だよね。私のせいでごめんね、ブルーノが早くよくなるように光の神様にお願いしとくね!

 とか考えたらスルッと自分の中から魔力が抜けた。吃驚して一瞬体が跳ねた私を視界の端で捉えたアロイスがこちらを向こうとしたが、飛び込んできた光景に目を見開いて固まった。なんとブルーノが薄っすらと発光しはじめたのだ。



「え?何が……」



 見る見るうちにブルーノの傷が塞がり、ついでにぼさぼさだった毛まで綺麗になり、そしてゆっくり目を開けた。

 ……これ、光の魔術だよね。傷を癒す光属性の魔術だよね。私、呪文唱えてないのに何故ですか神様。心の中で言ってもアウトですかそうですか。



「今の、光属性の……魔法だよね。セイリアが使ったように見えたんだけど……そういうスキルを持っているの?セイリアは光属性、なの?」


「……分かりません。何せ、魔物に鑑定を使うなんてことありませんからね」


「それもそうだね」



 【鑑定】を持っているのは現在宮廷魔道士ただ一人ということになっている。その人に鑑定してもらうにはとてつもなくお金がかかるのだそうだ。態々魔物のためにそんなことをする人間なんて居ない。つまり私のステータスは誰も分からないことになっている。



『………貴女は光の魔物なんだな』



 静かなブルーノの声がして、私の視線はそちらに向いた。この鳥が静かに喋っているというのはとても不思議な感じがするけど、今のブルーノはとても落ち着いていて、どこか寂しそうな顔に見えた。そのしおらしい態度は一体何なのか。あまり理由は聞かない方がいい気がするけど気になるので黙っていると、ブルーノは更に言葉を続けた。



『私が貴女を望むのはおこがましすぎた。その強さ……貴女は魔王様のものになるために生まれたのだな。私は私に見合った雌を探す。すまなかった』



 そう言って、悲しそうに目を伏せるブルーノ。失恋の悲しみに打ち震える彼を慰めてあげたいとかそんなことを考える余裕は私にはない。待って、ちょっと待って。今ブルーノが物凄く不穏なことを言った。物凄く不安になることを言ったんだけど!

 ブルーノは静かに主人の横に並び、もう満足したから帰ろうと鳴き声をあげる。その意思は伝わったのかピーアは優しくブルーノのふかふかそうな喉元を撫でてやりながら「もういいんだね」と言っていた。



「セイリアの属性については、秘密にしておくよ。知られたら大変なことになりそうだし。今日は付き合ってくれてありがとう、アロイス殿」


「いえ。こちらこそ」


「僕はもう帰ろうと思うけど、アロイス殿はどうするんだい?」


「せっかくなのでもう少しここに居ようかと」


「そう。じゃぁまた明日、教室で」



 そのようなやり取りがあって、ピーア達が帰っていった。その背中が扉の向こうに消えたことを確認したあと、アロイスが深々とため息をつく。そのため息の深さで彼の心労具合が伝わってきた。ごめんよアロイス、大体私のことだよねでもわざとじゃないの。許して。



「少し魔物を狩ろう。説明はまだ覚えているな?忘れないうちに復習も出来ていい機会だ」



 そういってアロイスが歩き出す。ぼそりと「ついでに話し合いもするか」と呟いたので体がシュッと細くなった。身が引き締まる思いって言うけど、鳥はホントに引き締まるからね。一瞬で身が引き締まったよ。



「で、セイリア。さっきのあれは何だ?君に聞いたスキルに癒し系のものは無かったと思うが」


「あれはスキルじゃないと思うんだよね……心の中で祈ったらなったというか」



 決して故意ではなく、魔法にするつもりは微塵も無かったことを説明する。ただ心の中で思っただけだ。ブルーノがよくなるように、と光の神に対して祈ってみたらそうなった。まさか呪文を唱えていないのに魔術が発動するとは思わなかった。



「……理由はいろいろと考えられるな。まず、君の魔力が豊富すぎて体外に流れやすいこと。そして君が呪文の形を崩して魔術を使っていること。その二つが大きいと思う」



 アロイスが言うには、私の魔力は豊富すぎるのに使う機会が少ないため、常に飽和状態。いつでも外に出る機会を窺っているようなものらしい。そして私の中には魔術は非常に簡単で、適当な言葉でも発動できるという認識があり、心の中で唱えていようと呪文を考えているのには変わりないので発動したのではないか、と。何それ魔術簡単すぎて怖い。



「相手がピーア=サウズランカでよかったな……彼女なら自分の従魔を癒した君の不利益になることを望んでするとは思えない」


「……光属性のこと?」


「あぁ。光属性で癒しの力が使える色変わりのカナリーバードだ。知られれば欲しがる者は多くなる。……君は隠し事が非常に下手でどんどん周りに自分の価値を見せ付けていくのでとても心配だ。セイリア、ちゃんと私の傍に居る気があるのか?」


「あるよ!!物凄くあるよ!!」



 私はアロイスの傍で、アロイスを護って、それで沢山お話をするという約束があるのだ。……アロイスを護るという約束をしたはずがよくため息を吐かせてしまうのは不本意なのである。本当は沢山笑わせてあげたいのだけど、中々難しいのだ。私の性能がチートなせいだよ、私が馬鹿なわけじゃない……と思いたい。

 私が光属性であることは、本当に私にはどうしようもないことだしね。隠せる隠せないはともかくとして……これも言っておかなくてはいけないだろう。と先ほどブルーノに言われたことを思い出しながら口を開く。



「心労を与えてばかりで非常に申し訳ないんだけど、もう一つ……さっきブルーノが怖いことを言っててね」



 光属性の強い魔物は、魔王に求められている可能性がある。私の存在が魔物の世界で広がって、魔王に知られることがあればもしかすると狙われるかもしれないと話す。

 ペトロネラも授業で闇属性に光属性は狙われると言っていたし、魔王が本当に闇属性なら私は狙われても可笑しくない。ブルーノの言葉のせいで余計にその可能性を考えてしまう。



「だからね、もしだけど……魔王が私を欲しがる時があったらその時は」


「自分を差し出せ、なんて馬鹿なことを言ったら怒るからな」



 言葉の先を封じられて黙ってしまった私をアロイスの金の目が睨んだ。……睨まれているし、アロイスが怒っているのも分かるんだけど、そこにある心配や怒りなどの複雑な感情は私に向けられている愛情から来ているのだと心が理解する。直接感情が伝わってくるようなこの感覚は、絆レベルのせいなのかな。



「私は君を護ると約束した。だから君は私に護られていればいい」


「……アロイスより私の方が強いのに」


「私は頭がいいからな。知恵が回るほうが出来ることは多い」


「それってつまり、私が馬鹿だってこと?」


「まぁ、否定はしない」


「ヒドイ!」



 そんな軽口を叩きながら、思う。私はアロイスにため息ばかり吐かせているのに、アロイスはどうして私を大事に思ってくれているのだろう。アロイスのために頑張ろうと思っても、いつも事が大きくなって最終的にアロイスを疲れさせているのに。

 どうして私をそんなに大事に思ってくれているの、と訊こうと口を開いたが魔物の気配を感じて、発した言葉は「近くに何かいるよ」だった。



「よし、行こう。セイリア、敵を見て何の魔物か判断して、攻撃方法を選ぶんだ。分かってるな?」


「はーい分かってます!」



 アロイスの意識はすっかり魔物狩りに向いている。だから私も頭を切り替えることにした。

 ……いつか、訊く機会はあるよね。きっと。




アロイスから見たセイリアの話も書きたい書きたいと思いつつ書いてないんですよね…どこかで書きたいなという願望があります。

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