表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お喋りバードは自由に生きたい  作者: Mikura
学園の有名鳥

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/104

33.神と魔法




「さて、午後の授業は神についての講義だ。宗教学とも言えるが、魔法を使うにあたり重要なものでもあるので魔法の授業とも言える。神と魔法は切っても切れぬものだからな」



 そんな言葉で始まった神様についての講義は、非常に興味深かった。異世界の宗教って面白いよね。まずはペトロネラが解説を交えながら神話を語って聞かせる。元の世界で言えば、神が七日で世界を作ったとかそういう類のものだ。



「昔、世界には何も存在しなかった。そこに七柱の神が生まれたことで、世界は急速に姿を変えていった―――」



 この世界を生み出したのは七つの神で、それぞれの魔力を使ってこの世界を構築した。だからこの世界にあるものは何でも何かしらの属性を持った魔力を有している。

木・火・金・土・水・光・闇の神はとても個性豊かで、それぞれ仲のいい神と喧嘩してばかりの神がいる。それが属性の相性にも関係しているらしい。


 たとえば木の神は少し気が弱く、それをぐいぐい引っ張っていくリーダー気質な火の神と仲がいい。

おっとりとした土の神とクールでドライな水の神は仲がいいが、うじうじした木の神や煩い火の神とは気が合わない。一本筋の通った金の神は喧嘩する神たちの話をよく聞いて中立に意見を言う立場で、誰と仲がいいこともない。

 そんな神々の中でも光の神は特別で、包容力があり全ての神から慕われる神。誰でもどんなものでも受け入れるがゆえに、自分を受け入れてくれた光の神を猛烈に愛したヤンデレ気味の闇の神が独り占めしたがって、他の神を遠ざけようとする。というような、非常に面白い話だった。



「光は全ての属性と融和するが、闇は光以外と相反することは知っているな?金が他の四属性を上手く中和させることがある理由もこの神々の関係によるものだとされている」



 なるほど。アロイスが仲が悪い属性も持っているのは間に金の属性が入っているからだろう。彼はもしかすると神に愛されているのかもしれないな。まさに神に望まれて生まれてきた者って感じがする。とうんうん頷いていたらペトロネラが怖いことを言った。



「ちなみに、光の属性を持つものは常に闇の属性を持つものに狙われるので、光の神が己の力をわけることは非常に少ないとされている。光属性の魔物がスライム以外で殆ど見つからない理由はこれだ。それにしても神々はスライムが好きなのか、あの魔物だけは全属性平等に生まれるのが不思議なところだ。あぁ研究がしたい」



 スライムの話はともかく、今「光属性は闇属性に狙われる」とか聞こえたんだけど空耳じゃないよね。私、闇属性の何かに付け狙われたりしませんか、大丈夫ですか。教えてください先生。



「現在特殊属性を持つ強大な存在は確認されていない。おそらく魔王が闇属性だと言われてはいるが、今の魔王は平和主義で戦争を仕掛けてくることもないからな。もし闇属性だったとして、こちら側に光属性の人間でも生まれなければ問題は起こらないだろう」



 そっかそっか、光属性の人間でも生まれなければ問題ないのか、よし安心だ。……とは思えない。相手は魔王、つまり人間でなく魔物のうちの何かだろうし、光属性の魔物が居れば狙われそうな気がしてならない。嫌な予感しかしない情報だった。



「魔術を使う際の呪文だが、これは正確に決まっている訳ではない。君たちは従魔を持っているから、従魔契約の魔法は教わったのだろう?」



 ペトロネラ云わく、魔術を発動するために必要なのは「どの神の力を借りるか」と「どのような魔法を使うか」と「自分と相手など、使う範囲を正確に認識するもの」らしい。だからどんな言葉を使っても構わないが、途中で間違ったり詰まったりしてしまうと魔力だけ消費して魔術は発動しないので、そう言ったことがないように呪文を決めて覚えておくらしい。

 テオバルトに契約の魔術を向けられたときの呪文は小難しい言葉だったと記憶している。簡単な言葉でも発動するなら、後で私も試してみたい。魔物狩りに行ったときにでもやってみようかな。



「自分の属性と相性のいい魔術以外は使い物にならないことは知っているな?私たちは魔術を使う時、己の魔力を神に捧げて力を借りているため、仲の悪い神と同じ性質の魔力は殆ど拒否されてしまう。だから自属性またはそれと相性のいい属性の魔術以外使えない訳だ」



 ……成程。だからどの神にも好かれている光の神の属性を持っているとどの属性の魔法でも扱えるのか。便利だなぁ光属性。そりゃチートだよ。私どんな魔法でも使えるってことじゃないか。



「魔術の練習は……面倒だな。各自やっておくように。何か相談があったら来なさい。もしくは初回授業の担当をしたエトガーに訊きに行くように。あっちのほうが専門だからよく教えてくれるだろう。そのうち試験をするので、サボらず練習はしておくこと。そうだな、特クラスの諸君なら中級魔法くらいは使えるようになっていなさい。参考書は配っておく」



 分厚い本がドン、と机の上に乗せられる。これに載っている、自属性の中級魔法が使えるようになれと言われた。魔術の練習をしたり、それを監督したりはしてくれないらしい。

 もしかして、魔法にはあまり興味がないとか?ペトロネラは魔物には並々ならぬ興味を示すから、そちらの研究をしていて、その他は割とどうでもいいと思っているのかもしれない。いや、その他のことに時間を当てるくらいなら研究がしたいと思っていそうだ。

 ……教師だよね?ペトロネラ、研究者じゃなくて教育者としてここに居るんだよね?本当にこの先生で大丈夫なのか不安になるよ。



「では解散。あとは自習するなり特訓するなり好きにしてよろしい。私は研究室に居る」



 風のような速さでペトロネラが居なくなった。……お昼休みの間に何か研究していてとても気になる発見でもあったのかもしれない。必要なところだけは講義してくれたようだが、それ以外がおざなりだ。しかし教師が居なくなっては授業は続かない。生徒たちはそれぞれ帰り支度を始めた。



「はぁ、ペトロネラ先生は美しかった……授業が短いことが残念だ。あ、ソフィーア様も勿論美しく愛らしいですよ、世の女性は全て美しいです」



 帰り支度を無言でするソフィーアに無視されながらも懸命に話しかけるドミニクや、熱烈な視線を飛ばしてくる鳥を視界に入れないようにしつつ私たちはさっさと教室を出る。机の前を通りかかった際にピーアから「アロイス殿、また明日。返事はよろしく頼むね!」と声をかけられた以外は特に何も無かった。

……このままいけばピーアはアロイスの友達になるのだろうか。表裏のなさそうな子だし、仲良くなれるならいいことだ。アロイスに頼れる仲間が沢山できればいいな。


 真っ直ぐ自室に帰る。他のクラスはまだ授業中だろう。誰ともすれ違わなかった。当然ヒースクリフも来ていないので、アロイスはさっさと自分で服を着替えてお茶を淹れ、一息ついている。こういうことが全部自分で出来てしまう上級の貴族って、アロイスくらいなのではないだろうか。



「さて、セイリア。今日は話すことが多そうだし、ヒースクリフが来る前に少し話し合いをしておこう。私が知っていても君が知らなかったこと、疑問に思った常識などもあっただろうしな」



 まず私の話を聞いてくれる体勢のアロイスに、今日一日色々あったことを思い出しながら一番強烈だった出来事がまず、口から出た。



「ブルーノが物凄く変態だった」



 それを聞いたアロイスは一瞬何を言われたか分からなかったらしく、少し固まった後「鳥同士だと異種族でも言葉が分かるのか」と呟いた。それを聞いて相談しようと思っていた内容を思い出した。



「あ、そうだ。他の魔物の言葉も分かったよ。【言語理解】スキルのおかげだと思う。とっても何かに使えそうじゃない?凄いスキルだね、これ」



 とても頭が痛そうな顔をされてしまった。……何故だ。



「……言語理解スキルのついた魔物で、元人間の君の価値をもっと考えるべきだったな」



 何だかよく分からないが、アロイスが疲れた顔でため息を吐いたので申し訳なくなった。

 ごめんよアロイス。でもちょっと彼の言う価値とやらがよく分からないので訊いてみた。



「あぁ、そうか。君にはこっちの人間としての知識は足りないから分からないんだな。教えよう」



 とそう言ってくれたのだけど、もし知識があったとしても頭のいいアロイスと同じ考えにたどり着ける自信は微塵も無い。ということは言わずに大人しく彼の話を聞くことにした。



ずっと出したかったこの世界の宗教というか、神様定義が出せました。

次回はアロイスとお話し合いになると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お暇がありましたらこちらもいかがでしょうか。竜に転生してしまったが同族を愛せない主人公がヒトとして冒険者を始める話
『ヒトナードラゴンじゃありません!』
― 新着の感想 ―
水の神、ドライなの!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ