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お喋りバードは自由に生きたい  作者: Mikura
学園の有名鳥

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31/104

29.クラスメイトの鳥従魔

プロローグや閑話と合わせて31話目なんですよね。一ヶ月って結構早いなぁ…


 程なくしてやってきた黒髪黒目の、中性的な見た目で性別がよくわからない綺麗な子は入口から一番近い席に座った。着ている服が和服っぽくてつい目が行ってしまう。その子の後ろには白い狐のような魔物がついて歩いてきた。顔に紅の模様が引かれている狐はちらりと私を見た後直ぐに目をそらす。関わりたくないという意識が見て取れました、はい。


 最後にやってきたのは褐色肌で赤い髪を二つに結んでいる、森林を思わせる色の瞳を持った少女だった。入口から二番目の席に元気よく座る。明るい笑顔で両隣によろしく、と挨拶をしているが、ソフィーアは静かによろしくと言うだけだし、和風美人は軽く頭を下げただけだ。挨拶されていないはずのドミニクが、自分の席からキザな態度でその少女に挨拶をしているけどまあそれは置いといて。

 少女の後ろを大股で歩いて来たのは鳥だ。鷲か鷹か分からないが猛禽類系の顔をした大きな鳥だった。少女と同じくらいの、つまり150㎝程はある巨大な鳥だ。そしてやっぱり目が合った。……なんだろう、とても驚いた顔をされた気がする。黄色の目の瞳孔が閉じたり開いたりしている。

 鳥の瞳孔がそういう動きをしている時は大抵興奮している時なのだけど何に興奮しているかは分からない。けどあまりいい予感はしないのでそっと目をそらした。これは負けとかそういうのじゃないんだよ。違うからね。



「やぁやぁ諸君、おはよう。時間に全員そろっているなんて優秀優秀。まぁ特クラスに入るくらいなんだから、皆真面目で当たり前か」



 人の良さそうな、でもどこか食えないような笑顔で教室に入って来てそのまま教壇に立ったのは白衣に眼鏡のナイスバディなお姉さんだった。紫の長い三つ編みは腰のあたりまであって、青い目は好奇心に満ちて爛々としている。恰好は科学者っぽいのだけどその表情からはマッドなサイエンティストの気配を感じた。



「私がこのクラスの担当、ペトロネラだ。よろしく頼むよ、諸君。席は自由に座ってもらっているから私には諸君の名前が分からない。名前を読み上げるから答えるように」



 ペトロネラは「特」と表紙に書かれた名簿を開きながら順番に名前を読み上げていく。

 まずはドミニクが呼ばれ、挨拶と同時にペトロネラ先生の美しさ云々という讃美歌が始まりかけたが、言われている本人は一切何も聞こえていないかのように次のアロイスを呼んでドミニクの言葉を終わらせた。

 三番目に呼ばれたのはラゴウ領のムラマサ=ラゴウという名だった。和風なその名前にはイメージ通りに和服美人が返事をした。思ったよりも低い声で、見た目とのギャップに少し驚いた。中性的美人は少年だったらしい。それに名前がムラマサである……それを聞くと妖刀しかでてこない。

 その次に呼ばれたのがサウズランカ領のピーア=サウズランカで、褐色肌の少女が元気よく返事をしていた。元気いっぱい、自然の中でのびのび育ちました!というイメージがある少女である。

 最後に呼ばれたのがミョンルグルガ領のソフィーア=ミョンルグルガで、ここまできてふと気づいた。

全員、領地の名の姓を持っている。もしかして、全員がそれぞれの領主一族、なんだろうか。



「よし、分かったよ。それにしても今年の一年生は面白いね。全領地の領主一族が揃っているなんて、中々ないよ。このクラスに五人もいるのも珍しいし、ちょっと教室が狭く感じるくらいだね」



 やっぱり全員が領主一族らしい。そしてこの国の全領地が五つということも分かった。……そういえば、アロイスに領地とかその特色とか聞いてなかったな。名前が複雑すぎて覚えられない気がしていたので態々訊かなかったし、アロイスも多分そう思って言わなかったのだろう。でも今から嫌でも関わりが増えそうなので、知らないというわけにも……いかないだろうな。部屋に帰ったら訊こう。頑張って覚えよう……溜息がでそうだ。



「さて、諸君が最初に学ぶのは魔物と共に戦う方法だが……ふむ。皆はそれぞれ従魔としている魔物が居るようだが、それらがどれほど戦える魔物なのか知りたい。競技場まで、移動しようか」



 にこりと笑ったペトロネラの言葉に、私は全力で悩むことになった。一般的に戦闘力がないとされるカナリーバードの私が、どの程度の力を出していいのかということを。判定方法にもよるけれど、私、どうすればいいのだろうか。アロイスに相談したいが大勢の前で話しかけるわけにもいかない。移動中誰も傍に居なければ話せるか、と思ったが上手くいかなかった。

 それぞれが移動を始める中、褐色肌の少女ピーアが話しかけてきたのだ。



「えーとアロイス殿。僕、じゃない私はピーア=サウズランカです。初めまして、ちょっと訊きたいことがあるんだけど、一緒に移動してくれないか?じゃない、くれませんか」



 たどたどしい敬語で、全く使い慣れてないことがよくわかる。初めは話しかけてきた少女に警戒していたアロイスも、その様子に毒気が抜かれたのか「無理して言葉を直さずともいいですよ」と言って少し肩の力を抜いた。



「ああ、うん。ありがとう。サウズランカでは敬語が殆ど使われてないもんだから……じゃぁ行こうよ。アロイス殿も僕に対して敬語が使いにくかったら、言葉を崩していいから」



 アロイスとピーアが並んで歩き、その後ろを大きな鳥がのしのしと歩いてついてくる。視線を感じるので私は振り返らない。振り返らないよ。何があっても振り返らないよ。絶対に目が合うからね。



「君が連れているのは青いけどカナリーバードなんだろ?戦闘に連れ出していいのかい?」


「問題ありませんよ。セイリアは強いですから」


「へぇ、やっぱりか。実はね、ブルーノ……僕の従魔がその子をかなり気にしているみたいなんだ」



 アロイスの眉がピクリと動いて、視線が一度私に流れた後に背後のブルーノという名の従魔に向かう。そしてもう一度私を見た。その視線に男女的な意味でこういうのはどうだ?と問われていることに気づいてフッと怒りの息を吹きかけてやった。

 ……私、鳥と結婚する気はないんだからね!絶対しないからね!



「ブルーノは強い者が好きでね、教室に入った時からその子を気にしてそわそわしてるんだよ。()ってみたいんだと思うんだけど……」


『そうだ、私はそいつと戦いたい。そしてコテンパンにぶちのめされたい!』



 あれ、何かよくわからないけど悪寒がしたな。鳥同士だから【言語理解】がなくても言葉が分かるはずなのに、妙な変換がされたのかもしれない。理解できない言葉が聞えてきた。



『私はいまだ誰にも負けたことがない。私をぶちのめすことが出来る雌に出会いたいんだ!さぁ私と勝負を!彼女なら私を完膚なきまでに負かすことができる気がする!』



 ああ変換ミスとか勘違いとかそういう類ではなかったらしい。この鳥、ちょっと特殊な趣味趣向を持っている鳥なんだ。物凄くお近づきになりたくない。遠くなりたい。背筋がさむくなったような気がしてアロイスの頭に身を寄せる。変態だよ、後ろに変態がいるよアロイス。



「ブルーノ、落ち着くんだ。……えと、それでね、良かったら時間のある時にでも魔物勝負を受けてもらえたらって思うんだけど」


「……考えてみます」


「うん、ありがとう」



 ピーアは純粋な笑顔を浮かべているのに、その従魔はアレである。なにこれ酷いよ。顔だけはさすが猛禽類で引き締まってカッコイイのに中身とセリフがやばいよ。詐欺だよ。

 移動中は背後から突き刺さるブルーノの熱い視線に耐えて、気分的にとてもゲッソリした。


 ようやくたどり着いた競技場は、巨大な円形の――いわゆるコロセウムというやつだった。観客席までしっかり作られているので、ここで何か催し物が行われたりするのかもしれない。



「さて諸君、ここで私の用意した魔物と君たちの従魔に戦ってもらうぞ」



 そういうペトロネアの背後には、五匹の魔物が控えていた。




登場人物がどしどし増えたましたしご要望も頂きましたので設定集を作ることにいたしました。

そのほか質問などありましたら言ってくださると助かります!


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お暇がありましたらこちらもいかがでしょうか。竜に転生してしまったが同族を愛せない主人公がヒトとして冒険者を始める話
『ヒトナードラゴンじゃありません!』
― 新着の感想 ―
一目惚れしたとかと思ったらだいぶ予想外だった
好意的に見れば野生の獣なら強い番を求めるのは当然、なのかもしれない…。
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