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お喋りバードは自由に生きたい  作者: Mikura
学園の有名鳥

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27.学園の鑑定

初めての授業




 教室は講堂のように広く、一人が使う机は人が寝転がれるほどの大きさで、その机同士はそれなりに離れていて個人のスペースはかなりのもの。この広さの理由は間違いなく、大きな魔物を連れてくる者がいるからだろう。

 私のような魔物なら机の上に籠を乗せればいいが、大きなトカゲや狼のような物を連れてきている者もいるので、それぞれにスペースが必要なのだ。


 この学園では魔物に慣れ親しむことも授業の一環らしく、誰もが魔物を持たなくてはならないし、生活のほとんどを共に過ごすことになるらしい。必要であれば魔物召喚や従魔契約の手ほどきもしてくれる。これは資金や教師を揃えられなかったために魔物を持たない下級貴族向けに行われる補習のようなものだそうだが。



「本日は貴族文字について学んだ後、鑑定石を用いて簡易鑑定を行う」



 教卓に立った白いひげが胸元にまで伸びているお年を召された先生は、年齢を感じさせないハキハキとした声でそう告げる。大きな声を出している訳ではないのに、しっかりと全体に聞こえているのは何かの魔術だろうか。気になってちょっと鑑定を発動しつつ手当たり次第に見てみた。

 ……この部屋全体が特殊な魔術具みたいなもののようだ。教卓に立った者の声を各々の席までしっかり届かせる仕組みらしい。凄いな貴族学園、とてもハイテク。



「ではこちらを見てもらおうか。それぞれ書き取りをし、後は自室で復習して覚えなさい」



 バッと机の上にパソコンの画面程のスクリーンが現れて、アルファベットがずらずらと並んで表示されている。A~Zの26文字とそれぞれの小文字で合計52文字。私はよく知るものだし、アロイスも予習済みらしい。スラスラとノート(と言っても紙の束を金具でまとめた物だが)に書き込んで、他の子達の終了を待つことになった。



「ん?もう終わったのか、どれ……」



 おじいちゃん先生がアロイスのノートを見て、素晴らしいと頷いた。うんうん、アロイスは凄いんだよ。十二歳とは思えない博識ぶりだし、努力家だからね。もっと褒めていいよ。と思いつつ私も頷く。



「マグナットレリアの領主一族は優秀だな。鑑定の方も楽しみだ」



 ……そういえば、アロイスの鑑定ってどうなるんだろう。属性なんて五属性だし。ステータスも前よりちょっとあがってさらに優秀になってたし。スキルには【天才】なんてものがついている。これ、知られたら大騒ぎされない?大丈夫?

 簡易鑑定って言っていたから、そこまで正確には分からないのだろうか?何だか心配になってきた。

私が一羽悶々と考え込んでいる間に、全ての生徒の書き取りが終わったらしい。といっても全員で十人程しかいないし、全員が終わるまで長い時間がかかった訳じゃない。……ヒースクリフが一番遅かったのは、やっぱり予備知識の差なのかな。



「次は鑑定に移る。これは下級貴族から順に行く。こちらに来て、この石に触れなさい」



 教卓の前に人の頭ほどの石が運ばれてきた。高級そうな台座に乗せられている。透明な水晶玉のような石の中心で赤、緑、銀、黄、青、白、黒の七色の色が絡み合ったり、移り変わったりしている。よく見ると白色だけは絶対に見えなくなることがない。不思議な石だ。



「ヒースクリフ=ヘルナー」


「は、はい」



 まず呼ばれたのはヒースクリフ。緊張した面持ちにどこかギクシャクした動きで前に出てくる。恐る恐る彼が石に触れると、石は一度眩く光り、緑色に染まり、Dという文字が浮かぶ。それ以上に変化はなく、先生が手元の紙に書き込みながら「総合能力値D。木属性だな」と口にする。……え?これだけ?簡易鑑定、簡易すぎじゃありませんか?

 ついでに私もヒースクリフを鑑定して見る。属性は木で間違いなかった。【巻き込まれ体質(トラブルメーカー)】という文字通りの効果を発揮する可哀想なスキルが見えたのでさっと鑑定結果を頭の隅にやった。しかもユニークだった。生まれつきらしい。運はGだった。これ以上何も言うまい。


 順番に子供たちは呼ばれていき、そしてそれぞれの属性の色に石を光らせて自分の属性を知り、帰ってくる。次はアロイスの番だ。私はそっと彼の顔を見た。彼は私によって自分のステータスを知っている。騒ぎになると予測が出来ているのだろう。コクリと静かに頷いて見せて、教卓の前に向かった。


 アロイスが鑑定石に触れると、石は輝いた後に赤、緑、銀、黄、青と次々に色を変え、最後にその五色の層に分かれて色づいた。割合はすべてがほぼ同じで、微妙に黄色が多いかもしれない、というくらいだ。そして浮かんだ文字はAである。



「……これは……一体、どういうことだ……?五属性、ということか……?その上能力値がAだと?」



 講堂は一気にざわめきに包まれた。ヒースクリフがキラキラとした尊敬のまなざしをアロイスに向けている。先生は五色になった鑑定石とアロイスを興奮した様子で見比べて、何度も視線を行き来させていた。

 そんな中、アロイスは至って冷静な様子だ。顔色一つ変えずに、ピンと背筋を伸ばして堂々としながら戻ってきた。まるで王者の風格だ。アロイスはカッコいいよ、すごいよ。



「……今回の鑑定結果で、各々の能力値と属性が分かっただろう。明日からは領地ごとではなく、能力値によってクラスを分ける。教室やクラス分けについては後程知らせるので本日の授業はここまで。自室に帰って復習しなさい。アロイス=マグナットレリアは残るように」



 先生は早口でそう言ってその場を解散させ、追い立てるように他の生徒たちを追い出した。皆が居なくなると年寄りとは思えない俊敏な動きでアロイスの席まで来た。その目は爛々と好奇心で輝いている。



「五属性持ちだなんて人類初ではないか!?アロイス=マグナットレリア、是非我が研究所に入らないかね?私の研究所では属性による魔力、魔術の違いについて研究している。是非君には来てほしい。そうだな、研究所に入らなくとも協力者としてたまに出入りしてくれるだけでも構わんし、君にしたい研究があるなら優先して私が見ようじゃないか」


「エトガー先生、お誘いは嬉しいのですが……私はまだ、自分の研究テーマを決めていませんし、もう少し深く考えてからお返事させて頂きたく存じます」


「おお、それはそのとおりだな。すまない、つい興奮してな。何かあれば私の研究室に来るといい。相談なら乗るぞ」



 興奮のあまり早口でまくしたてるように喋ったおじいちゃん先生はエトガーという名前らしい。アロイスが外向けのふんわりとした優しい笑顔で返事を先延ばしにして、エトガーは興奮冷めやらぬ表情だが笑顔で身を引いた。

 その後は自室に戻ると直ぐにヒースクリフがやって来てお茶を淹れてくれた。アロイスの五属性をひとしきり称賛して、ちょっと恍惚とした危ない顔になっている。アロイスの信者と化したらしいヒースクリフの台詞を、当の本人は読書しながら聞き流していた。



「明日から同じ教室で学ぶことが出来なくてとても残念です……」


「……明日からもこの部屋のことは任せるのだから、落ち込む必要はないだろう?」


「はい!お役に立てるよう精一杯努力いたします!」



 部屋の整理整頓とお茶の片づけを終えて、笑顔のヒースクリフは帰っていった。アロイスの深いため息は、絶対に輝く目を向けてくる従者のせいだ。私の所為でないことが珍しいな、と思うと同時に自分がアロイスにため息を吐かせまくっていたことに気づいた。

 ……ごめんねアロイス、私、気をつけるよ!頑張ってアロイスの心労を取り除くよ!



「セイリア、余計なことを張り切ってしようとするな」



 最近、アロイスは私の心が読めるらしい。でも、アロイスのために頑張ろうとしてるのにやるなといわれてもな。とりあえず頷くけど、こっそり頑張ろうと決意する。それもばれているのかアロイスにじとりとした目を向けられてしまった。




―――――――――



【名前】ヒースクリフ=ヘルナー

【種族】人間

【称号】アロイスの従者

【年齢】12

【属性】木


【保有スキル】

『巻き込まれ体質』・従者の心得・恐怖耐性


【生命力】D+

【腕力】D

【魔力】D

【俊敏】D+

【運】G





【名前】アロイス=マグナットレリア

【種族】人間

【称号】領主の子

【年齢】12

【属性】火・木・金・土・水


【保有スキル】

天才・速読・毒耐性・睡眠耐性・魔導の知識・『調教の才』・鳥類の友


【生命力】A

【腕力】B+

【魔力】A+

【俊敏】B+

【運】C



ヒースクリフも鑑定したので、ステータスを載せました。

アロイスはステータスがアップしているのでついでに。

珍しくセイリアが大人しい回でした。次はクラスが分かれます。



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― 新着の感想 ―
能力超優秀な上、人類初かもしれない五属性な妾腹の次男…これはお家騒動の種すぎる。
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