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お喋りバードは自由に生きたい  作者: Mikura
貴族の飼鳥

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23.従魔契約

テオバルトはとっても子供なだけ……だと思いたいですね


 ――――嫌だ。その目を見るだけで、全身を冷気で包まれた気分になる。私の本能は心底テオバルトを嫌っているのに、テオバルトにその感覚はないのだろう。口元を笑みの形に歪めながら一歩こちらに踏み出す。それが目に入った瞬間に私は飛び上がった。高いところに飛びたいが、この部屋で最も高いのはぶら下がる照明の魔術具で、完全な球体のために止まるところはない。本棚は天井に届くまでキッチリ本が収納されているので無理。だめだ、どこにも止まるところがない。

 くるくると部屋を旋回して飛び回り、とにかくテオバルトの手の届かない位置に居続けるが、テオバルトはそんな私の抵抗をたいして気にしていない様だった。




「所詮馬鹿な魔物だな。この狭い部屋で逃げ回ったところで、魔力から逃れられるはずもないというのに」



 テオバルトがスッと何かを持った手を挙げた。それは木で出来た短い杖に見えた。その杖を振りながら、何か呪文を唱え始める。



「土の神に力を借り、我が目の前にある魔物を我が魔力によって縛る。決して逆らえぬ鎖を、愚かな鳥へ」



 誰が愚かな鳥だクソガキ!と叫びそうになった私の体にテオバルトの魔力が降ってきた。体を包む不快感に一瞬硬直してしまい、そのまま重力に従い落下する。そして白いシーツに受け止められて一度ぼよんと跳ねた。……落ちた先が固い床でなくてよかった。アロイスのベッドの上でよかったほんと。痛いのは嫌だよ。



「これで契約が出来た。セイリア、お前は今日からあの愚か者ではなく私の――」


「セイリア!!」



 乱暴にドアが開かれる音と、切羽詰まったような声と共にアロイスが飛び込んできた。扉に背を向けた格好だったテオバルトがくるりと振り返り、アロイスと対峙する。……私からは見えてないのに、テオバルトが嫌な笑顔を浮かべている気がするよ。



「兄上!これはいったいどういうことですか!」


「どうもこうもないだろう?セイリアはお前が次期当主である私に譲ってくれるという話だったではないか」


「そのようなことは言っていません。今、父上にも断りを入れてきたところです」


「そうか。手違いがあったようだが、もう遅い。すでに私が契約してしまった」



 アロイスの目が驚愕に見開かれ、私を探して部屋を見回す。ベッドの上の私に気づくと、とても複雑な、でもとても悲しくて辛そうな顔をして一度目を伏せた。

 ああ、嫌だ。アロイスにあんな顔をさせたくないのに。アロイスをひどく苦しめようとする、テオバルトが嫌で嫌で仕方がない。



「……返してください。セイリアは私の従魔です」


「だが、今はもう私の従魔だ。他人の従魔を欲しがるなんて悪趣味だぞ?」



 どの口が言うんだ、と心の中で盛大に突っ込みを入れた。私が喋れることをこの子供に教える必要はない。くるり、とこちらを向いてニヤニヤと子供の表情とは思えない悪意に満ちた笑みを浮かべたテオバルトが「来い、セイリア」と私に命令する。

 私は羽ばたいて宙に浮かぶ。柔らかいベッドの上に落ちたおかげでどこも痛くない。迷いなく飛んでテオバルトを素通りし、いつも通りにアロイスの肩に止まった。



「なっ……何故だ!魔法はしっかり発動したはずだぞ!?何故私の命令に従わない!?」



 驚いているのはテオバルトだけでなく、アロイスも同じだ。今はそんなことを微塵も臭わせない無表情でテオバルトを見据えているが、私が飛んできた一瞬だけ瞳が驚きで揺れていた。

 ……でもまぁ、テオバルトが私を従魔にできるはずは、なかったんだよね。と、テオバルトのステータス鑑定結果を思い浮かべながら思う。アロイスより全体的に劣っているテオバルトが、規格外らしき能力値の私を従魔にできるはずがない。何一つとして、私に勝るものを持っていないのだから。

 同時に、何故テオバルトを本能的に嫌っていたのかも分かった。【鳥類の敵】というスキルがついていたからだ。このスキルは鳥種の魔物、動物を何の理由もなく害した者につくスキル。鳥系の魔物、動物から本能的に嫌われ、逃げられるスキル。好かれることはまず、ない。

 とにかく、私はテオバルトの従魔になることはないと分かっただけ安心だ。視界に入ると相変わらず本能がテオバルトを全力否定するが、それ以外はなんとでもなる。自信満々に胸を膨らませて威張る私をアロイスがちらりと見る。



「兄上、発動した従魔の契約が失敗する原因は一つです」


「っ……!!魔力を一段階あげる秘薬も飲んだのに、それでもお前より私の方が魔力が低いと言うのか!!」


「目の前にある出来事が現実です。セイリアは、兄上の従魔ではない。部屋の主が居ない間に勝手に入り込んだことは見なかったことにします、早くお帰りください」



 テオバルトの目は憎悪に染まって、恐ろしい形相でアロイスを睨んでいた。今回のことはアロイスとテオバルトの魔力量には関係がないが、アロイスの方が勝っているのは事実だ。でもそんなことでアロイスを憎むのは逆恨みとかお門違いというものだと思う。

 ああクソガキと言ってやりたい。今テオバルトがやっていることは、愚かな行為だと言ってやりたい。そして我慢しきれなかった私は口を開いた。



「愚か者」


「っな……!!」


「愚か者、愚か者、愚か者」



 テオバルトの言葉をそのまま返してやる。意味の分かっていない純粋な鳥のふりをして、首を傾げながら何度も何度も繰り返す。

 自分が放った言葉を真似しているだけの、領主一族にとって絶大な価値あるカナリーバードに手を出すわけにもいかず、唇が切れるのではないかというほど強く噛みしめながら足早に出て行った。うん、私は満足だ。



「……セイリア、最後のは余計だ」


「だって、すごくムカつくんだもん」


「はぁ……次からは止めるんだ。いいな」


「はーい」



 肩に止まっているから、こちらを見るアロイスの綺麗な顔は間近にある。睫毛が長くてふさふさだ。何本生えているのか一本ずつ抜いて数えたくなる。……いや、さすがにしないけどね。そんな怖いこと。

私の考えが分かっているはずはないと思うのだけど、アロイスは深いため息を吐いた。



「セイリア、説明してもらおう」


「分かってるよ。ちゃんとお話しする」



 アロイスが隠し部屋に続く本棚へ向かう。私はどこから説明するべきか考えつつ、動く本棚を眺めていた。





―――――――――――――


【名前】テオバルト=マグナットレリア

【種族】人間

【称号】次期マグナットレリア領主

【年齢】11

【属性】火・木


【保有スキル】

剣技・悪知恵・悪童・鳥類の敵


【生命力】C+

【腕力】B-

【魔力】B(+)

【俊敏】B-

【運】A+


()内はアイテム変動値

次回でアロイスにセイリアのネタばらし……ですね

テオバルトのステータスは別に低くありません。むしろ高い方です。アロイスは天才で、セイリアが規格外化け物ステータスなだけです。



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お暇がありましたらこちらもいかがでしょうか。竜に転生してしまったが同族を愛せない主人公がヒトとして冒険者を始める話
『ヒトナードラゴンじゃありません!』
― 新着の感想 ―
対策すると2人で相談していたけど?何一つ対策してなくなかった? なんかあっさり魔法にかかっていたけど、能力差って何? 魔法は学校に行って初めて習うみたいな設定どこ行った?
クソガキ普通に優秀だな。何よりラックが高い。
[一言] クソガキのくせに運がA+とか生意気な...なんかの弾みで運が下がって猫のうんこ踏みまくる人生になればいいのに
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