表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お喋りバードは自由に生きたい  作者: Mikura
貴族の飼鳥

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/104

21.パーティーの絆

レベルは隠れステータスのようなものですが存在はしています。


 本日は訓練場の森にて食事……もとい狩りに来ている。アロイスは私に注意することを諦めたらしく、少し遠い目でどこかを見ているが私は生きるために必要な栄養を摂取しなければならないので、これは仕方のないことなのだ。



「……君が本当にカナリーバードなのか疑いたくなる」



 アロイスの呟きには心の中で私も同意する。……だって、私、鑑定したら色々可笑しかったからね。戦闘力はチートっぽいアロイス以上だし、あとで気づいたけど種族名が「カナリーバード(?)」となっていた。黄金スライムによる変異の所為だとは思う。元はただの色変わりなカナリーバードだった、と思うんだけど。

 ……いや、転生したことでついたスキルがあるから割と最初からチートだったのかもしれない。


 気にしても仕方ないことだ。開き直って魔物狩りにいそしんでいると、久々に「天の意志」と呼ばれるアレがやってきた。



『パーティーの絆レベルがあがりました!』



 ……ん?絆レベル?それは初めて聞いた。突然動きを止めた私にアロイスが声を掛けたが、何でもないと返して仕留めたホーンラビットの緑核を飲み込む。魔物の核は、その魔物の属性を表している。ホーンラビットは殆どが木属性の緑核で、稀に火属性らしい赤核を落とす。微妙に赤核の方が美味しいかな。

 まあ核の味はおいといて。問題は先ほどの「パーティーの絆レベル」という初めての単語である。アロイスは知っているだろうか。不自然にならぬように訊くにはどうすればいいだろうか。

 彼の肩に戻って暫く考える。小さな川が見えたところでアロイスが休憩を提案してきたので、了承して休憩中の雑談にどうにか質問を混ぜてみることにした。

 川辺に腰を下ろし、布袋からクラッカーのような携帯食を取り出して食べるアロイスに問いかける。



「アロイス、私とアロイスは【仲間の指輪】で、パーティーを組んだんだよね。パーティーを組むと得られる力が分配されるって言ってたけど、他に何かある?」


「ん、そうだな……長い間【仲間の指輪】を着けて共に戦うと、お互いを助け合う力がつくといわれている」


「えーと……例えば?」


「一緒に戦っていると戦闘能力が上がったり、成長しやすくなったりするらしい」



 多分、先ほどの絆レベルというものがもたらす恩恵はそれだ。仲間と戦うと本来の力以上のことができるようになる、ゲームでもたまに見かけるシステムと同じだろう。攻撃力や防御力、回避力が上がったり、取得経験値が多くなったりするものに違いない。ファンタジーな異世界だが、ゲームとして似たようなものに触れた経験があると理解しやすい。



「じゃぁ、私とアロイスもそうなるのかな?」


「どうだろう。魔物とパーティーを組む人間は少ないから、分からないな」



 たしかに魔物を仲間としてパーティーに組み込むゲームは珍しいよね。基本、魔物はサポートとかスキルなどの術で召喚できる特殊攻撃枠のイメージだ。

 でも、私には絆レベルが上がったことが分かったのだから、この世界では人間と魔物のパーティーでも絆レベルが上がれば、特殊な恩恵が得られると思う。



「あ、もしかして……しばらく前に聞いた、魔物と信頼関係を結べればって話。パーティーを組めばいいんじゃない?」


「……なるほど。それなら君と私がこのまま戦闘を重ねて行けば、いつかそうなるかもしれない」



 きっとそうだと思う。魔物とパーティーを組むような変わった人間が、魔物との絆レベルが上がって、その恩恵を受けるようになるのだ。それを知らないのは【鑑定】というスキルを皆が持っていないからだと思う。だから信頼を得る、とか。心を通わせる、とか。そういう表現しかできないし、条件もよくわからないのだ。

 恐らく最低条件はパーティーを組み、共に戦い、絆レベルをあげること。あとは本当に信頼とか、そういうものも必要かもしれないけれど。



「でも、君は本当に飛び出し過ぎだし一撃で終わらせる。パーティーを組んだのに、私は殆ど戦えていないんだが」


「……………え、えーと………その、ここの魔物が弱いから……仕方ないかな……?」


「たしかに弱い魔物だが、さらに弱い種族のはずのカナリーバードの言葉とは思えないな。……あぁ、そもそも普通のカナリーバードは喋らないから、やっぱり君は別の種族なんじゃないか?」


「そのようなこと言われましても……私に分かるはずがないよ」



 まだギリギリ、カナリーバードだと思う。たとえ鑑定スキルによって種族名の語尾に(?)とつけられたとしても、他の名前はついていないのだからカナリーバードなのだ。……私も怪しいとは思うけどさ。



「人語を解し操る魔物といえば、大体は伝説上のものになるんだがな……」


「え?どんなの?」


「原始の(ドラゴン)やフェンリルなどが有名だ。フェンリルは狼で、龍は……似ても似つかないな。見た目がカナリーバードの龍なんてありえない。自分の姿に見惚れるようなこともないだろうし」


「見惚れてたんじゃないってば!」



 そうだな、と返事されたがこれは適当に流されただけだ。絶対信じてない。でも、私鑑定スキル持ってます!なんていう気もない。唯でさえ規格外扱いされているのに、ぺらぺらと喋って引かれたくないのだ。今の私には頼れる相手がアロイスしかいないのだから。

 ……もっと仲良くなったら、いつか話せるかな。



「この森では、もう強くなれそうにないな。セイリアが全て一突きで終わらせてしまうし……」



 貴族の子なら誰でも入れる訓練用の森。他にもそれぞれ、何かしらの資格があって初めて行ける場所があるに違いない。ここはゲームで言うならチュートリアルで使われるような、初心者用の一つ目のマップ。自分が強くなれば、弱い魔物では経験値が入らない、もしくはほんの僅かにしか手に入らなくなってレベルが上がらなくなる現象が起こる。



「学園に通うようになれば、もっと行動の幅が広がるのだが」


「貴族の通う学園?」


「あぁ。兄上は来年、私は再来年に入学する」



 貴族が通い、知識と力の使い方を学ぶ特殊な学校らしい。魔法や戦術の知識、技術を学び、将来が決まっていくのだそうだ。テオバルトのように次期当主と決まっている貴族の子もいるが、それ以外の貴族の子は自分にあった道を探し、そこへ進む。魔導士になる者もいれば、騎士になる者、学者になる者、鍛冶師になる者、調教師になる者など様々なのだとか。



「……まぁ、私は家から逃れられないだろうな。領主の一族として、次の領主の弟として、領主を支え続けなくてはならない」



 俯き加減に呟くアロイスの声は、抑揚がなく感情が含まれていなかった。それは彼が感情を抑圧し、殺している証拠に他ならない。私はアロイスが見つめる地面に割って入って、視界に映り込んだ。



「いっそのこと冒険者になっちゃうとか、どう?身分を隠してさ、自由になれそうじゃない?私が居れば魔物だって簡単に狩れそうだし、ね?いい考えじゃない?」



 翼を浮かせて、ばさばさと動かしながらそう言ってみる。彼はそんな私を見てフッと笑った。



「浅はかな考えだ。冒険者は自由な職業ではないんだぞ。あの職業にもそれなりのルールやしがらみと言ったものがあるんだ」


「……そうなんだ……」


「君は本当に短絡的だな。魔物だから知識も足りなくて当然だが」



 それから冒険者について詳しく説明されて、でもアロイスが冒険者になる方法が全くない訳ではない、ということは分かった。

 私にお説教も交えながら説明する彼の表情はいつも通りに戻っていたので、ちょっとだけ安心した。



あと数話したら第三部に入りたいという願望が…あります。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お暇がありましたらこちらもいかがでしょうか。竜に転生してしまったが同族を愛せない主人公がヒトとして冒険者を始める話
『ヒトナードラゴンじゃありません!』
― 新着の感想 ―
冒険者になっても、魔物は君が全部食べちゃうだろう。討伐証拠ぐらいは残してもらえるとありがたいよね。
ヒトは、表面的には刺激・変化を望みつつ、根本的なところでは『昨日と変わらない明日』を望むものだとする『特性』が、あちらこちらに散見できます。それが本人にとって望んでいるかどうかはさて置いて。 物心つき…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ