表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャドウの異世界魔王道  作者: river
魔王誕生編
6/28

名前

 

 夢を見ていた。

 幽霊のように透明な僕を、子供の僕が通り過ぎる。

 これは僕が……小学生の頃かな?

 何年生の頃かな~。

 ま、夢だし何歳でもいいよね。

 僕は薄汚れた黒いランドセルを背負っていた。

 

 これは登校の時かな?

 今となっては懐かしい風景だね。

 周りにも僕と同じ小学生がいるけど、僕の近くには誰も近寄らない。

 僕を見てひそひそしてるだけだ。

 

 僕の噂かな?

 もしや!


『ねぇねぇ、あの子格好よくない?』


『うわっ、ホントだ!あたしめちゃくちゃタイプ~』


 とか言ってるに違いない!

 え~子供の僕そんなにかっこいいかな~!

 女子の一人や二人楽勝ですかね!

 これはハーレム確定ですかね!?


 うん、冗談だよ。

 むしろ逆だ。

 どういう意味かって?

 そんなの見りゃ誰だってわかるでしょ。

 イジメってやつだよ。

 イ・ジ・メ。

 

 教室に入ると、案の定な光景が広がっていた。

 黒板にでかでかと書かれた死ねという単語。

 これまた死ねなどの悪口が彫られた机。

 そして隠された上履き。


 その他にも色々な事をやられたし、やらされた。

 全く、子供のやることは恐ろしいよ。

 ん?

 僕もまだ子供じゃないかって?

 残念。

 心は大人なんだよ。

 少なくとも、イジメを容認して更に加担までする教師よりも、ずっと大人だと思う。

 ま、自称大人はそんなこと認めないだろうけど。

 

 あの頃の僕、めちゃくちゃ暗かったからね。

 更に捨て子ともなれば、むしろイジメられない方がおかしいよね。

 身体が小さい。

 性格が暗い。

 捨て子。

 うん、イジメられる理由のオンパレードだね。


 そんなこんなで、僕はイジメに遭っていた。


 場所が移った。

 ここは……公園かな?

 体育座りしている子供の僕の頭に、サッカーボールが当たる。

 サッカーしようぜ!お前ゴールな!ってやつかな?

 ちなみに顔が百点、その他が十点だ。

 僕は抵抗しない。

 抵抗した所で意味が無いからね。

 

「こりゃぁぁぁあああ!!!」


 その時、一人のおじいさんが怒鳴り込んできた。

 ボロボロの格好と伸びっぱなしの髪と髭から、この公園に住んでるホームレスだとわかる。

 

「うわっ!またニート爺がきた!」

 

「誰がニート爺だクソ餓鬼がぁぁぁ!」


 イジメっ子たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。

 ニート爺は僕に近寄った。

 ……で、僕の頭をチョップした。


「いてっ!」


「当り前じゃ!ちょっとはやり返せ!」


 ああ、そうだった。

 そういえば何回もチョップされたなぁ。

 それが、僕がいじめられっ子から抜け出せた原因、ニージイとの出会いだった。

 ってか、ニート爺さんを略してニージイってやっぱり失礼だったかな?

 まー良いよね、過去の事だし。





 どうやら僕は眠っていたらしい。

 久しぶりだよ、夢なんて見るのは。

 気を取り直して……。

 ハローエブリワン!

 おはよう僕だよ!

 え?

 呼んでない?

 ま、そんなことはどうでもいい。

 それよりこの白鼠についてだ。


『助けていただき、ありがとうございました!』


 そう言って頭を下げてきた。

 感謝されて悪い気分になるほど、僕も捻くれちゃいない。

 でもそれどころじゃない。

 それよりも情報が欲しいんだけど?


『はい!私に答えられる事なら何でも!』


 Q、ここは何処?

 A、人間には魔の森と言われてます。


 Q、人間がいるの?

 A、はい、冒険者と呼ばれる人間が、森の端に何度か来ます。


 Q、人間の声もスキルで聞こえるの?

 A、はい、聞こえます。


 Q、人間も結構強いの?

 A、まぁ、森の端で戦える程度には。


 Q、中心部になるほど魔物が強くなるの?

 A、絶対という訳ではありませんが、そうです。


 Q、じゃあ先端部の魔物が中心部の魔物と戦ったら?

 A、たとえ先端部の魔物が百匹、いや千匹いようが、傷一つ付けられないでしょう。


 Q、ちなみにここはどこら辺?

 A、ちょうど中心部と先端部の真ん中ぐらいです。


 Q、人間と仲良くなるのは無理?

 A、無理です、あいつらは私たちを害獣か、金の生る木としか考えていません。


 Q、じゃあ見つけたら殺すべき?

 A、襲われない限りは隠れた方がいいと思います、戦いの音を聞きつけて更に増援が来る場合がありますから。


 Q、スキルって何?

 A、何と言われても……能力の一種ですよね?

 

 こんなもんでいいだろう。

 とにかくわかるのはこの四つだ。

 森の中心部ヤヴァイ。

 森の先端部もヤヴァイ。

 ってか人間がヤヴァイ

 スキルは天使。


 それでどうしようか。

 とりあえずの目標は、安全な場所に行くことだ。

 つまり森の先端部だろう。

 ただし、森からは出ない。

 人間がわんさかいるからね。

 そして強くなる。

 人間にも、魔物にも殺されないように。

 死にたくはないからね。

 

 せっかく転生したんだ。

 だったら死から足掻いて、抗って、逆らってやる。


 これで今後の方針が決まった。

 そして……


 え~っと、ネズミさん?


『はい?』


 僕と一緒に来る?


『……いいんですか?』


 何が?


『だって私、結構お荷物ですよ?』


 でも、行く所なんて無いんでしょ?

 だったら簡単だ。

 僕は案内役が欲しい。

 君は用心棒が欲しい。

 互いに協力し合おうよ。


『……はい、わかりました。これからよろしくお願いします!』


 うん、よろしく!

 で、これからの事なんだけどさ。


『はい?』


 名前とか決めない?

 ほら、だって仲間だからね?

 君とか白ネズミじゃ面倒だしね。


『いいですけど……何て名前にするんです?』


 名前のつけ合いをしよう。

 僕は君の名前を考える。

 君は僕の名前を考える。


『カッコ悪くても怒らないでくださいよ?』


 下ネタ以外なら何でもOKだよ。


 そうだな……。

 白いからシロ。

 安直かな?

 でも白は入れたい。

 白いネズミ……。

 鼠は十二支で子。

 よし、決まった。


 君は決まった?


『はい、決まりました!』


 君の名前は――

『あなたの名前は――


 ――白子シロネだ。

 ――暁影アキカゲで』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ