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シャドウの異世界魔王道  作者: river
魔王誕生編
5/28

白鼠

 

 私は誰からも嫌われていた。

 敵にも、味方にも。

 同じ種族にも、姉妹にも、そして親からも。


 理由は簡単だ。

 この白い毛と赤い目だ。

 私の見た目は非常に目立つ。

 だから私は、皆の三倍は命の危険が襲い掛かった。


 それだけじゃない。

 私たちリトルラットは、基本的に五十匹程度の群れで行動する。

 つまり、私が見つかると他の皆にも危険が及ぶ。

 自分でも厭きれるくらいのお荷物だ。


 さらに言うと、私は日光にも弱い。

 前はちょっと日焼けしただけで、皮膚が赤くなって倒れてしまった。

 

 こんな私が群れから追い出されたのは、必然と言えば必然だったのだろう。


『お前がいなくなって、せいせいするぜ』


『やっとお前の顔を見なくて済むのか』


『あんたなんて、産まなきゃよかったわ』

 

 それは群れを出る際に、私が言われた言葉だ。


 家族を、皆を恨んでいないと言えば嘘になる。

 でも、私をここまで育ててくれたんだから、少しは感謝するべきなのかもしれない。

 だからといって、私がみんなの所に戻れるわけないけど。


 群れから追い出された私は、途方に暮れていた。

 それもそうだろう。

 私の種族は群れで行動する生物だ。

 役割を分担して、敵から身を守る。

 そんな種族が一人で生きていけるわけもない。


 しかし、私は幸運にも三日間も生き延びていた。

 洞窟を見つけて、そこに潜んだのだ。

 昼間は日光で危ないから、外に出て食べ物を採るのは天気が悪い日だけ。

 夜は危険な魔物がたくさんいるから、洞窟で音を立てないように、ビクビクと過ごした。

 

 しかし、私はもう体力の限界だった。

 白い毛は薄汚れて、目も霞んでよく見えない。

 食べ物を採ってくる気力もない。


 これは……ちょっとヤバイかも。

 流石に餓死しそうだ。


 今日も敵から逃げながら、食べ物を探す。

 でも、他の魔物達がウロウロしていて採れない。

 結局今日も食べることが出来なかった。


 洞窟へ帰る。


 ……へ?

 なんでシャドウがいるの!?

 

 シャドウは魔力が集まる地域から『出現』する魔物だ。

 私は実際に見たわけじゃないけど、まず地面に影が出来て、そこから地上に這い出てくるらしい。

 

 そして食べると結構おいしい。


 そんなシャドウが私の住処で横になっていた。

 しかも右腕が無い。

 ……もしかしてチャンス?


 私はシャドウを観察するために匂いを嗅ぐ。

 うん。

 いい匂い。

 空腹なだけに更に美味しそうだ。

 よし!

 頂いちゃおう!

 とか思ったら……


「ンギャァァァァァアアア!!!」


 バレたぁぁぁ!!!

 ヤバイ! 

 むしろこっちが食われるかも!

 すごいジタバタしてる!

 すごい回転してる!


『うわっ!ごめんなさい!殺さないでください!』


 とにかく謝ろう!

 どうせ暴れたところで食べられるんだから!

 

 シャドウの動きがぴくっと止まった。

 そしてこっちの方を見た。

 そして私について何か考えている。

 アルビノとかはよく分かんないけど、話したいようだ。


「ヴァウアウア」


『あ、話せなくても聞こえます!』


 そう、これが私の唯一の強み。

 相手の心を読み、自分の心を伝えるスキル。

 といっても、心を読めるのは一人だけだけど。

 

 シャドウはそのことを伝えるとびっくりしていた。

 そりゃあそうだろう。

 同じ種族ならともかく、異種族すら話せるなんて。

 イレギュラーと言ってもいい。


 それよりも、頼みたいことがある。

 話した感じ優しそうだし、ダメもとだ。


『食べ物くだしゃい』


 それと同時に倒れてしまった。

 体が動かない。

 スキルも満足に使えない。

 息も苦しい。


 うん。

 ダメだねこりゃ。

 もう死んだよこれ。

 そもそも、貴重な食料を死にかけのネズミに渡すわけがない。

 餓死した所を食べられるだろう。


 その時、シャドウが自分の小指をかみ切った。

 そしてそれを私に渡す。

 私は困惑した。

 なんでそこまでするんですか?

 なんで私を殺さないんですか?

 なんでそんなに優しいんですか?


 あ、ダメだ。

 お腹空きすぎて心が聞こえない。

 

『あ……りが……と……』


 とにかく食べよう。

 そうじゃないとホントに死ぬ。

 

 ……うん、美味しいかった。

 でもちょっとしょっぱかった。

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