絶望的な戦闘力の差
自分の事はもう分かった。
特にスキルのクソ具合が分かった。
といっても仕方ない、めそめそした所でスキルが変わるわけでもないしね。
とにかく、今の僕には情報が無い。
この世界に人間はいるのか。
僕の強さはどれくらいなのか。
そして僕は生き残れるのか。
まず知りたいこと、それは僕の強さである。
強敵に会ったりしたら簡単に死んじゃうからね。
とりあえず自分がどいつに勝ててどいつに負けるのか知りたい。
そのためには他の生物に会うのが一番!
というわけで現在、森を探索中!
岩に隠れて観察する。
そして第一魔物発見!
しかも三匹の群れだよ。
アレはオオカミかな?
でもなんかおかしい。
すごく大きい。
僕の肩ぐらいある。
まぁ、この世界では平均的なのかもしれないし、僕の身体が小さくなっただけかもしれないけど、やっぱり少し怖い。
飲食店で大盛を頼んだら、想像してたよりも大盛だったみたいな感じ?
鑑定を発動させてみる。
『鑑定不能』『鑑定不能』『鑑定不能』
ええ……
鑑定不能ばっかりじゃん。
レベル1だからしょうがないけど、これじゃあオオカミの強さが分からない。
よし!
せっかくだから鑑定をレベルアップしてみよう!
オオカミに標準を合わせて……
『鑑定不能』『鑑定不能』『鑑定不能』『鑑定不能』『鑑定不能』『鑑定不能』『鑑定不能』
『鑑定がレベルアップしました』
よしよし!
それじゃあもう一回鑑定!
『種族:ソニックウルフ LV120』『種族:ソニックウルフ LV115』『種族:ソニックウルフ Lv115』
……ん?
ちょい待って。
ソニックウルフって日本語だと音速浪?
なにレベル120って。
これはちょっとまずいんじゃない?
いきなり強敵とか何たる所見殺しだよ。
おのれ孔明だよ。
とにかく逃げよう。
レベル1の僕が敵う相手じゃない。
コッ
小石を蹴っちゃったよ!
ソニックウルフを見る。
……あれ、いない?
その瞬間――
――僕の右腕が宙に舞った。
……へ?
なんで?
僕の周りにはソニックウルフで囲まれていた。
自分の右腕があった所の断面は紅かった。
まるで海の潮がどんどん満ちるみたいに、痛みが押し寄せる。
「っっ~~~~~~~っがぁぁぁぁああああああ!!!」
いっっってぇぇぇぇ!!!
イタイイタイいたいいたいいたい痛い痛い痛い!!!
とにかくっ逃げる!
にげたいにげろにげるにげなきゃにげようにげないとコロサレル!!!
無我夢中で逃げる。
足がもつれる。
息が荒れる。
視界がぼやける。
走った先には崖があった。
落ちたら即死だろう。
そして後ろにはソニックウルフ。
崖から落ちてペチャンコになるか、ソニックウルフの昼ご飯になるか。
完全に詰んだ。
ああチクショウ。
結局こんなところで終わるのか。
その時、ある作戦を思いついた。
いや、作戦というにはあまりに拙い。
力任せで、確信もない。
というか作戦でもないかもしれない。
戦うわけじゃないしね。
ソニックウルフが驚いた様な顔をしている。
はっはっは。
ざまぁみろ。
僕は君たちのお腹に収まらないよ。
僕は崖から飛び降りた。