モークリーに到着
魔の森から歩いて一時間ちょっと。
半霊人の村に向かう途中の休憩として、僕たちは人間の町『モークリー』に到着した。
石の壁で囲まれていて、唯一外と繋がるのは巨大な門だけだ。
魔物の襲撃に備えての事だろう。
確かにこれなら、飛行系の魔物以外は攻撃しずらいだろう。
「止まれ、今からステータスを鑑定する」
そう言って門番は水晶のような物を触らせた。
これに触ると、ステータスが表示されるらしい。
実際、僕の偽造ステータスが浮かび上がった。
「……問題ないな。次!」
ステータス偽装は成功したようだ。
計画通り!
他のみんなも町に入った。
中世ヨーロッパ風の町はそれなりに賑わっているけど、人々の顔は不安でいっぱいだ。
まぁ、冒険者たちが消えたんだからしょうがないか。
『騎士団』と呼ばれる人たちが援軍に来るのは、早くてあと二日。
体調を崩したりして、緊急クエストに行かなかった冒険者もいるようだけど、そんなの数人程度だ。
町の人は、二日の間に魔物に襲撃されないか心配なのだ。
冒険者を殺した張本人たちの目の前で噂話なんて、悠長なものだけど、僕を知らないんだからしょうがないか。
一応冒険者ギルドはやってるらしい。
そうとなったら冒険者登録した方が良いかもしれない。
身分証明に使えるからね。
ロマンがあるのも否定しないけど。
町の人に場所を聞きながら、冒険者ギルドにたどり着いた。
いかにも荒くれものがいます!って感じの酒場みたいなところだ。
ドアを開けると、予想通り石造りの酒場。
結構広くて、飲食店としても機能しているのだろう、奥の厨房から肉が焼かれている音と匂いがした。
一応、緊急クエストに行けなかった冒険者が座っているけど、その目にはあまり生気が無い。
冒険者仲間が一斉に死んじゃったんだから、しょうがないかもしれない。
僕は受付らしき二十代後半の女性に声をかける。
「そのー、僕達は冒険者登録したいんですけど、どうしたらいいですか?」
「え?冒険者登録ですか?
こ、この紙に必要事項を記入してください」
なんでこの人こんなビックリしてるんだ?
あ、そうか。
冒険者になったら魔物と戦う事になる、そしてついこの間、冒険者たちを狙った謎の魔物が暴れまわっている。
そんな中で冒険者登録なんて、自殺志願者だと思われても仕方ないだろう。
だが残念!それ僕です!
僕が僕を襲うわけないでしょう!
名前はアキカゲでいいだろう。
フェイ以外のみんなも、必要事項を記入している。
何でフェイが冒険者にならないかというと、単に人間と同じ職業になるのが嫌なだけらしい。
別にそんなのどうでもいいと思うけど、強制じゃない。
「はい、完了っと」
「アキカゲ様、シロネ様、ナイト様、スミス様でよろしいですね。
それではステータスカードを配布します」
受付嬢はそう言って僕達にステータスカードを渡した。
ステータスカードに、僕の偽造ステータスが浮かび上がる。
これで人間に怪しまれることは無いだろう。
「これにて冒険者登録は終了です。
クエスト紙は右側に御座いますので、もしクエストを受ける場合は、紙を持ってきてください」
クエスト板を見てみる。
そこには大量のクエストが貼ってあった。
冒険者がほとんどいなくなったから、受ける人がいないんだね。
なんか悪い事した気持ちになった。
ま、別にいっか。
どうせ僕が死ぬか冒険者が死ぬかだったんだ。
負けた方が悪い。
そうだ、聞きたい事があった。
「ねぇ、受付嬢さん?」
「はい?」
「騎士団の団長ってどのくらい強いの?」
フェイの話を聞く限り、冒険者たちの数倍、もしかしたら何十倍も強い連中らしい。
そして、その騎士団の隊長の名は――
「『聖騎士イツキ・ヤマモト』様の事ですよね?
確か何百もの魔物を、一瞬で殺せる実力があるそうですが……」
『聖騎士イツキ・ヤマモト』。
どう考えたって僕の世界の名前だ。
フェルの話によると、『勇者召喚』という魔法で召喚された可能性が一番高いらしい。
異世界人がこの世界に来ると、そのどれもが強力な力を持つそうだ。
それはどんな形で現れるかは、個人差で分かれるが、『聖騎士イツキ・ヤマモト』は勇者の中でもベテランで、強力な火炎魔法を操るらしい。
外見年齢は二十前半。
どうやらすごくイケメンらしい。
よし、爆ぜさせよう。
イケメン死すべし慈悲は無い。
それにしてもどうしようか。
勇者を一目見るべきか、それとも早く半霊人の村に行くべきか。
……あ、そういえばちょうどいいスキルがあった。
冒険者ギルドを一旦出て、『未来視』発動。
見るのは二日後の未来だ。
数十人程度の、フルメタルプレートで身を包んだ者達が町に到着した。
町長がその人たちを出迎えている。
集団のリーダーらしき人が、冑を脱いだ。
黒髪黒目、短髪で少し焦げた肌。
そしてこの世界では珍しいアジア系の顔立ち。
間違いなく日本人だ。
「聖騎士イツキ様、ようこそおいで下さいました」
「ああ、この周辺に謎の魔物が出るそうだな」
「はい、この町の冒険者はほとんど全滅状態で……」
「了解した。早速魔の森の調査をしよう。
だが、今日は長旅で疲れた、明日に調査を開始する」
そう言って騎士たちは町長の案内で、宿屋に入った。
うん、間違いない。
あの顔と名前は日本人だ。
それにしても困った。
戦って奪取するべきか、警戒して急いで逃げるべきか。
もう一度『未来視』で見てみよう。
戦う未来で。
「なかなか強かったな」
聖騎士イツキは剣を鞘に納めた。
その周囲は半壊した建物の破片と、焼け跡だけが残っていた。
そしてその前には……
体のあらゆる所が灰となった、僕達五人が倒れていた。
って、え?
何で負けてんの?
ダメだ、これ以上は見れない。
何かが邪魔している。
見ようとすると、目が霞んでしまう。
まるで世界が僕を邪魔してるかのように。
だけどこれで分かった。
今は戦うべきじゃない。
戦ったらまず殺される。
休憩したら早速町を出よう。




