野盗討伐
共闘すると決まれば行動は早い。
まずは半霊人の村まで行かないとね。
この国『エリスト王国』は、『魔の森』によって定期的に魔物の被害を受ける。
しかし、だからこそ冒険者たちが訪れるため、観光業なども盛んだ。
道も整備されていて、ここまであまりデコボコは無かった。
「で?あんたたちは半霊人の村に移住するっていうの?」
僕達に向かって、フェイが走りながら言った。
移動手段が徒歩しかないから、皆で走ってまずは中間地点にある『モークリー』という町まで行く。
それなりに大規模な街らしくて、警備や門番がたくさんいるけど問題ない。
フェイ以外の全員に、スミスが作った変装指輪をはめさせてある。
この変装指輪、外見だけでなくステータスまで偽装してくれるのだ。
まさに至れり尽くせりな便利機能!
と言っても、レベル八以上の鑑定だと見破られちゃうんだけどね。
まぁ、人間で『鑑定』を持ってる人って少ないらしいし、レベルが八の人なんてまずいないそうだ。
ちなみに僕の外見は、黒いコートを着た美少年(ココ重要)から、黒い旅人が着てそうなボロい装束を着ている普通の少年になった。
不細工って事も無いけど、イケメンとかでもない。
中の上って所かな?
別に中より少し上であることに他意は無いよ?
客観的な視点から僕を見てだよ?
シロネの外見は、顔だけちょっと変えた。
美少女過ぎて目立っちゃうかもしれないしね。
服装は白のワンピースに、黒いコートを着ている。
ナイトは外見がめちゃ変わった。
まず肌は浅黒くなり、茶色の瞳は紅くなった。
短髪だけど髪も生え、ダンディーな中年おっさんになった。
身長だけは変わらないようで、相変わらずの図体のデカさだが、それすら何故かかっこよく見える。
これがダンディー補正か!
服装は僕と大体同じで、スミスが新しく作った『ちょっと丈夫な剣』を背に帯刀している。
身長は変わらないからともかく、武器は目立ちすぎる。
だから、斧と大剣は村に着くまで封印して、自動再生と硬化だけが付与された、普通の両刃の剣を使う。
それでもなんか歴戦の勇者っぽくて、正直うらやましい。
で、スミスはものすごく変わった。
元々のスミスは、百五十センチで二足歩行のカメだけで説明がつくような、不細工とかイケメン以前にカメ頭なんですけどな感じだった。
なのに!
人化した途端に美少年になっちまったよぉぉぉおおお!!!
何なのこの顔面格差!
何なのその主人公顔!
何なのあの醜美逆転!
これが美少年ってやつかぁぁぁあああ!!!
いやいやいや!
僕だって美少年ですよ?
想像してたよりカッコ良くなって騒いでるだけで、僕の方が上ですよ?
だから僕をそんな可哀想な目で見るなスミスゥゥゥ!
クソッイケメンなんて爆ぜればいいんだ!
太陽でキラキラと輝くエメラルドグリーンの髪。
黄金に光る瞳。
そしてクールで整った顔の造形。
限りなく美少年じゃないですかヤダァァァァ!!!
服装だって僕と同じなのに、なぜか輝いて見える!
まぁそんな、黒と白とダンディーと美少年な四人の旅人集団って事でやっていこうと思う。
あ、フェイも入れると五人か。
どう見たって奇妙な奴らだけど、魔物の状態よりマシだ。
というか魔物だったら問答無用で殺されるよ。
殺されるのは襲ってきた方だけど。
そんなこんなで僕達はモークリーに続く道を走っている。
ちなみにスミスは足が遅いので、ナイトに背負わせている。
「まぁ、王都『リンベル』からはそっちの方が近いんでしょ?
ダンジョンを手放す事になるのは寂しいけど、また作れる」
それに人間の町にも行ってみたいしね。
食べ物と美女が僕を待っている!
「ダンジョンってそんな簡単に作れるの?」
「うーん、一日あればイケるよ」
「一日であの家を建てるの!?」
「スキルを使えばね」
フェイがめちゃくちゃびっくりしてる。
建物を建てるスキルなんて見た事無いんだろう。
スキルを奪って改造してしまう僕だからこそ、出来る事なんだろう。
心なしかスミスがドヤ顔になってる様に見える。
……いや、明らかにドヤってる。
スミスはナイトの様に、僕に完全服従しているワケじゃない。
いや、忠誠心自体はマックスだけど、友達のように接してくるのだ。
それも弄る方の友達。
表向きはドライな性格だけど、それと同じくらい弄るのが好きなのだ。
僕は別にそれでもいいし、スミスもナイトに怒られないように、ちゃんと線引きをしている。
ナイトとスミスは、どっちも僕から生まれた事もあって、仲は良い。
シロネの事も、何故か姉として慕っている。
二人から見れば、シロネは僕の第一の配下なのだろう。
友達だって言ってるんだけど、なんだかシロネまで(というかクロネが)乗り気になっちゃって、今じゃ僕の見ていない所で、三人(と元魔王)が名乗りの練習をしている。
まぁ、そのうち二人は眷属だからイヤでも感じ取っちゃうんだけど、まさかシロネまで参加するとは思わなかった。
「わ、私こそは魔王アキカゲ第一の配下!
破壊の従者シロネです!」
『元魔王クロネだよー♪』
「我こそは魔王アキカゲ様第二の配下!
大鬼の戦士ナイトであル!」
「あー、メンドクセー。
我こそは以下略。
亀人の職人スミスだー」
『「「「三人揃って魔王アキカゲ親衛隊!」」」』
みたいな事を何回も練習しているらしい。
スミスのやる気のなさは相変わらずだけど、それでもなんかむず痒い。
黒歴史になりそうだ。
ま、そんなの名乗る機会なんて……
……あったね。
それも十分後に。
「おいっ、殺されたくなかったら武器を捨てろ!」
僕達は獣道を歩いている時に、所謂野盗に襲われたのだ。
数は十人程度、そのうち杖を持った魔法使いが三人、その他は全部剣だ。
ステータスもスキルも平凡。
奪う必要性すら無し。
そして僕達に剣を向けている。
うん、殺すか。
僕はおもむろにリーダー格の頭を掴む。
で、潰した。
ぐしゃ!っと頭が潰れると、ぷにぷにとした脳が辺りにまき散らされる。
リーダー格は即死した。
「……え?」
野盗の誰かが声を漏らした。
それはあまりに現実離れした光景を見た時、混乱によって思考がフリーズした時に出すような声。
野盗たちの気持ちを代弁した声だった。
が、そのままフリーズさせてくれるほど、僕たちは甘くない。
フェイが自分の剣を抜く。
ナイトの『ちょっと丈夫な剣』よりも綺麗で、多分魔法がかかった魔剣だろう。
流れるように剣を振り、野盗たちの急所を突く。
アキレス健、手首、目、睾丸、脊髄。
叫び声やうめき声がその場を満たす。
「く、クソォ!『氷弾』!」
フェイに向かって魔法が放たれる。
普通の少女だったら、頭に氷が当たり大惨事だっただろう。
だが、生憎フェイは普通の人じゃない。
飛んできた野球ボールほどの氷弾を、手首を捻るだけで叩き落とした。
そして一気に距離を詰め、斜めに切る。
野盗から血が噴き出し、崩れ落ちた。
他の野盗もナイトが一瞬で殺した。
僕より魔王やってない?
「ふぅ、思ったより弱かったね」
「いや、あんな簡単に殺せるあんた達がおかしいのよ!」
フェイがそう言うけど、フェイだって野盗を圧倒していた。
話を聞く所によると、フェイは村の中で二番目に強いらしい。
そりゃあ野盗に襲われる危険性があるんだから、強い奴じゃなきゃ森にたどり着く事すら出来ないかもしれない。
そしてフェイは隠密スキル持ちだという事で、決まったらしい。
「まったく、堪ったもんじゃないわよ。
町では皆の仇である人間に囲まれ、森でも魔物に囲まれるなんて」
それでも行くんだから、フェイは結構責任感のある子なのかな?
でないと、こんな大役任せられるはずがない。
「とにかく、もうそろそろ町に着くわ。
いい?私たちは旅人なんだからね?」
事前に打ち合わせした通りだ。
そして僕たちはたどり着く。
人間の町『モーグリー』に。




