迷宮作成
冒険者たちを返り打ちにして一週間後、さらなる防衛力強化のために、僕たちがすべきこと。
それは――
「ダンジョンじゃーーー!!!」
「じゃーーー!!!」
「ジャーーー!!!」
「……じゃ」
『じゃーーー♪』
最初に叫んだのが僕、次に叫んだのがシロネ、三番目に叫んだのがナイト、四番目にに叫んだ(?)のがスミス、そして最後がクロネだ。
え?叫ぶ必要って?
そんなのノリだよノリ!
たまにはふざけることも必要なんだよ!
というワケで!今日は!ふざける!
うん、落ち着いた。
というワケで迷宮を作ろうと思う。
どうやってというと、スキルを使ってだ。
そもそものダンジョンとは、魔力の高い地域から生まれる魔物が、住処を作ったものだ。
そこから、宝を収集する魔物や地下を掘って住む魔物。
そんな魔物達が作ったのがダンジョン、魔物達の巣窟だ。
故に、ダンジョン=魔物がいっぱいとでも思ってくれればいい。
その点からいえば、魔の森そのものがダンジョンみたいなものだ。
だが、その上でさらにダンジョンを作るのだ。
ダンジョンの作り方は分かっている。
要は魔物がたくさんあればいいのだ!(違う)
そのためには地下を掘ったりしなければならない。
建築に関しては問題無い。
「スミス!
お願いしまーす!」
「……了解、我が主」
スミスは甲羅の隙間から、紙を取り出した。
それはダンジョンの設計図が描かれた、地図のような紙だった。
スミスはそれを地面に置き、魔力を流し込む。
その瞬間、紙は青い光を放ち始める。
地面が水の様に歪み始め、穴が開いた。
穴に落ちた紙は、石のような壁を次々と生み出す。
生み出された壁は、次々と形を変えながら地面に飛び出し、城のような形になった。
これこそスミスのスキル、『迷宮作成』だ。
効果は簡単、材料を呑み込んで、魔力を流した紙に設計図を描く。
そしてもう一度魔力を流すと、設計図通りに自動で建物を作ってくれるのだ。
スミスさんマジパネェッス!
ちなみにスミスのステータスはこうだ。
『種族:シャドウ・ミネラルタートル
LV300
名前:スミス
体力:20000
魔力:10000
筋力:1000
防御:20000
俊敏:5
耐性:20000
運:1000
種族スキル
「鉱物作成LV9」「魔王の眷属LV9」「忠誠心LV9」
固有スキル
「迷宮作成LV9」
通常スキル
「胃袋倉庫LV9」「我慢LV9」「武器作成LV9」
「防具作成LV9」「魔法道具作成LV9」「鉱物感知LV9」
強化スキル
「堅装甲LV9」「顎強化LV9」
魔法スキル
「錬金術LV9」「錬成LV9」「火炎魔法LV9」
「水魔法LV9」「魔法付与LV9」
耐性スキル
「熱耐性LV9」「火耐性LV9」「寒耐性LV9」』
ステータスを見れば、スミスが戦闘向きの魔物でないと分かるだろう。
それもそうだ、スミスは道具・建築用に作った魔物なんだから。
名前の由来は『鍛冶屋』からだ。
安直かもしれないが、下ネタよりもいいでしょ?
とにかく、地上三階で地下も三階、全六階建てのダンジョン城の完成だ。
まず地下三階は採掘場。
鉱物はスミスが武器や防具にしてくれる。
そのために、鉱物をたくさん取る必要があるのだ。
そして地下二階。
ここには作成した武器や防具、鉱石などを保存する倉庫だ。
冒険者からはぎ取った物もここに保存する。
地下一階。
ここは襲撃者たちを迎え撃つ魔物達がいる。
と言っても数十体程度だけどね。
地上一階と二階。
ここはまだ何するか決めてない。
最後に三階。
ここは僕たちが生活するスペースだ。
……とまぁ、こんな感じだ。
そして外には畑が広がっている。
まだ種は植えてないけど、もしかしたら農業特化魔物とかも作るかもしれない。
夢が広がりますな!
ダンジョンの外にある庭に来た。
ここで何をするかといえば、所謂腕試しってやつだ。
僕の新しいスキルを試すのだ。
相手は基本ステータス値が高いナイトである。
いつもの通り、黒騎士装備に大剣と斧。
そのすべてが、スミスによって改造され、魔法がかけられた魔法道具である。
『黒騎士の冑:物理耐性、魔法耐性、自動再生、魔法防御結界』
『黒騎士の鎧:物理耐性、魔法耐性、自動再生、魔法防御結界』
『黒騎士の手甲:物理耐性、魔法耐性、自動再生、魔法防御結界』
『黒騎士の足甲:物理耐性、魔法耐性、自動再生、魔法防御結界』
『超魔鋼の斧:重量軽減、空間切断、発火、吸血』
『黒鉄の大剣:硬化、雷纏、風斬』
やっぱりすごいよねぇスミスは。
これだけの効果を一日で付けちゃうんだよ?
僕だけだったら出来ないだろう。
「それでは模擬戦闘を開始します!」
『どっちもがんばれ~♪』
審判はシロネに任せている。
シロネなら戦いの衝撃の巻き込まれてケガするなんて事は無いだろう。
その手を上にして、振り下ろしたら戦闘開始だ。
「……初め!」
その声と同時に突っ走る。
僕のステータスなら、常人が見たら認識できないくらいの速度になっている。
でも、ナイトは違う。
ちゃんと僕を認識した上で、正確に防御してくる。
だったら『音速王』発動!
世界の全てがスローになり、僕だけがその中で自由に動ける。
これこそ『音速王』の能力。
制限なしで常時音速移動するスキル!
更に『高速演算』で動体視力が上昇。
ほとんど時間が止まってるようにすら感じる。
僕は紅い剣――紅陰を鞘から抜く。
『紅陰:空間切断、自動再生、伸縮自在、吸血、腐蝕、感情呼応』
相変わらずのチート性能だ。
僕はその効果の一つ、伸縮自在を使う。
剣の刃は一瞬で二メートル以上伸びた。
僕はそれをナイトに叩きつける。
「フンッ!」
だけどナイトはそれを大剣で防御した。
ナイトの素のステータスで対応できる速度じゃなかった。
多分『高速移動』と『高速思考』、『第六感』を合わせて使用したのだろう。
逆に言えば、ナイトは音速で動き回る相手に対応できるほどの猛者だという事だ。
これはうれしいことだね。
味方は強ければ強いほどいい。
ただし、気になることがある。
「ねぇ、ナイト?」
「なんでしょうカ、我が主」
「何で攻撃しないの?」
「我らが偉大なる父にしテ、創造主であられる主に剣を向けられるワケがありませン!」
「わお、メンドクサイ」
そう、ナイトは僕に攻撃しようとしないのだ。
ナイトからしてみれば、こうして僕の攻撃を防御したこと自体、本当なら自害モノだったらしい。
我が主の攻撃を妨げるなんて!って所だろう。
ナイトの一途さは美点かもしれないけど、こういう時は頑固で困る。
いや、喜々として僕を攻撃するよりマシなんだけどさ、このままじゃ練習にならない。
攻撃するつもりのない奴は、なんか攻撃しずらい。
完全に僕の感じ方の問題だけど、やっぱりなんか違うのだ。
あーどうしよっかなー。
あ、このスキルがあったじゃん。
「ねぇ、ナイト」
「ハッ」
「ちょっと頭かして?」
「了解しました!」
ナイトは僕に接近し、頭を下げる。
なんかナイトが謝ってるみたい。
とにかくナイトの頭に手を当てる。
で、『憤怒』を一時的に貸す。
その瞬間、ナイトの身体が一瞬ぶれ、僕に剣を叩きつけていた。
もちろんバックステップで回避。
叩きつけられた地面は、その衝撃でまるで月のクレーターの様になっていた。
シロネも、ナイトの異変に気づいて非難したらしい。
結界が張ってあるダンジョンの屋根に立った。
そこなら、飛んできた石なんかは当たらない。
ナイトの様子を見ると、なんだか身体がプルプル震えている。
「ああああン!?なーにが我が主だくそったれガァ!クソチビ捻り潰スゥゥゥ!!!」
案の定『憤怒』に精神を支配されてるらしい。
そうでないと泣いちゃうよ?
やっぱりさっきのナイトの方が良かったかも。
まぁ、いいや。
それよりナイトが突っ込んできた。
「死ね死ね死ネェ!オラオラオラオラ!!!!」
どこのスタンド使いだよお前は。
冗談は置いといて、ナイトの速さは既に限界を超えるレベルだ。
『憤怒』が他のスキルを強化しているのだろう。
そして僕に攻撃が当たらない苛立ちが、攻撃をさらに苛烈にさせる。
至る所で砂塵を発生させ、轟音を当たらにまき散らす。
まさに破壊の化身。
触れればケガするとは正にこの事だろう。
だが、剣の軌道は『高速演算』と『未来視』で、手に取るようにわかる。
視界に青い線でナイトと剣が見える。
次の瞬間、ナイトと剣はその線をなぞるように動いた。
これが『未来視』、未来が分かるスキルだ。
このスキルには二つの使い方がある。
一つは今も使っている、相手の次の動きを予測するスキルだ。
予測した未来は青く見える。
最大で十秒後の未来が予測可能だ。
二つ目は、その名の通り、未来を予知するスキルだ。
これは一日後から十日後までの未来が見える。
ただし、この未来は絶対的じゃない。
あくまで一番可能性の高い未来だ。
持続時間も十秒くらいだしね。
このスキルを使えば、ナイトの動きなんて目を閉じても分かる。
ホントに目を閉じても未来視が使えるから、タイミングさえ掴めれば避けれる。
だけど『憤怒』でこれ以上強くなっても周りに迷惑だし、今度は攻撃してみよう。
『飛翔』で空中に飛び、魔法を唱える。
『炎魔召喚』!
周囲の空中に赤い魔法陣が浮かび上がる。
直径一メートルに広がった魔法陣は、眩く光り初めた。
そして炎が発生し、竜巻の様にうねり始める。
炎は生き物のように動き始め、人間を容易に飲み込めるサイズになった時、急に収束した。
収束した炎は虎の形になる。
僕の魔力が生み出した召喚獣、炎魔『炎虎』だ。
その姿は正に炎の虎。
ロードタイガーの姿を参考にした。
「ガァァァァアアアアアア!!!」
「おおオ?犬ッコロ追加ですカァァァ~?」
ナイトが叫ぶ。
その声は何処までも楽しそうで、何処までも狂気的だ。
やっぱ危ないスキルだよなぁ『憤怒』って。
自分で止まることが出来ないんだから。
コントロール不能のスキル。
敵に味方にも自分にも厄介だ。
だけどこれからが本番だ。
僕はエンコの頭を撫でる。
そして発動。
『炎魔武器化:剣形態』!
エンコが炎に戻り、剣の形態になる。
これこそ『炎魔召喚』の真骨頂。
『炎魔武器化』だ。
炎魔を武器化し、それを扱うことが出来る。
この武器はまさしく、生きた武器なのだ。
「ナイト、今からちゃんと防御しておいてね」
「ア?」
「じゃないと、マジで死んじゃうかもよ?威力間違えて」
僕はエンコの力を発動する。
とにかく、まだ十パーセント。
今から行うのは、エンコのエネルギー十パーセントの攻撃だ。
そして剣を振る。
素振りみたいに軽くだ。
そうでないと、ナイトを殺しかねない。
その時、剣を振った線上にあった空間は、灼熱に包まれた。
まさに爆発。
森が焼ける。
木々が一瞬で炭になり、爆風で根ごと空中に飛ぶ。
一歩間違えたらダンジョンまで吹き飛ばしてしまうところだった。
僕の目には、それまであった木々がなくなり、焼け後だけが残った。
いや、ただ一人だけ、ナイトが倒れている。
鎧や武器が少しだけ熱で溶けてるけど、威力を抑えたおかげでまだ意識がある。
「……ア?……ワガアルジ?」
やあやあ、メンゴメンゴ。
ちょっと『憤怒』が暴走気味だったから、少しだけ本気出しただけだから。
「そうですカ、……我が主を傷つけずに済んでよかっタ」
またそれかい。
いやー、嬉しいけどさー、なんか重いね。
嬉しいけどさ。
ま、それがナイトの美点なんだろう。
そんな事を考えていると、シロネとスミスが寄ってきた。
「だ、大丈夫ですか!?ナイトさん!」
「ア、アネキ……大丈夫でス」
「……やれやれ、ひどくやられたね。
水呑む?ナイト兄貴」
「いヤ、もうゆっくりしたイ。
気遣い感謝すル。
弟よ」
うんうん。
配下と友達同士、仲良くしてそうでよかったよ。
仲悪かったらいろいろと困るからね。
魔の森で最も近い町『モークリー』では、大混乱が起こっていた。
それもそうだろう。
町の冒険者すべてが消失したのだから。
このまま魔物が襲来すれば、冒険者のいないこの町など、いとも容易く滅ぼされるだろう。
必要なのだ、戦力が。
だが国の騎士団が調査に来るのは、早くても三日だ。
その間、自分たちはビクビクと魔物の恐怖に怯えながら、生きていかなくてはならないのだ。
石造りの大通りでは、大勢の人たちがザワザワと語り合っていた。
ただその中で一人、オープンカフェで優雅にミルクティーを飲む、灰色の髪を持つ少女がいた。
外見は十六歳、紫色の瞳を持ち、その他大勢を虫を見るような目で見ている。
いや、彼女達からすれば、人間など虫のようなものかもしれない。
姿が似ているだけで、中身は違う。
自分たちはあのような汚い人間とは違うのだ。
その目はそう言っている様だった。
それも、彼女たちの生い立ちを考えれば、しょうがないのかもしれない。
思わず唇を噛みそうになる。
そもそも命令さえなければ、こんな所に来るはずがない。
こんな人が多い所に、来たくなかった。
だが、調査のためなら仕方ない。
そう言って少女は自分を納得させる。
騎士団は最速でも三日後だ。
その前にこの町で準備を進めなくては。
そう思ってカフェを出る。
早く行かなければ。
新しい魔王に会いに。
ステータスをちょっと変えてみました。
スキルの種類と、ステータスアップ系のスキルは、ステータスに変化元を表記しない事にしました。




