ギルドマスターの本気
ギルドマスターは、ここよりも北にある『帝国』のスラム街で生まれた。
それは決して祝福された誕生では無かった。
両親に会ったワケでは無いが、ゴミ捨て場に捨てられていた事が何よりの証拠だろう。
推測でしかないが、客の子供を孕んでしまった娼婦が、育てる金が無いから捨てた。
多分そんなところだろう。
育ての親であり、自分に生きる術を教えてくれた『師匠』がいなければ、自分はカラスの餌だっただろう。
師匠が、自分を拾ってくれた理由は分からないままだったが、寝ている時に泣きながら、誰かを呼んでいたことから考えると、戦争か何かで自分の息子を失ったのかもしれない。
そして失意の中、スラム街を歩いている所に自分を見つけた。
つまり、自分は師匠の子供替わりなのだ。
そのことに特に不満は無かった。
自分からすれば、二十歳になるまで育ててくれただけで感謝してるし、自分も師匠を実の父の様に慕っていた。
だが、師匠は老いで死んだ。
正確に言えば、流行り病で死んだ。
師匠がいなくなった今、スラム街で自分一人になった。
スラム街での生き方は三種類だ。
人を暴力で支配する生き方。
それに従う事で褒美をもらう生き方。
そして薬で現実逃避する生き方。
ギルドマスターが選んだのは、もちろん人を暴力で支配する生き方だ。
若い頃は特に荒れていた。
毎日が暴力沙汰の日々。
剣と魔法と血が、ギルドマスターの毎日だった。
集団で行動した方が効率が良かったが、他人と協力するのは苦手だし、一人の方が気楽だったから、いつも一人で何人もの相手をしていた。
気に入らないやつはぶん殴り、金を奪う日々。
そのことについては何も感じていなかったし、当然のように死ぬまでこの生活のつもりだった。
だが、その生活は突然変わった。
きっかけは、ゴミ捨て場に捨てられていた赤ん坊だった。
その光景に、ギルドマスターは目が離せなかった。
まるで自分を見ているかのようだった。
過去の自分を。
だから、拾って育てたのだ。
自分が子供の子守をする姿を見て、スラム街の誰もが自分の目を疑った。
もしくは夢だと思って、頬を引っ張っていた。
それだけ衝撃的だったのだろう。
自分でも似合わないと思っている。
しかし、それでも子供を守った。
自分が腑抜けたとでも思ったのか、それとも赤ん坊と言う弱点が出来たからなのか、よく野盗に襲われたが、もちろん殺して金を奪った。
子供に悪影響が出るかもと思ったが、そもそもスラム街で生きるのだから、逞しい方が良いだろう。
子供が五歳になった頃から、武術を教え始めた。
武術と言っても、師匠が教えたことを真似しただけなのだが、子供は案外素直に練習した。
元々いい子なんだろう、自分と違って。
それに上達も早い、才能も有りそうだ。
占い師に親バカと言われたが、別にこれくらい誰でもするだろう。
他人の子育てなど、見た事も無かったが。
子供が十歳の頃、スリの技術を教えた。
やはり呑み込みが早く、十日もすれば手助け無しで、酔っ払った野盗から金を掏ることが出来た。
ここまで来れば、もう一人でも生活できるだろう。
心細いが、子供の成長のためなら仕方ないと思った。
その日、自分は肉を買うために住処を出た。
子供は寝ていたので、起こすのも面倒くさいと思い置いてきた。
少し雨が降ってきたので、小走りで肉屋に走った。
その肉屋は、様々な燻製肉が干してあり、店番はパイプをふかしながら自分をチラッと見た後、小さく「いらっしゃい」と言った。
相変わらず不愛想だが、それは自分も同じなのでむしろありがたい。
それに何の肉かもわからない肉屋より、こっちの方が安全という理由もあって、半ば常連客となっていた。
いつも通り、ハムを五切れ買った。
二つが自分の分、三つが子供の分だ。
子供の方が数が多いのは、自分が少食なのと、子供が成長期であるという二つの理由からだ。
そのたびに子供が申し訳なさそうな顔をするが、そもそも買って来たのは自分なのだから、そんな顔する必要ないだろうと思う。
それだけ優しい子なのだろう。
――その時、爆発音と振動がした。
自分は一瞬で気が付いた。
音がした所は、自分の住処の方向。
つまり、子供がいる方向だ。
いやな予感がした。
自分は店を出て、逃げ惑う人から男を捕まえる。
「おいっ、何があった!」
「ま、魔物が出たんだよ!商人の箱に潜んでたみたいで……」
男の話が終わらない中に、自分は駆け出した。
頼む、頼む、頼む!
生まれてから一度も拝んだことの無い神様に向かい、何度も願った。
頼むから、子供は逃げていてくれ、と。
自分のスキルを全開発動する。
風の様に大地を蹴り、壁を乗り越え、屋根を走った。
そしてたどり着いたその先には――
――死体となった、子供がいた。
そして後ろには、口から火を噴いている魔物が一体いた。
一メートル程度の大きさのある、カエル型の魔物だった。
魔物が口を開く。
そして、火の球体を吐き出した。
火球が地面に触れると、大爆発が起こって建物を崩す。
崩れる建物の砂煙で、辺りが見えなくなる。
しかし、『熱感知』を持つギルドマスターには関係ない。
十メートル程度まで跳躍し、かかと蹴りを炸裂させる。
蹴りは魔物の頭をへこませ、脳を歪ませる。
それでも足りない。
まだまだ、怒りが収まらない。
子供を殺した魔物への怒りが、子供を置いてきた自分への怒りが、そして自分の運命への怒りが、ギルドマスターを動かした。
絶叫を上げながら、剣を魔物に突き刺す。
抵抗する魔物を抑え込み、更に攻撃した。
防御など考えず、唯々殺す事だけを考える。
一分か二分した後、魔物は息絶えた。
あれからもう何年経っただろうか。
その後自分は冒険者ギルドに加入し、魔物を殺しまくった。
そこでもやはり一人でだ。
その方が居心地が良かった。
何かを失うのが怖かったのだ。
いつの間にかギルドマスターとなり、皆の命を託される立場になっても、それは変わらなかった。
というか、自分にとっては魔物を殺せればそれでいい。
自分の目的、それは復讐だ。
子供の命を奪った魔物を殺すこと。
それだけが自分の生きがいなのだ。
今でも同じだ。
どれだけ不利な戦闘だろうが、魔物を殺せるためならやってやる。
それが、ギルドマスターという者だ。
僕は今、明らかに強い人を含めた三十人と、相対している。
拓けた林の真ん中で、にらみ合ってるような状態だ。
剣を抜いておく。
場合によっては、一瞬で決着がつくかもしれない。
ギルドマスターさんも同意見らしい。
左手に一メートル程度の黒い杖、そして右手に白い剣。
それを見て冒険者は構える。
が、僕からすれば冒険者は無視してもいい。
ダメージなんてほとんどないしね。
でもギルドマスターは注意だ。
ステータスを見ればわかる。
『種族:人間 LV200 名前:デネブ・グランド
体力:600(1200)
魔力:1000
筋力:500(1000)
防御:450(900)
俊敏:400
耐性:400
運:500
スキル
「憤怒LV9」「魔物殺しLV9」「魔闘術LV9」
「剣豪LV9」「頑丈LV9」「魔法耐性LV9」
「恐怖耐性LV9」「怪力LV9」「暴風魔法LV9」
「隠密LV9」「威圧LV9」「遠見LV9」
「貫通LV9」「寒耐性LV9」「熱耐性LV9」
「不屈LV9」「熱感知LV9」「痛覚耐性LV9」』
『憤怒:感情が高ぶる毎に全ステータスアップ、瀕死の状態になると暴走』
『剣豪:剣を扱う時、全ステータスアップ』
なにこれ人間止めてない?
しかもよくわかんないスキルがたくさんある。
ステータスアップって言っても、どんだけ上がるかは分からないんだよなぁ。
雰囲気からしてかなりの熟練者だ。
めちゃくちゃやばそう。
でも倒すしかない。
新しいスキルを試す機会だしね。
ギルドマスターに向かって突撃する。
僕の俊敏にかかれば、目にも止まらない速さで走るなんて、朝飯前だ。
それでもギルドマスターだけは反応した。
ガキンという鈍い音と共に、剣が交わったことによる衝撃波が発生する。
それだけで周囲の冒険者が吹き飛ばされる。
「貴様ら、決して手を出すなっ!」
今の攻防で、僕にとって冒険者たちは雑魚であることを確信したらしい。
振り返らずに叫んだ。
冒険者たちも、今の衝撃で戦意喪失したらしく、へたり込んでいた。
良い判断だろう。
どうせ戦ったところで、足止めにもならない。
さて、ギルドマスターとの一対一の勝負、どうしようか。
どうしようかと言っても、倒さないとどうしようもないんだけどさ。
ただし、『憤怒』の瀕死になると暴走ってやつがどうも怪しい。
つまり一撃必殺でやるしかないってことだ。
剣の打ち合いをする中で考える。
このギルドマスター、相当強い。
人間だったら最高クラスなんじゃないかな?
でも、僕にとってはちょっと強いだけだ。
それでも油断できないんだから恐ろしい。
まず『貫通』、これは防御値を貫通するスキルだ。
といっても全部というワケじゃない。
レベル九でもせいぜい防御値を一割にするだけだ。
だったら、僕の体力はそうそう削れない。
一万もあるからね。
だけど、剣の腕ならギルドマスターの方が上手だ。
『剣豪』のお陰でもあるんだけど、スキル無しでもこれはやばい。
体の軸がまったくぶれてない。
僕の攻撃を完全に受け流し、更に体勢を崩しに入る。
距離を広げても、暴風魔法で遠距離攻撃してくる。
それを避けてる間に距離を詰めてきた。
押されてる。
身体的ステータスでは圧倒しているのに、だ。
これが技術の差と言うやつだろう。
対する僕は防御するので精いっぱいだ。
これはジリ貧だ。
スキルを使おう。
『魔闘術』を発動。
全身に魔力を纏わせる。
魔王も使っていたスキルだ。
このスキル、攻防一体のスキルと言っていい。
何故なら身体を纏う魔力で防御できるし、魔力で身体強化することも出来る。
バランスの良いスキルだ。
ただし、このスキルは相手も持っている。
相手がこのスキルを発動すれば、また五分五分になるだろう。
だが、僕のスキルならそれを上回れる。
『筋力強化』と『俊敏強化』、『暗殺』と『擬態』で気配を極限まで消す、そして『高速演算』で攻撃を予測する。
手数なら僕の方が多い。
それこそが僕の強みだ。
剣の打ち合いが激しくなる。
僕の思考は更にクリアになっていく。
剣筋の予測に集中し、剣の打ち合う音しか聞こえなくなった。
それでいい。
倒すにはそれぐらいの集中力が無いと。
『超巨大積乱雲』を撃とうにも、そんな隙は無い。
だったらそれ以外で押し切る!
僕の速度がさらに増す。
そして攻撃の一つ一つが重くなる。
ギルドマスターもこれはきついらしい。
顔に汗がにじみ出ている。
だが、ギルドマスターも本気を出したようだ。
『魔闘術』を発動している。
この状態になったら、魔力切れになるか、ギルドマスターが解除しないと半端な攻撃は通用しない。
それは僕も同じだ。
互いに決定打が無いまま戦いは続く。
でも有利なのは僕だ。
僕の方が魔力が多い。
つまり『魔闘術』が長続きするという事だ。
だったら時間が経てば僕が勝つ。
ギルドマスターもそれは承知らしい。
なのにその瞳は諦めていない。
『恐怖耐性』と『不屈』が発動しているんだろうけど、それ以外の何かがあった。
怨念の籠った目だ。
まるで仇を見るような。
いや、まぁ冒険者を殺したんだから当たり前なんだけどね?
でもその目は僕を見ているように見えない。
まるで僕を通して違う何かを見ているような、僕個人では無く、僕という魔物に向けられた怨念。
それが濃くなるたびに、ギルドマスターが強化されていく。
その速度はもうすでに、残像すら見えるレベルだ。
でも、もう終わりだ。
準備は整った。
空間魔法『空間切断』!
剣の周りが歪みだし、キィィィィという音が鳴る。
空間が歪んだ時の音だ。
ギルドマスターは一瞬警戒した様だが、それでも攻撃をやめるつもりは無いらしい。
ギルドマスターを切りつける。
もちろんガードするんだろうけど、それで終わりじゃない。
この魔法は空間ごと対象を切る魔法だ。
つまり、防御不能の斬撃。
予想通り、ギルドマスターの剣を壊すことに成功した。
剣の刃がバッサリと切れている。
これでもう終わりだ。
心臓に一突き。
グサッと突き刺さった剣は、ギルドマスターの心臓を貫いた。
「がっ、ぐがぁッ」
「ギルドマスターが倒された!」
「お、おい嘘だろ!?」
「もう終わりだぁ!」
ギルドマスターが苦悶の声をあげ、それに動揺したんだろう、冒険者たちが諦めの言葉を吐いた。
……これで終わりならいいんだけど。
だけど『第六感』が、まだ終わってないと本能の危険信号を鳴らす。
その時、ギルドマスターが僕の剣を掴んだ。
ギルドマスターの瞳は狂気に墜ちていた。
口はいかにも楽しそうに引きつっている。
ヤバイ!
なんか危ない!
「ぐふっ、……ぐひっ、ヒャハハハハハハハ!」
いきなり笑い出した。
それもかなり狂気的な笑い。
僕は直感した。
『さっきまでのギルドマスター』と、『今のギルドマスター』は違う。
詳しく言うなら、『さっきまでのギルドマスター』は本当のギルドマスターじゃなかったのだ。
そして、『今のギルドマスター』こそ本物のギルドマスター。
ギルドマスターの本気。
『憤怒』だ。
「あー、久々に笑っちまったよ、クソッタレ」
ギルドマスターは、いや『憤怒』はそう言って前髪を掻き上げる。
前髪で隠れていた顔の傷が見え、一気に野性的な雰囲気になる。
猫背気味だった背もまっすぐになり、身長どころか体格まで変わった気がする。
何その劇的ビフォーアフター。
劇的過ぎて目が飛び出そうだよ。
でも飛び出す暇は無い。
鑑定したところ、かなりやばいことになってる。
『種族:人間 LV200 『憤怒』発動中 名前:デネブ・グランド
体力:600(6000)
魔力:1000(10000)
筋力:500(5000)
防御:450(4500)
俊敏:400(4000)
耐性:400(4000)
運;500(5000)
スキル
「憤怒LV9」「魔物殺しLV9」「魔闘術LV9」
「剣豪LV9」「頑丈LV9」「魔法耐性LV9」
「恐怖耐性LV9」「怪力LV9」「暴風魔法LV9」
「隠密LV9」「威圧LV9」「遠見LV9」
「貫通LV9」「寒耐性LV9」「熱耐性LV9」
「不屈LV9」「熱感知LV9」「痛覚耐性LV9」』
全ステータス十倍ってどゆこと?
魔力とか一万になってるし、『憤怒』発動中ってなってるし。
それ以外にもなんだか色々変わってそうだなぁ。
とか思ってたら、ギルドマスターが走り出した。
ただし冒険者の方に。
そして素手で冒険者たちを攻撃しだした!
「ぐぅああぁぁぁ!」
「なっ、ギルドマスッ、ぐぉっ」
「テメェらノロ過ぎなんだよ、クソゴミどもがぁ!」
何やってんだろうあれ?
仲間を殺してどうした?
「あのー、何で仲間を殺したの?」
「ああ?こいつらゴミだろ?ゴミは掃除しないと汚ねぇじゃねぇか!」
なんだ、ただイライラしたからか。
こいつすごい暴力的だなぁ。
情緒不安定ってこんな感じなのかな。
ギルドマスターはついに冒険者たちを殺しきった。
その間は攻撃しない。
何か隠し玉を持ってる可能性がある。
様子見だ。
が、今のギルドマスターに理性はあまりなさそうだ。
血まみれになって笑うさまは、狂人以外の何物でもない。
そして、ぐるりと顔を捻る。
その目は、もはや怨念だけの目ですらない。
狂気、興奮、憤怒、愉悦、それが混ざってグチャグチャになったような、限りなく黒に近いナニカ。
赤いようにも見えるし、青いようにも、紫にも、黄色にも、緑にも見える。
ただし、光が全く存在しない。
奈落のような、宇宙のような黒目。
そんな目が僕を凝視する。
正直めちゃくちゃ気持ちが悪い。
でも、なんだか親近感がわく。
まるで、あの時の僕のような色だ。
様々な負の感情が身体を蝕み、魂が黒く染まる。
そしていつしか、復讐しか考えられなくなる。
なんだか、小さい頃の僕を見てるみたいだ。
ニージイが殺された時の、僕の心。
奈落のような心の穴を埋めない限り、それは暴走し続ける。
僕の場合、五人中四人は殺したし、あとの一人も社会復帰不可能だったから、一応復讐したってことになる。
でも、ギルドマスターは違う。
ギルドマスターの穴に底は無い。
何故なら、復讐しようとしてるのは、この世界の魔物なのだから。
そして僕もその魔物だ。
ギルドマスターにとって僕はあの五人なのだろう。
何が何でも殺しに来る。
だったらそれでいい。
それでこそ復讐だ。
だが、それでも僕を殺すっていうんなら容赦しない。
試したいこともあるんだ。
「あああー、お前魔物かー?んじゃ殺す!」
いきなりダッシュしてきた。
冒険者が持っていた剣を奪ってだ。
だけど、もう遅い。
もう決意は固まった。
『憤怒』を受け入れる決意だ。
何を言ってるか分からないかもしれないけど、今に分かる。
ほら、じゃあやろうか。
『奪取の魔気』の能力。
それは相手から体力、魔力、スキルを奪う事だ。
ただし、強力なスキルは奪えない。
それこそ『奪取の魔気』の難点だ。
だとしても『奪取の魔王』なら奪える。
ただしそれなりの代償が伴う。
強力なスキル、固有スキルとでもいうべきスキルは、魂と直結している。
つまり、固有スキルとは魂のスキルなのだ。
それを奪うには、魂ごと奪うしかない。
他人の魂を、自分の身体に引きずり込むのだ。
それはつまり、その記憶や人格すら引きずり込んでしまう危険がある。
だけど、ギルドマスターから『憤怒』を奪うには、それしかない。
残念ながら、『奪取の魔王』は身体を魔力化する必要が無くなったため、物理攻撃を無効化できなくなった。
その代わりに奪うスピードは速くなった。
僕はギルドマスターの攻撃を避けた後、剣を捨てて組み付く。
そしてギルドマスターから奪う。
ギルドマスターが黒く染まりだす。
「んなっ、クソゴミがぁぁぁ!」
絶叫を上げても無駄だ。
もう君の死は決定した。
さっさと僕に奪われろ!
記憶が流れてきた。
多分ギルドマスターの記憶だ。
そしてギルドマスターの魂が、僕の流れる感覚がした。
ギルドマスターも僕の記憶が流れてるのかな?
――君が魔王なのかい?
ギルドマスターの魂が僕に語りかけてきた。
あー、はい、最近魔王始めました。
――そうか、だったら頼みがある。
私の記憶を読み込んだ君なら、言わなくたって分かるだろうけどね。
うん、『子供は殺さないでほしい』って所かな?
任せてよ、僕は結構、平和主義者だよ?
――ふふふ、それは冗談として受け取っておくよ。
え?
なんか冗談に思われたんだけど。
――とにかく、私は『憤怒』として生き続ける。
私はいつでも君を見ていると思ってくれ。
いいの?
僕結構ゲスなことしようとしてるよ?
侵略とかさ。
止めないの?
――どちらにしても、もう私は負けたんだ。
それに『憤怒』が無くなった今、魔物に対する復讐心が無くなったんだよ。
君の記憶も見させてもらったしね。
それじゃあ、もうそろそろお終いにしよう。
うん、それじゃあこれからもよろしくね、『憤怒』。
――ああ、これからは君と共に生きよう。
そして、約束は守ろうね。
わかってるって。
バイバイ。
ギルドマスター、デネブ・グランドの魂が、僕の中に入り込んだ。
『デネブ・グランドの魂を取り込みました』
『憤怒を奪取しました』
『憤怒と奪取の魔王を統合しました』
『侵奪の魔王と憤怒、逆鱗を取得しました』
『超感覚と第六感、幸運を統合しました』
『未来視を取得しました』
『高速体力回復と高速魔力回復、回復魔法、強化魔法を統合しました』
『高速再生を取得しました』
『ソニックスターが進化しました』
『音速王を取得しました』
『炎噴射と召喚魔法を統合しました』
『炎魔召喚を取得しました』
『自然魔法が進化しました』
『自然王を取得しました』
『暗殺と擬態を統合しました』
『透明化を取得しました』
『種族名:シャドウ亜種 魔王個体 LV510 名前:アキカゲ
体力:10050/10050
魔力:10050/10050
筋力:10050(20100)
防御:10050(100500)
俊敏:10050(100500)
耐性:10050
運:505(1010)
スキル
「鑑定LV9」「侵奪の魔王LV9」「音速王LV9」
「超音波LV9」「吸血牙LV9」「怪力LV9」
「弓術LV9」「威圧LV9」「飛翔LV9」
「仮眠LV9」「自然王LV9」「魔物殺しLV9」
「魔鋼鎧LV9」「高速演算LV9」「状態異常耐性LV9」
「魔闘術LV9」「闇魔法LV9」「スキル譲渡LV9」
「空間魔法LV9」「逆鱗LV9」「剣豪LV9」
「未来視LV9」「高速再生LV9」「炎魔召喚LV9」
「眷属作成LV9」「透明化LV9」「憤怒LV9」』
この日、総勢百人の冒険者が消えた。




