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シャドウの異世界魔王道  作者: river
冒険者殲滅編
23/28

魔王の白い従者(友達)

 アンディは警戒していた。

 もちろん、『謎の魔物』が襲撃する事をだ。

 こちら第二部隊は三十五人、そしてギルドマスターがいる第一部隊は三十人、第三部隊は三十五人。

 第一部隊だけ五人少ない理由は、ギルドマスターがいるからである。

 ギルドマスターは冒険者十人に匹敵する、なのでこの分配となった。

 

 今自分がしなければいけないのは、『謎の魔物』の討伐だ。

 自分たちが冒険者十人、いや推測を含めれば、アーロンを入れて十一人の仇を打つのだ。

 それこそ、緊急クエストが発注された意味。

 

 『魔力感知』は既に最大まで感知している。

 あとは強大な魔力を感知し、襲撃するだけ。

 油断はしない、必ず殺す。

 それがアンディの思考だった。


 だからこそ気付けなかった。

 『魔力感知』に集中しすぎて、自分の目で探すことを忘れていた。

 それがアンディの失敗だった。


 最後尾の冒険者が叫び声をあげ、倒れた。

 死体は胴体を右斜めに切られ、心臓が血を噴出させる。

 しかし、冒険者を切った白い少女は、手に持っていた青い剣以外に血は付いていなかった。


 百四十センチほどの身長に、腰まである白髪は風に靡いている。

 赤い瞳は優し気で、まさに子供と言った感じだが、気配は敵意丸出しだ。

 そして最も驚いたのは、『魔力感知』に一切引っかからなかった事だ。

 よほど優れた隠密スキルを持っているという事だろう。

 間違いなく『謎の魔物』だ。

 

 隠密スキルで冒険者の近くまで忍び、そして急所を一撃で切る。

 そうやって今まで勝ったのだろう。

 だったら今日が運の尽きだ。

 こちらにはさっき欠けた冒険者を抜いても、三十四人いる。

 そしてそのリーダーは自分だ。

 絶対に負けない。


「命令だ!

 前衛の冒険者は『謎の魔物』を包囲!

 ただしまだ手は出すな!

 魔法を使える冒険者は、結界魔法または強化魔法を唱えろ!

 絶対に無茶はするな!

 行動開始!」


 何度もミーティングされた命令だ。

 一切の迷いもなく、それぞれがそれぞれの役割を果たす。

 アンディ自体も魔法を唱える。


「『物理結界(フィジックスシールド)』!

 『魔力遮断結界マジックシャウトオフシールド』!

 『思考加速(アクセルシンキング)』!

 『全体筋力上昇オールストレンジアップ』!

 『全体魔力上昇オールマジックパワーアップ』!

 『全体防御上昇(オールガードアップ)』!」

 

 アンディはそれだけの魔法を、一瞬で唱えた。 

 そもそも、この町最強の冒険者はアーロンだが、一番貢献しているのはアンディと言っていい。

 何故ならアンディが得意なのは結界魔法と強化魔法であり、アーロンとは一対一では負けるだけで、例えば自分に冒険者二人が加われば、間違いなくアンディが勝つ。

 つまり、アンディは支援系魔法使いなのだ。

 そして元々の頭の良さもある。

 だからこそ、集団戦では無類の強さを発揮する。


 例えばこの状況は、アンディの最も得意とする状況だ。

 ――ただし、自分たちの攻撃が通じることが前提だが。


 『物理結界(フィジックスシールド)』とはドーム状の半透明な壁を出現させる魔法だ。

 その使い方は二つある。

 まずは自分の周囲に張り、身を守る使い方。

 そして相手の周囲に張り、相手を閉じ込める使い方だ。

 この魔法の良い所は、消費魔力が少なく使いどころが広い所だ。

 ちなみにシロネに使っているのは後者だ。

 そしてアンディの得意な魔法の一つである。


 そして『魔力遮断結界マジックシャウトオフシールド』。

 これは結界内部の魔法を遮断する魔法である。

 と言っても無効化するワケでは無いので、完全に遮断する事は出来ない。

 しかし、それでも必要魔力の十倍はかかる。

 それだけでも相手の負担だ。


 その他にも 『思考加速(アクセルシンキング)』『全体筋力上昇オールストレンジアップ』『全体魔力上昇オールマジックパワーアップ』『全体防御上昇(オールガードアップ)』は、自分を含めた周囲の生物を強化する魔法である。

 スキルでもある『思考加速』を一時的に魔法として付与する『思考加速(アクセルシンキング)』。

 それぞれ筋力値、魔力値、防御値が上昇する『全体筋力上昇オールストレンジアップ』『全体魔力上昇オールマジックパワーアップ』『全体防御上昇(オールガードアップ)』。


 これだけの支援を受けた冒険者たちは、これなら負けないとでも思ったのか、口に笑みを浮かべて武器を構える。

 外見は人間の少女だが、中身が魔物だというなら戸惑いは無い。

 さっさと殺して報酬をもらおう、と考えていた。


 きっと『謎の魔物』も、自らの未来を考えて怯えているだろう。


 しかし、シロネは冒険者たちの想像と違い、怯えていなかった。

 それどころか落ち着いている様にすら見える。

 だが、きっと次の瞬間にその余裕も崩れるだろう、とアンディは思った。

 

 そして冒険者たちも次々と、魔法を発動する。


「切り裂け!『真空斬ウィンドブレード』!」

「撃ち抜けろ!『石弾撃ストーンブレット』!」

「焼き尽くせ!『火炎砲フレイムビーム』!」

「貫き通せ!『水竜巻ウォーターストーム』!」


 全ての魔法がシロネへと向かう。

 その瞬間、アンディは『物理結界(フィジックスシールド)』と『魔力遮断結界マジックシャウトオフシールド』を解除した。

 そうでないと、仲間の攻撃すら邪魔してしまうからだ。

 だが解除した時と、魔法が着弾した時の時間差は、わずか一秒にも満たない。

 その中で回避するなど、至難の業だ。

 

 だが、アンディは勘違いしていた。

 シロネは外見だけなら弱そうだが、ステータスは人外も良い所だ。

 その中でも壊れスキルがある。

 それが――


「『破壊の魔王魂』」


 シロネを襲う魔法の全てが、灰のようになって消えた。

 跡形もなく消えたのだ。


「なっ!?」


 アンディは驚愕した。

 それもそうだろう、絶対に効くと考えていたのだから。

 だが、その予想はいとも容易く破壊された。


 その中でシロネだけが、当たり前の様にそこに立っていた。

 そして右手に持っていた青い剣を、横に振る。


「『破壊の一閃』」

 

 その瞬間、そこにいた冒険者全員の命が破壊された。

 身体の至る所から血が噴き出る。

 それはアンディも同じだった。


「ッッグ!」


 体中から血が逆流するのを感じた。

 心臓からは血液がたまり、破裂する。

 体中の細胞が死滅するような感覚。

 痛みを感じる神経すら、破壊されたのかもしれない。


 気付くと自分が冒険者たちにかけていた強化魔法も、いつの間にか破壊されていた。

 一瞬にして、自分たちがやったこと全てが無になったのだ。

 思考が停止する。

 血が足りなくなったのもあるが、きっと五体満足だろうがこんな感じになっただろう。

 こんなスキルなど見た事が無い。

 地面に倒れる。

 どうやらもう死ぬらしい。

 痛みや苦しみも無く死ねるのだけは、幸運だっただろう。


「ふふっ♪これでアキカゲさんに褒めて貰えますね♪」


 シロネが放った言葉を聞く者は、魂となった魔王以外にいなかった。


『種族:リトルマウス アルビノ個体 魔王憑依中 LV200 名前:シロネ

 体力:5000

 魔力:10000

 筋力:10000

 防御:5000

 俊敏:10000(20000)

 耐性:5000

 運:1000

 スキル

 「破壊の魔王魂」「念話LV9」「逃げ足LV9」

 「聞き耳LV9」「隠密LV9」「俊足LV9」

 「高速思考LV9」「無音移動LV9」「遠見LV9」

 「暗視LV9」「魔闘術LV9」「腐蝕の魔力LV9」

 「石化の魔眼LV9」「瞬歩LV9」「聴覚強化LV9」』






 うっは~。

 シロネもシロネで派手にやってるな~。

 まぁ、ナイトみたいに拷問紛いな事にならなくて良かったよ。

 シロネまでそんな事したら、この集団に良心が一人もいなくなっちゃうよ。

 え?僕?

 もちろんガンジーもビックリの聖人ですが(嘘)?

 まぁ、人類侵略とか考えてる時点で、魔王決定だけどね。

 だけど、僕は後悔するつもりは無い。

 魔の森で百万年過ごすなんて受け入れられるワケないし、かといって人間に殺されるつもりなんてない。

 だったら強引にでも自分の居場所を作る。

 そう決めたんだ。


 だから絶対に冒険者は皆殺しだ。

 そうでないと舐められるかもしれない。

 魔王の恐怖を徹底的に叩き込んでやる。

 うん、僕ってマジ独裁者。

 でもそうじゃないと死ぬのは僕だ。

 だったら独裁者でも魔王でもなってやる。


 ……そんじゃ、今度は僕が直々に出ますか。

 第一部隊を殲滅しようか。


「行ってきまーす、スミス」


「……行ってらっしゃい、我が主」


 僕の出陣を、亀のような二足歩行の魔物――スミスが見送った。

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