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シャドウの異世界魔王道  作者: river
冒険者殲滅編
21/28

冒険者ギルドのアーロン

 『魔の森』の近くにある町『モークリー』の冒険者ギルド。

 その二階にある会議室に、三人の人物がいた。


 最近、冒険者が消えるという現象が確認されいる。

 実際十人の冒険者が消えた。

 二、三人なら調子に乗って中心部に行き、死んだだけだと思うだろうが、その中にはベテランだった冒険者もいたので、可能性は低い。

 さらに、見た事のない魔物を見たという情報が相次いでいる。

 という事は、先端部にベテラン冒険者を倒せるほどの魔物がいるという事だ。 

 これは冒険者を管理する冒険者ギルドとしては、見過ごす事の出来ない事態だ。

 もし外にでも出たりしたら、町にも大きな被害が出るかもしれない。


「だったら、これ以上魔物のレベルが上がらぬ中に討伐するべきだ!

 まずは俺がそいつを殺す!」


 そう言ってテーブルを叩いたのは、この町の冒険者ギルド最強の冒険者――アーロン・デバインである。

 アーロンは他の冒険者と比べても好戦的な部類であり、売られてないケンカも買うような人物だ。

 身長は二メートルを超え、筋肉は服がはち切れんばかりである。

 顔にはいくつもの切り傷や火傷があり、気の弱い人は顔を見るだけで失神しそうである。

 だが、そんな事でビビるような奴はこの部屋にいない。


 むしろ挑発するようなセリフすら吐く。


「ハッ!これだから脳筋は嫌いなんですよ!

 討伐するにしても、冒険者全員に緊急クエストを発注してから……」


「アアン?そんなことしたら俺が魔物を殺せないかもしれねーじゃねーか!!!」


「だから嫌いなんですよ脳筋バカ!!!」


 そう言ってアーロンと口論するのはアンディ・ミロだ。

 アーロンとは真逆の魔法タイプ冒険者で、紫のローブに黒い木製の杖を持っている。

 肩まである金髪を弄りながら、アンディは続けて言う。


「全く、脳筋じゃ話になりません!ギルドマスターはどうです?」


 アンディは三人の中でも一番高齢な、ギルドマスターに意見を迫る。

 ギルドマスターとは、引退した冒険者を冒険者ギルド本部がスカウトし、冒険者の管理を任せる、ギルドの代表である。

 権力も三人の中では一番強い。


 ギルドマスターは白髭を撫でながら言った。


「どちらにせよ、早く魔物を倒さなければならないというのは一緒だろう?

 だったら簡単じゃ。

 冒険者の皆に緊急クエストを発注。

 そして魔物を討伐する」


「おい、それじゃあ俺が戦えないかもしれんじゃないか!」


 アーロンが考えているのは、自分が魔物と戦えない可能性である。

 魔物を探すという事は、高確率でチームを分けるだろう。

 そしたら自分のチームじゃないチームが、魔物を倒してしまうかもしれない。

 アーロンはそれが気に食わない。

 自分が、冒険者十人を殺した魔物を倒したという功績を手にするのだ。

 そうすれば次期ギルドマスターは確実に自分だろう。

 アーロンは結局、評判が欲しいのだ。

 しかし、ギルドマスターはそれに気付いているらしい。


「成功確率を上げるためじゃ。

 不服なら参加するな」


 そう言って話を切り上げた。

 ギルドマスターとアンディは立ち上がり、部屋から出た。

 緊急クエストを発注しに行くらしい。


 アーロンは会議室の椅子を蹴り飛ばした。

 バンッ!という音で椅子が壊れた。

 

「チッ!あのクソ野郎どもが!」


 ギルドのメンバーはあまり仲が良くないらしい。

 ギリギリと歯が鳴る。

 こうなったら強引にでも魔物を一人で討伐するしかない。

 

 この日、謎の魔物を討伐する緊急クエストが発注された。


 ちなみに緊急クエストとは、通常のクエストとは違い、冒険者ギルドが直々に出すクエストである。

 このクエストが出た場合、冒険者は強制的にこのクエストを受けさせられるのだ。

 この緊急クエストは、ギルドマスターしか発注できない。

 ギルドマスターの特権の一つである。





 そしてアーロンは、魔の森へ来ていた。

 何をしに来たと言えば、謎の魔物の討伐だ。

 緊急クエストが発注されたため、他の冒険者たちは町へ戻っている。

 つまり、今は自分しか魔の森にいない。

 今から謎の魔物を討伐し、緊急クエストを発注されるほどの魔物を倒した、という名誉を手に入れる。

 そのためならギルドマスターの罰則だろうが怖くない。

 ちなみにこれがアーロンのステータスである。


『種族:人間 LV130 名前:アーロン・デバイン

 体力:300(600)

 魔力:100

 筋力:200(400)

 防御:150(300)

 俊敏:100

 耐性:100

 運:100

 スキル

 「大剣術LV9」「頑丈LV8」「物理耐性LV7」

 「恐怖耐性LV7」「怪力LV6」「強化魔法LV5」

 「隠密LV5」「威圧LV5」「遠見LV5」』


 

 魔法が付与された鎧を全身に纏い、これまた魔法が付与された大剣を背負う姿は、まさに脳筋である。

 といっても、この町最強の称号は伊達ではない。

 周囲を油断なく観察するさまは、まさにベテランである。

 ただし、自分の才能に酔っている節はあるのだが。

 そんなアーロンは、謎の魔物を探して歩いていた。

 時々邪魔をする魔物を倒しながら歩いていると、突然ぱたりと魔物が見えなくなった。


 アーロンは大剣を抜く。

 もともと鋭い目はさらに鋭くなり、『筋力強化(ストレンジアップ)』を発動させる。

 

「よぉ、テメェが謎の魔物か?」


 アーロンの視線の先に、一匹の魔物がいた。

 

 三メートルほどの体型に、緑色の肌。

 それが黒い鎧を纏い、二メートル近くある銀色の斧を持っている。

 ゴブリンである。

 ただし、体型が全く違う。

 普通のゴブリンは一メートルほどだ。

 三メートルのゴブリンなど聞いたことが無い。


 そしてなんと、そのゴブリンは喋ったのだ。

 明らかに知性がある証拠だ。


「いヤ、それは我ではなイ。

 むしろあのお方と同列など、おこがましくもあル」


 そう言って巨大な斧を構える。

 まるで斧など羽であると言うかのように、軽々とだ。

 その様子から、この魔物は自分よりも力が強いと推測できる。

 思わず笑みがこぼれる。

 これだけの魔物を討伐できれば、自分の評判はうなぎ登りだろう。


 しかし、さっきの言葉に疑問が残る。

 『あのお方』とは誰の事だ?

 こいつより強い奴がいるのか?

 もしそうだったら、自分がもう一匹も殺してやろう。

 そうすれば解決だ。


「ま、さっさと死んでくれや!」


 そう言って駆け出す。

 すでに『威圧』と『隠密』を発動してある。

 そこで大剣を振り下ろす。

 普通の魔物ならそれで死んでいただろう。

 もちろん、普通の魔物だったらの話だ。

 このゴブリンが普通なわけが無い。


 一瞬で大剣を避け、斧で反撃する。

 すさまじいスピードである。

 しかし、反応できないスピードではない。

 背中を逸らして避ける。

 そしてバックステップする。


 だが、ゴブリンがさらに踏み込む。

 斧を軽々と振り回し、木々をぶった切る様はまさに破壊者である。


 大剣で防御するのは愚策だろう。

 防御した所で、力押しされて吹き飛ばされる。

 倒れた時に潰されるのだ。


 だったら避けるしかない。

 そして隙が出来た所で急所を狙う。

 勝利の方程式はできた。

 あとは期を待つだけだろう。


 ゴブリンは自分の手のひらを見て、何か考えた後、独り言を言った。


「……なるほド、少し本気を出すカ」


 次の瞬間、ゴブリンが一気に迫ってきた。

 それもさっきの比ではない。

 少なくともさっきの二倍のスピードだ。

 ひたすらに避けるが、いきなりスピードが上がったことで、アーロンは混乱する。

 しかし、まだスピードは上がる。

 

「なぁっ!」


 何か所も切り傷ができ、どんどん出血する。

 めまいがしてきた。

 血が足りなくなったのだ。


「ッッッガァァァ!!!」


 このままでは負ける。

 そのことを察したアーロンは、一か八かの特攻を仕掛ける。

 もちろん、そんな攻撃が通じるわけが無い。

 大剣と鎧ごと切られ、アーロンの胴体が真っ二つになった。

 すっぱりと切られたそれは、うめき声をあげて崩れていった。


 さっきまで生きていた人間を死体に変えたゴブリンは、斧に着いた血を気にしながらつぶやいた。


「フム、一割のパワーでこれカ。

 とりあえず我が主に報告しなけれバ。

 この死体も持っていくカ」


 そう言って死体を担いだまま、ゴブリンは森の奥に消えた。





「あのクソ脳筋が!」

 

 アンディはアーロンが寝ているはずの部屋で叫んだ。

 

 緊急クエストが発注された夜、会議を開くためにアーロンの住んでいる宿屋に来たアンディは、魔力感知でアーロンがいない事に気付いた。

 急いでアーロンの部屋に来たアンディが見たのは、無人の部屋だった。

 どこかに出かけているのかとも思ったが、そんな可能性は無いだろう。

 間違いない、アーロンは一人で魔物を討伐しに行ったのだ。

 手柄はなんでも自分が独り占めにするような奴だ。

 きっと自分が魔物を討伐すれば、自分は英雄になるとでも思ったのだろう。

 

 なんて馬鹿な奴だ。

 アンディはアーロンをそう評価した。

 もし自分が死んだらどうする。

 貴重な戦力を無駄に消費してしまったのだ。

 しかも、この町最強であるアーロンが殺されたと知られれば、他の冒険者の士気に関わるだろう。

 そうなったら勝てる勝負も勝てない。

 勝ったら良いなんてのはただの言い訳だ。

 より確実に、安全に倒してこそ勝利なのだ。

 それがアンディの持論である。

 

 それにしても不味い。

 もし明日までに帰らなかったら、高確率で死んでいるだろう。

 この町最強の冒険者が死んだのだ。

 戦力が削られた。

 と言っても、いまさら緊急クエストを撤回できるわけが無い。

 このまま魔の森に行くしかないのだ。


「……あぁくそっ、こうなったら作戦を変更しなければ!」


 そう言ってアンディは部屋を出た。

 ……そこに、『魔力感知』に引っかからないほどの隠密スキルを持っている者が潜んでいるとも知らずに。


「……もうそろそろアキカゲさんの所に戻りましょうか?」


『そうだね~、アハハ♪面白くなってきたね!』

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