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シャドウの異世界魔王道  作者: river
冒険者殲滅編
20/28

冒険者たち

 この世界には冒険者という職業が存在している。

 その仕事内容は至極単純、魔物を倒して市民を守ることだ。

 つまり、魔物退治の専門家とも言える。


 魔物の被害は全国の悩みであり、魔物によって毎日のように、人の命が消える。

 そのため、魔物を倒すことを専門としている冒険者は、市民から尊敬と感謝を受ける一方、最も死亡確率の高い職業としても有名だ。

 しかしそれでも、冒険者になる人は後を絶たない。

 

 例えば金のために。

 魔物の素材は高値で売れる。

 例えば牙や爪は武器になるため、武器屋などで買い取ってくれる。

 さらに依頼料でガッポガッポである。

 そのような冒険者は、大抵が身体的な衰えを感じる五十歳で、冒険者を引退する。

 そして若い時に貯めた金で、余生を謳歌するのだ。

 冒険者の中では、このタイプが半分である。


 例えば復讐のために。

 さっきも言ったように、この世界では毎日魔物の犠牲者が出る。

 つまり、家族や友人を殺される者も、毎日出るわけだ。

 過去は振り返らずに、死んだ者達の分まで生きようと考えるものだっている。

 だが大半は、復讐のために冒険者になるものだ。

 そのような冒険者は、大半が死ぬまで戦う。

 魔物を深追いしすぎて、もしくは自分の実力よりも強い魔物に挑んで、老いでそこら辺の魔物に殺されるまで。

 死に方は様々だが、結局のところ復讐のために冒険者になった者は、早死にするというのが常識だった。


 例えば夢のために。

 子供のころに冒険者に命を救われた、という者がいる。

 その冒険者に近づくために、人は剣を握るのだ。

 そのような冒険者は、大抵が冒険者であることに誇りを持つ。

 だからこそ、冒険者の事を悪く言う者とは、そりが合わない。


 



 そのような冒険者たちの中で、冒険者チームである三人は『魔の森』に来ていた。

 冒険者――トム、ケビン、ジェームズは、魔物の討伐のために辺りを探索していた。

 

 この『魔の森』は多様な魔物が生息しており、その魔物はたまに森から出て人を襲う。

 だからこそ、冒険者からすれば戦場であり、儲け場ともいえる。

 何故なら、この森はさっきも言った通り、魔物が非常に多い。

 その理由はいまだによく知られていないが、そんな事は自分たちに関係ない。

 魔物が多いという事は、魔物から手に入る素材も多いという事。

 たまに希少な種族を倒した時は、銀貨すら貰えたほどだ。

 ゆえにこの森では、冒険者の出入りが非常に多い。

 

 ただし、注意が必要だ。

 この森の端はまだレベルが低い魔物しかいないが、中心部に近づくにつれて魔物のレベルも上がってくる。

 一か月前に調子に乗り、中心部に向かった新米冒険者が、ついに帰ってくる事が無かったのは、有名な話だ。

 もちろん、それは新米冒険者を惜しむためでは無い。

 むしろ、そんな馬鹿な事をしでかした、新米冒険者を嘲るためのものだ。

 一種の笑い話である。

 不謹慎に思われるかもしれないが、それが冒険者たちの実態なのだ。

 死んだ奴が悪い。

 恥など捨てて生き残れ。

 目的のためなら手段を選ぶな。

 そして自分の身の丈を知れ。

 そうでない冒険者ほど、早く死ぬだけなのだから。

 

 そう意味で言えば、三人はベテランとは言えないが、中堅には位置する冒険者だった。

 一流ではないが、二流のトップクラス。

 そんな自分たちに満足していたし、これ以上強くなる気もなかった。

 三人は、金のための冒険者が一番近い。

 魔物を三人がかりで安全に、確実に仕留める。

 それの報酬を三人で山分けし、酒と武器と女に金を使う。

 そして明日の戦いに備え、眠るのだ。


「おい、今日は日も暮れてきた。帰るぞ」

「へ~い」

「おう!」


 三人は、もうそろそろ暗くなる空を見て、帰ることにした。

 見通しの悪い夜の森では、常に危険が付きまとう。

 普段は昼には帰るのだが、魔物を狩ることに集中していたので、今はもう夕方だ。

 すぐに帰らなければ、あっという間に暗くなるだろう。

 

 ちなみに帰ることを提案したのが、三人の中でリーダー格に位置するトム。

 百九十センチの身長とごつごつの筋肉は、いかにも冒険者と言った感じである。

 レザーアーマーを着こなし、放電する魔物の角を埋め込んだ鉄製の剣はうっすらと光を帯びている。

 魔力を通せば、一瞬で雷が剣を包むだろう。

 

 そして二番目に喋った気の軽そうな男はケビン。

 百八十センチで細マッチョに分類される身体と茶髪は、冒険者よりもホストの方が向いてそうである。

 実際、ケビンの村では女の子に人気だった。

 性格はチャラチャラしているが、実力はそこらの冒険者よりも上だ。

 トムと同じくレザーアーマーを着ており、発火する魔物の爪を埋め込んだ細剣はトムの武器と同じくうっすらと光を帯びていた。


 最後に喋った男はジェームズ。

 身長百七十センチとこの世界の基準では小柄で、こいつだけはローブに木製の杖を持っている。

 ただし、杖の先端には紫色に光る石が埋め込まれており、ローブにも様々な光を放つ石が装飾されている。

 間違いなく魔法使いだろう。


 その姿から推測すると、トムとケビンが前衛、ジェームズが後衛で戦うのだろう。

 ちなみにステータスを見てみる。


『種族:人間 LV85 名前:トム・アラス

 体力:250

 魔力:38

 筋力:170

 防御:100

 俊敏:60

 耐性:70

 運:50

 スキル

 「集中LV6」「我慢LV5」「物理耐性LV4」

 「火魔法耐性LV4」「剣術LV4」』


『種族:人間 LV80 名前:ケビン・バイヨル

 体力:100

 魔力:70

 筋力:110

 防御:100

 俊敏:180(360)

 耐性:90

 運:90

 スキル

 「魅了LV7」「俊足LV7」「魔法耐性LV5」

 「仮眠LV3」「演技LV2」』


『種族:人間 LV80 名前:ジェームズ・クロー

 体力:80

 魔力:160(320)

 筋力:50

 防御:140

 俊敏:70

 耐性:70

 運:100

 スキル

 「魔力増加LV7」「火魔法LV7」「恐怖耐性LV4」

 「魔力感知LV3」「平常心LV2」』


 三人は夜になる前に町へ戻るため、来た道を引き返していた。

 しかし、ある違和感に気付く。

 魔物がいないのだ。

 いや、魔物だけではない、普通の動物や虫すら見当たらない。

 まるで何かに怯えて隠れているかのように。

 そのことで一つ思い出した。

 

 昨日見たあの落雷だ。

 雲が森を一瞬で包み込み、影が辺りを染め上げた。

 そして次の瞬間、あらゆる所から雷が発生し、森の中心部に向かって一斉に落ちたのだ。

 何百もの雷が一度に落ちる様は、この世の終わりとすら思えてしまう程だった。

 轟音が鳴り響き、爆風が身体を襲った。

 三人はその時、素材の売却で町にいたため無事だったが、森にいた冒険者のほとんどが意識を失ったらしい。

 それもそうだ、自分たちももう少し近くにいれば、気絶していただろう。

 とにかく凄まじかった。


 あの落雷の原因はまだわかっていない。

 一応ギルドの方で調査中という事だが、雷が落ちたところが中心部であったこともあり、多分調査は進まないだろう。

 

 そんな中、ある一つの噂が冒険者、いや町中で広がっていた。

 あの雷は中心部の魔物がやったのでは無いか?という噂である。

 その可能性もないわけでは無い。

 しかし、そんな力を持つ魔物だったら、その魔物にかかれば町は一瞬で壊滅してしまうだろう。

 それが町の人々にしてみれば恐怖だった。

 それもそうだろう、気分次第で自分たちを全滅できる相手が、町に面している森に潜んでいるのである。

 不安で仕方ないのだろう。

 それは冒険者たちも同じだった。

 だが、町の人よりは落ち着いていた。

 その理由は、中心部の魔物はなぜか外に出ないからである。

 いろいろと噂はあるが、最も有名なのは『魔王を殺すため』だ。

 魔王を殺すことで自分が魔王になり、生物の頂点になるらしい。

 と言っても、あくまでも噂である。

 魔王という存在は確かにいるが、あんな森にいるとは思えない。

 本気で信じているものがいたら、皆に馬鹿にされるだけだろう。


 とにかく、昨日の雷が原因で巣にでも潜っているのだろうか。

 きっとそんな感じであろう。

 だとしたら気にする事では無かったかもしれない。

 しかし妙だ。

 なんだか胸騒ぎがする。

 それは、所謂長年の勘というやつであった。


 その時、ガサッという音がした。

 草を踏んだ音である。

 三人が一瞬で構える。

 何百回も繰り返した、綺麗な動きである。

 トム、ケビンが前に着き、ジェームズが後ろに下がる。

 

「おわっ!いきなり何!?」


 それは男の声であった。

 少し男にしては高めだが、それでも男の声だ。

 黒いローブコートを着ており、フードで顔を隠している。

 そのため顔はよく見えない。

 体型は少し小柄で、背中に一本の剣を帯刀している。

 

 ――怪しい。


 それが三人が抱いた、黒い男の印象だった。

 それもそうかもしれない。

 この町の冒険者は全員顔は知っているし、そもそもこんな軽装で魔物を討伐できるわけが無い。

 一発でも食らったらアウトだろう。

 つまり冒険者の可能性は薄い。


 だからと言って、冒険者以外がここにいるわけが無い。

 ここは冒険者以外の出入りを禁止しているのだ。

 何か特別なことがあっても、冒険者の付き添いが無ければ一般人は入れない。


 だったら答えは一つだ。

 こいつはきっと、変身系のスキルを持つ魔物だろう。

 一応確認しておく。

 トムは黒い男に見えないように、手でサインを送る。


『注意』


 ケビンとジェームズはそのサインを見て、さらに一歩下がる。

 そしてトムが口を開く。


「おい、貴様!何者だ!」


「へ?いや~何者って言っても……冒険者ですが?」


「だったら冒険者カードを見せてくれ」


「あ~うん、えっと……無くしちゃいました♪てへぺろ?」

 

 ちなみに冒険者カードとは、冒険者になった時に無料で配られる、自分のステータスを見るためのカードである。

 自分の身分を証明したりするのにも使ったりする。

 無くしたと言っていたが、あの間からすると絶対に嘘だ。

 より確信が深まる。


「だったら俺のを貸してやる。さぁ、お前のステータスを見せろ!」


 ちなみに魔物のステータスも、冒険者カードに触れることで見ることが出来る。

 そして種族が人間以外なら、一気に切りかかる。

 その時に備えて、剣を抜いておく。

 黒い男は少し考えた後、脱力して溜息を吐いた。


「はぁ、流石に無理があったかなぁ……しょうがない――

 ――めんどくさいから殺す」


 三人は黒い男からさらに距離をとる。


「どーせいきなり人間が来たから、ちょっと声かけようとしただけだし、せっかく人間の姿になったんだからちょっとは喋れると思っただけだし、スキルも欲しいし」


 そう言って黒い男は剣を抜く。

 その刀身は薄い紅色であり、透き通っている。

 まるで血のようなその剣は、持ち主の魔力に応じて紅く光る。

 その剣を見て、さらに三人は警戒を強める。

 

 黒い男が一歩踏み出す。

 その瞬間、三人の視界から男が消えた。

 ――消えた!?

 三人は背中を合わせて、死角を無くす。

 透明化のスキルだろうか、消えた男がどこから攻撃しても防御できるようにする。

 ――どこにいる!

 辺りを見渡すが、やはり見つからない。

 その時、黒い風が吹いた。

 その風は隣にいるケビンの腕を掴み、力任せに引き抜いた。

 ブチブチッという音が聞こえる。

 ケビンは引き千切られた両腕を見て、数秒後に現実を理解した。


「ッッガァァァァアアアアアア!!!」


 ケビンが苦悶の声を上げる。

 そして痛みのあまり逃げようとしたのか、走り出した。

 しかしそんな事を黒い男が許すわけが無い。

 また黒い風が通る。

 ケビンの上半身と下半身が綺麗に分かれ、切られた内臓から血と消化液が噴き出す。

 下半身はそのまま二、三歩した後膝から倒れ、上半身は恐怖の表情のまま上空を飛び、次の瞬間ドシャと地面に落ちた。


「ケビン!!!クソッよくもケビンを!!!『火球(ファイアボール)』!」


 ジェームズがすでに息絶えたケビンに向かって、驚きの声を上げる。

 そしてケビンの仇を打とうとしたのか、それとも自分が生き残るためなのかは知らないが、下級火魔法『火球(ファイアボール)』を放った。

 しかし、下級魔法が黒い男に通じるわけが無い。

 男がわざと魔法に当たる。

 それは別に自分の強さを誇示するためでは無い。

 避けることすら馬鹿らしくなる程の、弱い攻撃だっただけだ。

 火は男の身体に当たった瞬間、ボンと音を立てて消えた。


 二人は驚愕した。

 いくら最下級魔法でも、全くダメージを受けないなんて思わなかった。

 だが、相手は自分たちを見逃す気はなさそうだ。

 だったら精一杯抵抗してやろう。


「だったら!『火竜巻(ファイアストーム)』!」


 男の足元から炎が発生し、竜巻を起こす。

 火の粉が辺りを舞う。

 これなら少しはダメージを負うだろう。

 その間に逃げようとした。

 ジェームズが背を向ける。


「ん~熱いなぁー、君にしては結構できたんじゃないの?」


 ジェームズの動きが固まる。

 それもそうだろう、自分の最大級の魔法が全く効かないのだから。


「なっ!なんで!?」


 ジェームズが一歩下がる。

 まるで今見ている現実を見たくないかのように。

 だが現実は変わらない。


「そりゃ君の魔法なんて、弱すぎて気持ちいいくらいだよ。僕が手本を見せてあげるよ、『蒼炎竜巻ブルーファイアストーム』」


 その瞬間、ジェームズの足元に火が発生する。

 しかし、その威力はジェームズの比ではない。

 青い炎が竜巻になり、ジェームズは悲鳴すら焼かれるような炎に呑まれ、灰も残さず死んだ。

 

 あとはトムだけだ。


「ハハハ、ハハハハハ!!!」


 恐怖で気が触れたらしい。

 それでも剣を持って切りかかってくる。

 剣に魔力を流して電気を発生させ、『集中』で男を狙う。

 そして一気に踏み込む。


 男も剣を抜き、剣はぶつかり合った。

 いや、ぶつかったというより、トムの剣が一方的に切られたという方が正しい。

 一切の抵抗すらなく、スパっと剣が切れた。

 そしてそのままトムを切る。

 それまた抵抗できず、トムの首が胴体を離れた。

 トムが最後に見たのは、紅く光る剣だった。

次回は五月三日予定です。

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