取り戻す
また、夢を見た。
多分、今回でこの夢は終わるだろう。
なんとなくそんな気がした。
僕は雨の中、公園にいた。
でもニージイが見つからなかった。
おかしいと思った。
だってニージイはここに住んでるんだから。
なんだか嫌な予感がした。
上手く言えないけど胸騒ぎがする。
落ち着かない。
その時、五人の子供が見えた。
僕をイジメる集団の中でも、主犯格に位置する奴らだ。
どうやら僕には気づいていないらしい
そして奴らは――
――血で濡れたバットを持っていた。
「お、おい、ホントに良かったのかよ……」
「あ?イイも何もゴキブリ退治みたいなモンじゃねえか。
公園でゴキブリ退治して何が悪いんだよ」
その声を聴いた瞬間、僕は走った。
あいつらが来た方向へ。
そこには頭から血を流して倒れているニージイがいた。
地面が崩れる音がした。
なんだこれは。
なにが起こってるんだ?
ふらふらとニージイへ寄る。
その時気づいた。
心臓が止まっていた。
脈がない。
肌が青白くなっている。
死んでいる。
紛れも無く、疑いようが無く、死んでいる。
体の芯から熱い物が溢れだす。
そして、僕の中の何かが切れた。
五人の後を追ってバットを強引に奪った。
そこからは記憶が断片的だ。
赤い血を見た。
子供が泣き叫ぶ顔を見た。
子供の死体を見た。
骨が折れる音を聞いた。
子供が泣き叫ぶ声を聞いた。
地面に倒れる音を聞いた。
頭を何度も何度も打った。
骨を砕いた。
子供が死ぬことを感じた。
いったい何時間経ったのだろう。
いつの間にか警察に取り押さえられていた。
そして少年院に入れられた。
そこで聞いた話によると、五人中四人は死亡したらしい。
そして生き残った一人は、病院で治療を受けているという。
その連絡を聞いて、僕は悔しかった。
ひとつはニージイを守れなかった悔しさ。
ふたつはニージイを殺した奴らを殺しきれなかった悔しさ。
場面が飛んだ。
ここは……ああ、僕が殺されたところだ。
少年院を出た後、過去を隠して高校生活していた時だ。
『お、お前のせいでっ!俺はっ!俺はっ!こんな事に!』
バットで僕を打っている少年を僕は知っている。
僕が殺し損ねた生き残りだ。
所々が包帯で巻かれてるけど、ソバカスで分かった。
なるほどね。
仲間と自分の身体の復讐ってところか。
そのまま僕は死んだ。
きっと僕を殺した奴は、警察に逮捕されてるだろうし、そうでなくても僕は死んだんだ。
死んだ僕に出来ることなんてない。
……でも、ニージイを守れなかった事だけが心残りだった。
今でも同じことが起こってる。
シロネが魔王に奪われた。
また守れないのか。
また奪われるのか。
そんな事があって良い筈がない。
今度こそ大切な人を守る。
今度こそ守りきる。
そのためには、魔王だって殺してやる。
私は今、魔王の部屋にいた。
「ふ~ん♪ふ~ん♪ふん♪」
その家は魔王の家と呼ぶには、あまりに質素だった。
……というか、ただの木造の一軒家だった。
なんで魔王がこんな所に住んでるの?
もっと良い所に住んでるかと思った。
そして肝心の魔王は、水晶玉を見ていた。
「お~!アキ君レベル三百いったじゃん!すご~い!」
どうやらアキカゲさんを監視しているらしい。
その顔は本当にうれしそうだ。
足をバタバタしてその水晶を、いや、アキカゲさんに見入っている。
ちなみに私は鉄製(?)の檻に入れられてるだけで、危害はあまりない。
どうやら魔王は私を殺したりするつもりは無いらしい。
ただ、アキカゲさんをおびき寄せるのに使われている。
つまりは餌のようなものかもしれない。
そう思うと、また自分の弱さが情けなくなってきた。
またアキカゲさんのお荷物になってしまっている。
本当に情けない。
「本当にそう思ってるの?」
「ふぁい!」
どうやら自然と口に出していたらしい。
驚いてまた変な声を出してしまった。
というか、魔王を見た事なんてないから緊張する。
怒らせたら絶対に殺される。
きっと私なんて一捻りだろう。
「お~い?聞いてる~?」
「はいぃぃぃ!!!」
ヤバイ!
怒らせてしまった!
殺される!
命だけはお助け~!
「別に私はむやみに殺したりしないよ~?」
そう言って私の顔を覗き込む。
その顔は好奇心でいっぱいだった。
この白い毛が珍しいのかな?
「ねぇねぇ、君ってアキ君と一緒にいたんでしょ?」
どうやら魔王にとって、白い毛はあまり興味がないらしい。
というかアキカゲさんにしか興味がなさそうだ。
どうしてアキカゲさんを狙っているのだろう?
やっぱりよくわからない。
「……はい、一緒にいました」
「え~、いいなぁ~」
本当にうらやましそうだ。
どう見たって不満顔である。
「だったらさぁ、取引しようよ」
「取引?」
取引と言っても、私が魔王に差し出すものなんてない。
「いやいや、ちゃんとあるでしょ?」
そんなこと言われたって……。
「つまり、君が欲しいのは強さ。私が欲しいのはアキカゲ君と一緒にいる時間。つまりさ、――」
それは、まさしく悪魔との契約だった。
次回は四月二十三日予定です。




