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ロマンの可能性

ばなな事件(笑)の次の日の昼過ぎ、僕はついに行動を起こす事にした。


何かと言えば砂漠で安全に寝る方法の確立だ。コンビニのトイレで寝るとか、そんなのはもう限界。

トイレを寝やすく改造する事は許されないし行動に移すしかない。


砂漠で安全に眠るヒントは、此処の生き物達が教えてくれた。

要は砂を使って潜めばいいんだ。ただ、どうやって実行するかは現在検討中である。

なので。


 「ガイアちゃんー」

 「はいはいっとー」


呼ばれて飛び出ないガイアちゃん先生だ。残念な事にコンビニからのテレパシーなので飛び出しては来ない。


 「どうかしたー?」

 「今日は砂漠で眠る為の方法を相談しようと思いまして」


 「砂漠で眠るのー? がんばるねー」

 「その為に知恵を貸して頂きたく思いまする」


 「まする?」

 「でね、どうすれば良いと思うかな? とりあえず砂に隠れる計画なんだけどさ」


 「レンタルマジックを使えば良いんじゃないかな?」

 「マジックでいけるんですか?」


 「もー、何回も言ったじゃない。マジックは自分の触れてる物の強化と変化だってさー。だから、砂を変化させて補強すれば寝床位は作れるんじゃないかな?」

 「ちょっと待って、それって本当ですか?」


 「ガイアちゃんは、生まれてこの方嘘をついた事はありません!」


ガイアちゃんは生まれたばかりだから、その言葉がガチで使えるんだな。たいていは嘘つきの自己紹介になるんだけど。


しかし、レンタルマジックで寝床作れるなら、今まで僕は何でトイレで寝てたんだ?

だけど過去を後悔してもしょうがない、今の事を考えよう。



早速実行という事で、レンタルマジックの基本は媒介とイメージだ。

媒介は砂を使うから問題無いとして、イメージの方はテントで良いかな。


でもさ、変化も出来るって言われてたけど何の事かちょっと理解出来てなかったんだよね。

触ってる物を曲げたり固めたり変形させる事が出来るって事だったのか。自分の頭の硬さを実感する異世界の日々だ。


まあ、とりあえずやってみよう。詠唱はイメージの補強になるらしいから一応やろう。それでは両手を地面に付けて準備完了。


 「安心安全快適空間、サント!」


詠唱じゃなくて願いを言っただけだな、これは。サントはサンドとテントを混ぜただけである。でも、そんな適当さとは関係なくマジックの効果が現れる。


両手の下の砂が隆起してあっという間にテントの姿になる。

・・・・・・あっさり出来た、何か理不尽な物を感じる。

今までのトイレ生活を思うとやりきれない。もっと早く行動すればよかった。


 「ね、簡単でしょう? レシートによると、サント”いつでもどこでもテント生活”で500pのお値段です」

 「500pですか、安いといえば安いけど毎日使うと馬鹿にならないかな、あと確かに簡単に作れました」


本当に簡単だったよ。ま、とりあえずテントの具合を調べよう。


 「ふむ、砂が薄い布みたいになってるのか」


テントの布が砂で構成させている感じだ、触った感触は砂だけど布みたいな弾力と張りが有る。さすがはマジック、不思議な現象だ。


 「これって、持続時間どの位なんですかね?」

 「変化は性質を変えちゃうから込めたポイントしだいだね。ゲーム的に言うと込めたポイントがHPになる感じで、時間経過や何かしらの衝撃でHPが0になったら元に戻っちゃうの。その代わりHPが1でも残ってるなら傷つかないよ」


 「それは便利そうですね。時間の経過による消費ってどのくらいですか?」

 「マニュアルだと一分で1p減って行くらしいよ」


 「それですと、これは500pだから500分ですか。時間にすると8時間20分、あつらえた様に寝る時間がカバー出来ますね」

 「うん、よかったね」


確かによかった、こんな事ならレンタルマジックを聞いた最初に試すべきだった。あの時は魔法が使えるって事で浮かれて大失敗しちゃったからなぁ。


 「では、ちょっと中に入って具合を確かめます」

 「分かったよー。では、これにてガイアちゃんは去るのであった。ばいばいー」


ばいばーいと心の中で思っておく。


さて、見た感じ良い具合に僕のイメージ通りのテントになったけど中はどうなのかな。と、言う事でテント内に入る。


ふむ、テントの中は明るい。光が砂の布を通って入って来てるのか。

ちょっと横になってみよう。


・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。


熱い!!!

砂の布越しに光が入って来るって日光じゃないか! 直射日光よりはマシだけど、ここで寝たら死ぬわ!


どうしようか。テントを日陰に設置すればいけそうなんだけど。テントが入る位の日陰って見かけた事が無いな、大抵小さい凹みか緩やかな坂の砂山しかないから影が無いんだ。


という事は、このテントは使えないな。

だが、前向きに行こう。テントが日陰に入らないなら、日陰を作ればいいんだ。そこから導かれる答えは、地面を掘ればいいんだ。

そういえば地面の中は涼しいと聞いた事あるな。


と言う事で、次の寝床は穴だ。なんかこう書くと凄く原始的だね。

さてと、穴の寝床をシンプルにイメージするとなると、これだな。

今回は地面では無く、影を作ってる小山に両手をつけ唱える。


 「カプセル砂ホテル!」


詠唱はイメージの強化だから逆に言うとイメージ出来るなら省略しちゃっても良いじゃないかと思い省略。


その推測通りに何事も無くレンタルマジックが発動。

ふと思ったけど、これレンタルじゃなくてクリエイトマジックだよね? まあいいけど。


両手をつけた砂山の横にカプセルホテルみたいな穴が開いた。

よし成功だ。テントと違って中は暗い、日光が中まで入ってきてない証拠だ。


これは、良いんじゃないか? さっそく意気揚々と中に入る。

入って直ぐに砂の床に驚愕する、布団並みに柔らかい! なんだこれ感動ものだよ!


と、そこでちょっとした違和感に気づいた。


 「あれ、ガイアちゃんいる?」


いつもならポイントを使うと何かしらガイアちゃんから反応が有るのにそれが無い。どうしたんだろうか?


 「はいはいー、呼んだー?」


と思ったら反応があった。


 「呼んだよー。いつもなら新しい神能使うとすぐ報告が有るのに、今回は無いからどうしちゃったのかな?と」

 「それは、乙女の秘密だよ。それで今回のカプセル砂ホテル”ここはみんなの憩いの場”なんでみんな? は、お値段は1000pです。という感じでおわりー」


そういうとすぐに通信がきれた、ガイアちゃんコンビニの中で何してるんだ?


しかし、そのまんまな名前と一言コメントは良いとして1000pかぁ・・・・・・。

試しに寝っ転がる。おお、ふわふわだ。ふっわふっわだ・・・・・・駄目だ、この誘惑には勝てそうにない。

毎日1000pを生贄にリリースする事でこの寝心地を召喚出来るなら躊躇しない。


そのまま横になり、室内を吟味する。大きさは本当にカプセルホテルと一緒っぽいな、TVで見た事しかないから大体なんだけど。


高さは寝ながら手を伸ばすと天井に届く程度、横幅と縦幅は布団と同じ大きさだ。


良い感じ良い感じだ、これはエクセレントだ。安眠出来るぞ。


やっとこれで安全に・・・・・・安全?

しまった。砂漠で安全に寝る方法を探すのであって安眠する方法じゃなかった。これじゃ入り口から寝込みを襲われたら詰んでしまう。


そっちの対策をせねば。

そう思い体を起こしてカプセル砂ホテルの入り口を見たらドアみたいなのが有った。

触ってみると硬い、そして動く。試しに閉めてみるとぴったりと閉まりドアの真ん中には長方形の穴が空いている。

空気穴としも外を窺うにも丁度良さそうな穴だ。


あれ? これはまさにパーフェクトな物件じゃないか?


こうして僕はついにトイレから卒業したのである。

やったぜ!




*+* *+*




カプセル砂ホテルの成功から少し日にちが経ち。

今日も今日とて夜の砂漠を歩く僕、ついに異世界の砂漠に落ちてから五日目を迎えてしまった。


 「この砂漠は何処まで続いてるのかな」

 「何処までだろうねぇー」


そして今日も意味の無い会話を重ねる、ちなみに今のセリフはたぶん100回は越えている、一日20回以上は言っている計算だ。

そんなアホらしい事を延々と呟きながら夜のひんやりした空気を楽しむ。


寝床をカプセル砂ホテルにしてからは、かなり体調がいい。寝ておきたら足の疲労が取れてるくらいに快調だ。本当にホテルみたいな環境で凄く嬉しい、毛布代わりに使ってるバスタオルもホテル仕様なのでより一層そう感じる。


 「君と見る月は綺麗ですね」

 「毎日一緒に見てるから、どうなのかなー? 一人で見た事無いから分かんないや」


なんとなく気取ってみたかったから言ってみた。

流石に今夜は月が綺麗ですねとストレートには言い辛く。ちょっと変えてみたけど、当然の如く伝わらなかった。思いつきで言ったから伝わっても困ったんだけどね。


 「でも、今夜の月は綺麗だね」


そうガイアちゃんが呟いたので一瞬噴出しそうになってしまった。知っていて言ったのか知らずに素なのか分からない、だが言われたからには返さないとね。


 「死んでもいい」


しまった男女逆だ。ああでも別に逆でも良いか、だってこのやり取りに意味なんて無いから。


 「ええええ! 何で? どうして死んでもいいの?」

 「ごめん。これはなんと言うか様相美なんだ。”月が綺麗”と言われたら”死んでもいいわ”と答える文化が日本にはあるんだよ」


 「へー、そうなんだ変な文化だね?」

 「ああ、もう古典だからね」


ちなみに月が綺麗ですねと死んでもいいわは別々の人の関係無い話で本来は1セットじゃないらしい。


そんな何時も通りどうでもいい雑談を講じるいつもの夜道・・・・・・砂漠だから道無いな。まあ、どうでもいいや。



 「今夜のおやつは、なんだろなーなんだろなー」


うきうきなガイアちゃんの声が聞こえて来る。

もうそろそろ休憩の時間か、今日は何にしようか。


 「あれ?」

 「どうかした?」


 「しーーー」


なんだ? 静かにすれば良いのかな。


 「左の大きい砂山におっきいトカゲが居るよ」


いつもより、さらに小さい声でそう囁いてきた。

トカゲ? そう思い言われた方をよく見ると、月明かりと星々に照らされた美しいトカゲが居る。

首を長く上に伸ばしてるが月光浴でもしているのだろうか?


 「見つけた、この砂漠では珍しく小さいな1m位か?」


冷静に考えると1mのトカゲってクソでかいな。最初に見たのが大型犬並の大サソリだったから感覚がマヒしている。


 「どうするの、コアちゃん?」

 「どうするって」


どうしようか、先手必勝なんだけど。いざ先に見つけちゃうと迷うな。


 「戦うか逃げるかだよ、他に何か有るの?」


それはそうだ、分かっている。ならば何故迷う、それは戦う理由が無いからだ。今までは自衛だったけど、今回は特に戦う理由が無い。


だが本当に無いのか? いやある。だが凄い小さい理由だ。風極ふうきの練習台にしたいという、そんな理由だ。


 「コアちゃん?」


ガイアちゃんが急かしている。

それはそうだ、何時向こうがこちらに気づくか分からない。


だから、考える。


風極ふうきの練習は小さい事なのか?

この世界の僕の生命線である風極ふうきを特訓する事は小さい事なのか?

そんな筈は無い、これが使えるか使えないかで僕の生存率が変わる筈だ。


 「コアちゃん、気づかれちゃうよ?」

 「ああ、ごめん。でも大丈夫、理論武装は出来た」


 「理論武装?」

 「ああ、それが無いと戦えない悲しい現代日本人なんだ僕はね」


覚悟は決めた。大トカゲ君、僕の為に死んでくれ。


 「あの大トカゲを狩る」

 「分かったよ、ふぁいとーだよ」


トラ・トラ・トラだ!

と言っても。危険を冒す気は無い。現在目視で200m位は離れている。まずはここからどのくらい風極ふうきが効くかを試す。


深呼吸をして呼吸を整える。


そんな自分がおかしくて「ふっ」っと、少し笑ってしまった。

戦闘する前に一々深呼吸するなんて、なんというか覚悟が無いな。

でも、しょうがないだろ? 僕は普通の高校生なんだ。

だけど、ここは異世界でモンスターが居る世界。段々この世界に慣れて行こう、焦る必要は無い筈だ。


よし、両手を上げ姿勢を整える。行くぜ! 僕のビートを受け止めろ!


交互に高速に指を鳴らす。大トカゲは僕に気づかないままビートの波に飲まれた。だが5秒と経たずに砂埃がトカゲの周囲に舞い上がる、僕の風極ふうきは全部大トカゲに当たっているからこの砂埃は大トカゲがやったんだ。本当にこいつら反応が早いな。


どうする近づくか? 相手を見失ったが、僕には虫の先触れがある。だから不意打ちは受けない筈だ、なので近づこう。


息を殺して近づく、今だ砂埃は舞い上がったままだ。

最初に大トカゲが居た位置から100m程の所まで近づいたがまだ砂埃が舞い上がってる。これは中で大トカゲが意図的に上げ続けてるな。


駄目だ虫の先触れが発動しない。僕の五感では一切砂埃の中を関知できてないって事だ。


どうすると悩んでいると、砂埃が収まり周囲には何も居なくなっていた。

これは隠れたのか? それとも逃げた?


クソ! トカゲ一匹満足に狩れない、覚悟を決めるとかそれ以前の問題だ。

そう気を緩めた瞬間違和感が襲って来る。これは僕の左だと?! しかもヤバイ! 近いぞ!


右に崩れるように転がると同時に僕が居た場所に何かがベチョっと落ちた。


液体? この状況で大トカゲが出して来るって事は毒か! 馬鹿か僕は! こんな砂漠で生きているんだ弱いわけがない! 何が狩るだ! 一週間前まで単なるぼっちの高校生だった僕が何を偉そうに!


畜生! 何だかんだでどうにかなってきてたから慢心していた!


だが今はそんな後悔は後だ! 大トカゲの野郎、何処にいやがる!


左から毒が飛んできたんだから左に居るのか? だがどうやって移動した? 攻撃した後に僕は100m程近づいたがその時はまだ砂が舞い上がっていたから、あの砂埃の中に大トカゲが居た筈なんだ。

それなのに僕に気づかれずに左に回りこんだ? 出来ないとは言わないが早過ぎないか? それに大トカゲだって砂埃で僕が居る位置を把握していないんだからそんな事は出来ない筈だ。

他の可能性は待ち伏せだが、今回攻撃を仕掛けのは僕だ。

どうやって待ち伏せするんだ?


あ、ヤバイ。一つ可能性が浮かんだ。

そう思うと同時に僕の前方、僕が風極ふうきを放った辺りから一匹の大トカゲが僕に向かって走ってきた。


畜生当たりだ! もう一匹居る、こいつらは二匹居たんだ!


まずは正面を迎撃だ、毒を持ってる相手と接近戦なんて冗談じゃない!

両手でリズムを刻む様に風極ふうきを放つ。

よし効いてる・・・・・・かは、分からないけどこっちに走って来る事は出来なくなってる。

そりゃそうだ30cm定規で叩かれる位の弱い衝撃と言っても見えないんだ。何が起きてるか分からず警戒するだろう。


その時、今度は後ろから気配を感じた! やばい回り込みやがった!


振り向こうとした瞬間後ろから気配が放たれた。と感じた瞬間右に転がり前回り受身をして立ち上がり全力で駆け出す!


挟まれてるのはヤバイ。そう思い逃げ出したが大トカゲの方が速い!

コンビニに入る? 駄目だ! この速度だと開けて閉める前に入ってくる!

くっそーーーーーー!


考えろ! 僕は人間だ! 一番の武器は考える事だ!

僕の武器は風極で威力はプラスチックで叩く程度! 他に! 他にぃ!何か! 有った!!


もう真後ろに居る! 体勢を整える暇は無い!

なので前方に向かって側転する要領で地面に手をつけた瞬間にマジックを発動させる。


 「孔明の地獄!」


側転の途中、逆立ち状態の時に、後方から大トカゲが口を突き出し僕の手に噛み付いて来る! が、その前になんとか手を引き、そのまま前方に転がりながら上手く体制を整えて後方を確認する。と今度は大口を開けて突進を仕掛けてきたが、何も無い空間に大トカゲがぶち当たると同時に大トカゲの周囲が崩落していく、当然乗っていた大トカゲは為す術もなく開いた穴に落ちていった。


やったぜ! 馬鹿ヤロウ! 人間様舐めるな!


って、勝ち誇るには早い! もう一匹居るんだった!


そう気を取り直そうとした瞬間後ろから気配を感じた、これは駄目だ! 近い! 間に合わない!


だから後ろの気配に向かって風極ふうきを撃つと同時に前方の2メートルほどの孔明の地獄を、横に半回転を加えたジャンプで振り返りながら飛び越し。更にはその間も風極ふうきを気配に向かって撃ち続ける。


気配を頼りに両手から放った風極ふうきで、大トカゲの足止めに成功した。


よし、危機は脱した。

危なかった、転がったり振り返ったりしてたら回避できずに直撃を食らう所だった。

ワンアクションで迎撃出来る風極ふうきで迎撃したのは正解だった。

それにしても咄嗟に動いたらスタイリッシュに決まったぞ、半回転ジャンプしながら風極ふうきを乱れ撃つとかめっちゃかっこ良く決まったんじゃないか? こんな状況だけど思わず自画自賛してしまう。


だけど、残ってる大トカゲはまだピンピンしてる。


もう一匹の孔明の地獄に落ちた奴は脱出できないから平気だ。

だてに孔明の地獄と名付けてない。落とし穴の中はアリ地獄になっていて、もがけばもがくほど沈んでいく。今頃砂の下に沈んでるんじゃないか?



だから問題は目の前でピンピンしてる残りの一匹だ。孔明の地獄の越しに睨み合いが続く。


どうする? 風極には決定力が無い。牽制にはかなり使えるが相手を倒しきる威力は無い。



大トカゲ。こいつは今何を考えてる? 落ちた仲間の事か? どう攻撃するかか? それとも逃げる算段でも立ててるか?


いいや違う。この目はどっちが強いか、それだけを探ってる目だ。

純粋にシンプルにどっちが強いか、それだけを探ってるんだ。


僕はどう動く? 風極ふうきで牽制しながら近づいて、レンタルスキルが発動するのを期待して殴りかかるか?

いや、この大トカゲは毒を持ってるんだ。接近戦は絶対に駄目だ。


焦るな、一匹は無力化した。後は一匹だ、落ち着いて行けば平気だ。


まずはあいつを良く見ろ。あっちだって苦しい筈だ、気持ちで負けるてちゃ勝負にならない。

大きく息を吸って吐く。集中しろあいつに眼力で負けるな!


そんな長いか短いか主観では分からない睨み合いをしてると大トカゲが所々光っている事に気づいた。何が光ってるんだ?

見る角度を変えて検分すると、何か線状な物が光を反射してるんだ。


ん? これは血か? この大トカゲ怪我をしてるのか。一体何時?

見た感じ薄く線状に切れてる。まるで薄い鋭利な刃で切り付けたようだ。


傷は浅い、これなら短時間で治る。だが、実際に血を流している。という事は僕との戦いで怪我負ったのか。

だが何時? どうやって?


いや、どう考えても答えは一つ。風極ふうきだ、だがどうしてだ?

さっきの一連の立ち回りで30発は打ち込んだ、なのに血が出てる場所は正面から見える範囲だと6箇所。数が合わない、クリティカル判定でも合ったのか?



考えてると一つの可能性に辿り着く。

いや・・・・・・まさか。だがありえる、可能性はしかも高い。

だったら試すしかないだろう。



右手で指を鳴らす。鳴らすだけで風極ふうきではない。

そのままリズム良く鳴らし続けてる。

大トカゲは微動だにせず僕を見ている、そのまま見ていろよ。

左手でも異なるリズムを刻む。


両手で異なるリズムを刻みながら、ビートを最高速まで引き上げる。

そして体を回転させながら万感の思いを込めて両手を突き出し構える。


 「天に響け風光極指ふうこうきょくし


今まで打ち鳴らした全ての音を媒介にして風極ふうきを両手から渾身の力で発動させる。

夜の砂漠に響き渡っていた全ての僕の音が一体となり、音速の斬撃として僕の両手から放たれると大トカゲは縦に一刀両断された。


やった? こんなあっさりやっちゃったのか?

こんなに上手く良くと思わなかった。

だが、やった。やってやった。だから言おうあのセリフを。


 「真っ二つだ」


孔明の地獄に落ちてる大トカゲを助けたい?手伝ってやろうか?

ただし真っ二つだ!

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