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8/10

ばなな

昨日、風極ふうきの使いすぎでガイアちゃんに怒られた後は、特に何事もなく歩きノルマの八時間をこなした。


そろそろ体が砂漠を歩くの慣れて欲しいけど、現状は逆で筋肉痛と座って寝る事による弊害で体のあちこちが痛い。

何が言いたいかというと、凄く動きたくない。


ドンドンドン

ドドンッドドンッドドドン


そんな僕の前でドアを叩く音がさっきから聞こえている。だが体が悲鳴を上げてるので無視し続けている。

だがそろそろ出ないとドアを叩いてる人が困るだろう。ここはトイレだからね、そんなに必死にドアを叩くほど洩れそうなのかな。なんて心にも無い事を思う。


僕以外はガイアちゃんしか居ないから叩いてるのはガイアちゃんなんだよね、ガイアちゃんもトイレ使うのかな?


 「コアちゃーーーーーん!起きろーーーーーーー!」

ドン!ドン!ドドン!

ドドドドドドンドドドドドン!


ついには叫び声もプラスされてドアの叩く音も激しくなってきた。

しょうがない、がんばるか。

立ち上がろうとしたが、酷使した足が動くなとばかりに痛みのシグナルを猛然と叩きつけてくる。クソ本体の命令に逆らおうとするとは生意気な足だ。


そんな馬鹿な事は止めてそろそろ真面目にしないとガイアちゃんがマジギレするかもしれないので気合をいれよう。


 「はいはい、今出ますよー」


気合を入れたのに気が抜けた返事をしながら痛みに耐えて立ち上がる。がんばった感動した! そしてドアを開けたらガイアちゃんがご立腹で目の前に居た。

うん、分かってた。


 「遅い!遅すぎる!なーーーーーんっで!起きないの?!暇で暇で暇でーーーー!」


両手と金髪ツインテールと巨乳のコラボレーションで自分が如何に暇だったかを力強く主張してる。

暇だから起こしたのか、なんて迷惑な。毎日砂漠を八時間歩くの大変なんだぞ。

だがまあ愚痴を言っても始まらない、今は目の前の巨乳さまが動くのを観察しよう。


ああ、寝起きでも癒されるというか血圧が上がるな。

血圧が上がるという事は血行が良くなるという事で、血行が良いと新陳代謝が良くなる。という事は筋肉痛が治る。

ふむ理論武装と大義名分は得た、巨乳さまは癒しの女神様だったのだ、これからは毎日遠慮なく拝もう。


とりあえず目の前の巨乳様に手を合わせ祈りを捧げる。

おっぱいがでっぱい。


 「え?何やってるの?」

 「女神様に健康祈願してました」


 「え?え?た、たしかに女神と言えるかもしれないけど、一応は天使なんだよね。いやん、困っちゃうな。にゃはは」


”いやん”とか”にゃはは”とかアレな事を言いながら、てれてれと照れてる。

今日もチョロイぜ。


 「今何時ですか?」

 「もうお昼になるよ」


今だにテレテレしながら答えるガイアちゃん可愛い。

よし、昼食を食べよう。




*+* *+*




今日のお昼は、大盛りパスタと紙パック野菜ジュースにチキン家族だ。

幸せそうにパクパク食べるガイアちゃん可愛い。


結構量有るのにパクパクいくな、本当にトイレどうしてるんだろう?

だって入れたら出さないと行けないよね? 常識だよね? ああでも天使だもんな・・・・・・。


 「ご馳走様ー」

 「ご馳走様でした」


二人してご飯を食べたら忘れていた作業を実行する。


 「はい、これ」

 「歯ブラシセット?どうするの?」


昼食と一緒に買った歯ブラシセットを渡す。こっちに来てから歯ブラシを忘れていた、思い出す余裕が無かったのだ。

歯磨き大切、特にこっちは歯医者なんていなそうだから虫歯になったらマジでやばい、だから手を抜く事はできない。


 「何に使うの?」

 「そりゃ歯を磨くんだよ、ガイアちゃんもね」


 「歯を磨くの?やった事無いよ?」

 「歯磨き大事ですよ、だから一緒に磨くあるね」


何故かエセ中華風に喋った、単なる気分なんだ意味は無い。


 「一緒かー、わかったよー」


何故か喜んでる。ピョンピョン飛び跳ねながら喜びを表現してくれてる。

そして何故か金髪ツインテールがシュッシュっとジャブみたいな行動をしてる、意味が分からないし。それは自由に動き過ぎだろ・・・・・・。可愛いとか萌えじゃなくて怖いよ。

そのツイテに比べればおっぱいさんは、まだ控えめに・・・・・・じゃないな。ジャンプすると巨乳様が上下に動くんだけどジャンプの頂点でガイアちゃんの顔が巨乳様に隠れてしまう、どんだけでかいんだよ。それとジャンプ力凄いなガイアちゃん。


 「何見てるの?」

 「いや、なんにもー」


 「そっかー」

 「そうなのだー」


邪な視線を変な相槌で誤魔化してしまった。それにしても、ちょっと今日のガイアちゃんの喜びの舞はレベルが高過ぎる、僕がついていけない。


そんなこんなで、一緒に歯磨きしてお互いの歯をニーっと確認。

その時、更にご機嫌になった金髪ツインテールにジャブをされた。

当たったというか触った感じで痛くないけど、どうせならお胸様にして欲しかったわ。




*+* *+*




今の時間は夜、今日も晴天に恵まれて雲ひとつ無い砂漠を一人歩く。


お昼に風極ふうきの練習をしようと思ったけどガイアちゃんから待ったが掛かった。

相談の結果、指パッチンの練習をして怪物が音に釣られてきたら風極で対応するという事になったんだけど。

怪物は来なかった、何故だ。


夜の砂漠で今日も今日とてガイアちゃんと歩きながら小さく囁きながら雑談に講じる。


 「なんで今日のお昼は化物出てこなかったんだろう」

 「それはコアちゃんと同じだと思うけど?」


 「僕と同じですか?」

 「うん、日光浴びながら歩きたくないでしょ?」


 「ああ、なるほど。怪物って色眼鏡で見てたけど、あいつらも生き物なんですね。砂漠に生息してるかって日中の環境を克服したわけではないと」

 「中には、克服してるのもいるんだろうけど。やっぱり少ないんじゃないかな?これだけ見渡しが良いと隠れてる方が有利だろうし」


 「そうですね、敵を先に見つけるって事は、逃げるか仕掛けるかの選択が出来ますからね。圧倒的に有利になります」

 「そうだね、だから今も小さくお喋りしてるんだもんね」


夜の砂漠は延々と続き、数々の星と月で美しく照らされている。


もうどのくらい歩いたのだろう、結構歩いたと思うけど未だ砂漠以外見た事が無い。まさか砂漠の惑星とか言わないよね?


 「この砂漠は、何処まで続いてるんでしょうね」

 「何処までだろうねぇー」


答えの無い会話をする。元からこの会話は適当に時間を潰すのが目的なので、どーでもいい事がメインだ。


 「星が多過ぎて逆に星座無いんじゃないかな」

 「そうかもねー」


ガイアちゃんは相談の時は先生モードで頼れるんだけど。

それ以外の時はお子様モードなんだよな。これは演じてるのかな? 素なのかな? どっちだろう。


 「休憩の時に食べたい物のリクエストある?」

 「ガイアちゃんはね!バフェ食べたいの是非食べたいの是が非でも食べたいの!」


バフェか。ちょっと高いけどその位なら安いもんかな。それにしても凄い食いつき様だ。


 「よし、今日のオヤツはバフェで行こう」

 「わーい」


子供みたいな歓声が聞こえてくる。みたいじゃなくて子供だったなガイアちゃんは。


そんな話をしていたら、ふと何か違和感を感じた。

何だろう分からないけどザワザワして落ち着かなくなった、この感覚はなんだ? 突然襲ってきたけど、まさか病気じゃないよな?


 「あれれ? 虫の先触れ”小さな虫の働き者、小さく小さい虫の便り”なにこれ? 10pでレシートがでてるよ? コアちゃん何かした?」

 「いや、何もしてない。違和感は感じるんだけど僕の神能が自動で発動したのか? 虫の先触れ、虫の知らせか何かか?」


僕の神能で虫の知らせだとするなら何かを教えてくれてるんだよな。

何を教えてくれてるんだ? 病気? いや違うこの体に感じてる違和感が虫の先触れなんだ。ならば、この違和感を探るんだ。


 「コアちゃんの能力が自動で発動したって事はレンタルスキルだから、その違和感はコアちゃんが五感で感じ取れてるけど気づけない危険な兆候をコアちゃんに教えてくれてるんだよ」


なるほど、てかレンタルスキルは自動なのか。そういえば虚空拳こくうけんなんか勝手に体動いたよな。


・・・・・・。

集中すると僕の前方の方に違和感を感じる。

何も見えないし感じない、だけど”虫の先触れ”はそこに何かがあると僕に違和感を訴えてる。


 「ガイアちゃん、前方10m辺りに何かの気配を感じる」


言ってから驚いた、気配とか言っちゃってるよ僕。

まさか出来るようで出来ないスキルNo1(当人調べ)の気配を読むを僕が出来るようになるとは。


関係無いけど空気を読むスキルは僕には実装されてない、何故ならボッチだからだ。対人コミュニケーションの無さを舐めないで欲しい。


 「うーーーーーん。あ、居た!たしかに居るよ!何かが砂の中を移動してるよ。よく見つけたねコアちゃん」


こっちが、よく見つけたって言いたいわ。前方10mに気配を感じてるけど何が何処に居るのかは今だに検討もついてなかったんだ。

砂の中を移動してるとは思いもしなかった。


 「これはあれだね。コアちゃんを先に見つけて進行方向に先回りして待ち伏せしてるんだよ」

 「という事は、道を変えれば接触は避けれる感じですか」


 「一時的にはそうだと思うけど、見つかっちゃってるからまた先回りすると思うよ。そういう地味な事を野生動物は結構するから」

 「向こうは僕を待ち伏せをして先手を取る気でしょうが、ならばこっちが先手を取りしょう」


 「逃げる判断は早めにね、中に連れて来ちゃたりしたら嫌だからね」

 「そういえば、誰でもコンビニの中に入れるんでしたね。注意します」


退路が絶対的に確保されてるのは心強いな。


さて目標は10m前方の砂の中か、ぶっちゃけ何処だか分からない。

気配は大体掴めてるけど、それでも何処に隠れてるか分からない。

素直にガイアちゃんに聞こう。


 「どの辺りに敵が居るか詳しくお願いします」

 「えーとね。前方10m先の辺りにある右の凹み辺りに居るよ」


そうは言うが10m先の右の凹みって結構でかいんだけど。

というか、この凹み僕の方まで続いてるじゃないか。凹みを注意深く見ると、違和感が確信に変わる感覚が来る。

あそこか! 凹みの影の砂の中に何かが居る。

いつの間にか9m程まで近づいてきてる、早い奴なら一秒と掛からない距離だ。


躊躇してる暇は無い。風極ふうきをまず撃って、それに怯まずこっちに向かってくる様だったら速攻逃げる。これで行こう。


 「ガイアちゃん、仕掛ける」

 「ふぁいと!」


こんな時に可愛く”ふぁいと”って、そんな事言われたらにやけちゃうじゃないか。思わず顔から笑みが零れる、良い感じにリラックス出来てしまった。緊張なんかしてたら指が上手く踊らないからね。



この世界で怪物には結構出会った。それこそ何度か襲われて返り討ちにもした。

だけど、自分から仕掛けるのは初めてだ。


僕が見てるのに気づいてるのか、砂の中に居る何かが動く気配は無い。好都合だ。


さあ、風極ふうきの実践デビューだ。


まずは、小手調べと言いたいが。距離が近いからそんな事してる場合じゃない、だから今できる最高のビートをお前にくれてやる!


両手を突き出し構える、そして!


 「うおおおおおお!」


雄たけびを上げて一気に指を弾き続ける、気だったが二発が同時に着弾した瞬間。敵も反応して一気に砂から出てきた。流石だ野生動物! 反応が早い! しかも砂を巻き上げやがった。煙幕代わりかよ!


バックステップしながら、風極を砂埃の中に連続で打ち込む。

場所は虫の先触れで感じる違和感頼りだ。ったが、違和感を感じなくなった。


これはコンビニに避難すべきか? 一瞬の迷いが生じたその時、化け物が砂埃の中から躍り出た。 が、僕のとは逆方向。そのまま這いずり逃げていく、あの形は蛇か。そして相変わらずでかい10m級かよ! この砂漠でかい生き物居過ぎだろ!


逃げていくのを攻撃するのは、気が進まないが命のやりとりをしてるんだ、容赦はしない。


声を出さずに歯を食いしばりながら必死に高速のビートを刻む。

手応えはある、ほとんどが蛇の体に着弾している、そのお陰で大蛇はまともに進めてない。

だが、絶望的に威力がない。

例えると30cmのプラスチック定規で叩いてる様なものだ、痛い事は痛いだろうけど命に関わる事は無い。音が媒介として軽いと言われる訳だな。


だが、追い払うのには成功した。とりあえずコンビニ帰ろう。




*+* *+*




 「おかえりー。やったねコアちゃん、バフェ買って!」

 「ありがとう、ってバフェかよ!」


 「えーだって、おやつはバフェにするって。約束したじゃん、じゃん」

 「それは約束したけど。見てたでしょ僕の死闘を! 何か感想とかそういうの無いんですか?」


 「楽勝だったねー、駄目な神能の使い方に拘ると思ったけど、意外に有能でビックリだよ」

 「僕のワンダフルな技を駄目とは酷いな、ガイアちゃんにはロマン回路が搭載されてないのか。それに楽勝って、あの大蛇との死闘を楽勝って、ちゃんと見てたの?」


 「んーだって、最初に隠れてる場所に攻撃して相手を地上に出して、それでも隠れようとする相手に的確な追撃をして、更に逃げ出した相手に追い討ちを掛けてたんだよ。しかも10秒くらいだよ凄い楽勝だったじゃん」

 「え、10秒? そんな僅かな時間だったの?」


思ったより時間が掛かってない、そしてガイアちゃんと僕に凄い認識の違いがある。見てる人間と当事者じゃ感じる物が全然違うのは分かるけどさ、僕にとっては凄い神経を使う死闘だったのに。


 「そうだよ、10秒で無傷で相手を追い払ったんだよ。やっぱり楽勝だよ。というか何処から見ても死闘の要素は無いよ」


 「ばなな」


 「なにが、ばなな?」


意味なんて無い、強いて言うなら馬鹿なと言いたいけど言えない僕の心境を表す言葉が、ばなな。

確かに客観的に見たら楽勝なのかもしれないけど納得できない思いを込めた、ばなな。


 「よし、パフェを食べよう」

 「なんで、ばなななの?」


 「お?バナナのパフェが良いのか? 大きめのやつだな、よしよしお兄さんが買って上げようじゃないか」

 「そのバナナじゃないよー。ばななって何?」


随分ばななに食いつくな、丁度良い。ふっふっふ、ロマンを解さない者よ。困惑するがいい、そこに意味など無いのだから。


 「ねー、ばななって何ー」


しつこく聞いてくるガイアちゃんをスルーしながら二人でバフェを食べて休憩は終了。

その後はまた夜の砂漠を歩く。特に何事も無くノルマを達成して本日は終了となった。


唯一の誤算はガイアちゃんが10分毎に「ばなな」っと呟く事だ。普通に話してるのに時間になると突然「ばなな」と呟く。

途中で負けて意味は無いと親切丁寧に説明したけど、その後は5分毎に「ばなな」と呟くようになった・・・・・・これ嫌がらせだろ。


ばなな


前回の更新でPV結構回ってて嬉しかったです、ありがとうございます

何もかも素晴らしい人のお陰です

ビバ 指パッチン

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