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砂漠に一人

原因と結果、僕は世の中がそれで成り立っていると思っている。

何故そうなったかが理解出来なくても、物事には原因があって結果がある。


その原因と結果が乖離し過ぎて信じられない事も有るだろう。

だが絶対に、原因があって結果がある。

そのはずなんだ。

その事を踏まえて、今の状況を考えよう。


原因・学校帰りに家の裏山を歩いていた。

結果・砂漠のど真ん中に居る。


・・・・・・。

どう考えても意味不明だ。

もう少し詳しく言うならば、僕は学校帰りに家の裏山を歩いてた。

不届きな事に定期的に本を捨てる奴が居るので、紳士な僕は捨てられたエロ・・・・・・ごほん。

捨てられた本を回収・分別して資源ゴミとして出している。一部はサンプルとして押収している。

そんないつもの帰宅中に、運良く目当てのお宝本を見つけて手に取ろうとしたら、いつの間にか砂漠に居た。


うん、詳しく言っても意味不明だ。

この事態を説明できる人が居るなら、ぜひご教授して頂きたい。

バタフライエフェクトみたいな、とんでもこじつけ論でも説明出来ないだろう。


 「意味が分からん!てか、あっちー。何だこれ、なんでエロ本拾おうとしたら砂漠に居るんだよ!」


無理やり納得しようとしたが現実は過酷だった。

日光が容赦なく照りつけ僕を焼き殺そうとしてるようだ。

一体何なんだこの現状は?

とにかく焦ってもいい事は無い落ち着いて考えよう。

これは夢なのか?


「いやそんな筈は無い。この焼けるような日差しに灼熱と表現するしかない砂の熱さ。ぶっちゃけ辛い、こんな夢が有って堪るか」


滴る汗を拭いながら、現状を確かめる為に周囲を見渡す。


雲ひとつ無く青々と澄み切った空に燦々と輝く太陽。

地上は地平線まで砂しか見えない、見渡す限り砂の砂漠だ。

所々で大小様々な砂山が見える、大きい砂山は5メートル以上はありそうだ。

遠くの方は陽炎なのか、ユラユラと揺れていて良く分からない。

時折、強い風が吹くけど涼しくないし砂混じりで痛い。


 「ここ何処なんだ?」


あらためて見ると日本とは思えない景色だ。

日本で一番有名な砂漠地帯といえば鳥取砂丘だが。

あそこは多少植物が有った筈だし海岸も近い筈だ、360度パノラマで地平線まで砂漠が続いてる様な景色ではない筈だ・・・・・・たぶん。


 「落ち着け・・・・・・まず整理しよう」


僕の名前は公神コウジン愛主アイスふざけた名前だが、残念ながら大マジだ。

おおやけのかみに愛するあるじ。変わった名前だけど苗字はいい。

問題はアイスだ。

こんな名前を付ける親が居るとは信じられない。てか信じたくない。子供を何だと思ってるんだ。

っと、僕の名前の愚痴は今の状況と関係無い。


 「って、整理しようが無い!なんで、山歩いてたら砂漠に居るんだ!てか、死ぬぞ。マジで死ぬぞ!誰か居ないのか!」


本当に一体何が起きたんだ?

結果は分かる、学生服を着て学生カバンを持った僕が砂漠に一人いる。

だが、原因が分からない。何で砂漠に居るんだ?

考えてみても神隠しや超常現象それか夢くらいしか思いつかない。

超常現象なら起こした本人が出てきて説明して欲しい。

だが誰も出てくる気配は無い・・・・・・。

辺りには人っ子一人見当たらない。

なら、やっぱり夢なのか?

だけど、この現状は。


 「やばくないか?」


容赦なく太陽が僕を焼く、死ぬほど熱い。というか死ぬ。

こんな意味不明の現実は夢にしてしまいたいが夢にしては熱く苦しくリアル過ぎる。


 「とにかく原因と結果は後回しだ。今どうするか考えよう」


砂漠で遭難したセオリー。

名作マンガ、マスターシートン先生で見た覚えがある。

砂漠で行動する場合は昼は日陰で体力を温存して夜に移動するのが良いらしい。

夜に凄い冷え込むとも聞くが、それはその時に考えよう。

今出来る事は日光という殺人光線から逃げて体力を温存する事だ。


 「日陰を探そう」


現実だと信じたくないが熱く苦しい現状を打破しなければ死んでしまう。夢なら死ねば起きるかもしれないが、もし現実だったら取返しがつかない。

だから比較的近くにある砂山の陰に向かって歩き出した。



*+* *+*



 「ぜぇーぜぇー」


汗が大量に噴出して息切れする。

なんとか目標の日陰にたどり着けたが、力尽きて倒れこむ。

熱砂を歩くのは想像以上に厳しい、熱だけじゃなく風もやっかいだし革靴で砂漠を歩くとかキツ過ぎる途中で力尽きるかと思ったぞ。


 「これからどうする」


砂丘の陰で寝っころがりながら考える。

だが、いくら考えてもこれが現実だと認める事は出来ない。

繰り返しだが、なんなんだこれは。

まさか本当に神隠しなのか?

だとしたら連れて来た神が説明してくれ本当に死ぬぞ。


 「ん?」


そんな事を考えて休んでいると何か音が聞こえた、砂漠に来てからは風の音しか聞いてなかった。

なので反射的にそちらを見た。見てしまった。


僕の歩いてきた道を辿るようにノシノシと歩く化物の姿がそこにあった。


 「っ!!!」


息を呑む、心臓が激しく鳴動する。

なんだ!何なんだあいつ!?

見た目はサソリだ。ただし大きさが僕が知ってるサソリと全然違う。普通のサソリなら手のひらサイズの筈だけど、この化物は大型犬位ある。なんじゃそりゃ!?


 「キュェェェ」


僕が大サソリに気づいた事に気づいたんだろう嘶く様に静かにサソリが両手の鋏と尻尾を大きく掲げ威嚇してくる。

サソリが声を出すとかそんな事出来るのか?

だが今はそんな事を考えてる場合じゃない。

どうにかしなくちゃ。

そう思うけど体が震えるて動かない。

さっきまで馬鹿みたいに熱かったのに、その熱さを感じない。

息が詰まる、舌が口の中が急激に乾く、喉も乾燥して痛みを訴える。

恐怖で泣きたいが、恐怖で泣けず。

意味の分からない状況で体だけが大きくガクガク震える。


見たくないが、まばたきも出来ず大蠍を凝視してしまう。

なんだ、あのハサミは僕の頭くらいあるじゃないか!

もしあんなので挟まれたら僕の体なんか簡単に切れてしまう。

恐怖で視界が狭くなるサソリ以外の物が目に入らなくなる。

どんどん視界が暗くなっていく。

やばい、これは気を失う前の兆候だ!

しっかりしろ僕!


顔を左右に振り、自らの顔に両手でビンタをする。


そんな僕にお構いなくユラユラと大サソリの尻尾が揺れている。

両手の鋏を大きく上げながら僕の方にジリジリと近づいてくる。


大サソリの視線はまっすぐ僕を捕らえている、目を逸らしたいがそうした瞬間に襲い掛かってきそうで出来ない。

こっちに来るなと願うが、そんな願いは通じない。

どうすればいいんだ?なんだこれは?一体なんなんだ!?

どうしてこんな事になってるんだ。


頼むから誰か助けてくれ。

神でも悪魔でも良い誰か!


 「こっちに来るなーー!」


精一杯の虚勢を張る、だがサソリは何事も無いように近づいてくる。

くそ、やるしかないのか?

だが勝てるか?この大サソリに!

昆虫は体重で比較すると哺乳類より力があるとか猫や犬と素手で戦うと人間は勝てないとか聞いた事が有る。

ならばそのハイブリッドの大型犬並みのサソリに僕は勝てるのか?


勝てるわけ無いだろ!ふざけるな!逃げるしかない!


ジリジリと後ろに下がる。


 「お主、助けはいるか?」


 「え?」


逃げる覚悟をした所に突然横から声を掛けられた。

顔を横に向けるとマッスルな大胸筋と乳首があった。


 「なんじゃこりゃ!」


後ずさると巨漢のマッチョが居た。何を考えてるのか砂漠なのに上半身裸だ。さっきのマッスル乳首は僕との身長差の所為で僕の頭の真横にマッチョの乳首が有ったようだ。

でか過ぎるだろ。


 「た、助けてください。お願いします」


裸乳首のマッチョだが僕にとって救世主なのは間違いないので助けを求める。


 「承知した」


そう巨漢が返事をした瞬間、僕の目の前で突風が起き、巨漢さんの姿を見失った。


 「え?」と、僕がそう言った時に、大サソリの方から鈍い大きな音が聞こえてくる。

慌ててみると巨漢の人がサソリの胴体を蹴り上げていた。

僕の目の前から一瞬で移動した上に既に攻撃してるとか、どうなってるんだ?


そんな僕の疑問とは関係なく。繰り出された攻撃の威力は凄まじく、サソリが空に舞い上がった。


さらにサソリを追うように巨漢さんが飛び上がり追撃を仕掛ける。

目に止まらぬ速さとはこの事だろう。僕の目からは何が起きてるか理解できない。硬いものを叩き付ける様な音が連続で聞こえてくる。


そして大サソリは地面に落ちた。その姿はいたる所が凹み千切れていた。どうみても死んでいる。

僕の恐怖の対象は、あっと言う間にこの世から消えうせた。


 「す、すごい。エリアルコンボをリアルで出来る人が居るとは」


余りの光景に驚く事しかできない、そんな僕の元に巨漢の半裸人さんが近づいてきた。


 「それでおぬしはこんな所で一人何をしておるのじゃ?」


 「何をしていると言われましても。僕も何が起きてるのか分からなくて困っているんです」


何が起きてるかは僕が知りたいです。

砂漠に放り出されたと思ったら大サソリだ、僕の思考回路では追いつかない自体だ。


 「分からぬ?仲間からはぐれて遭難しているなどではなく、分からぬのか?」


 「はい、その信用して貰えるか分かりませんが、気づいたらこの砂漠に居たんです。本当に突然で、何が起きたのか分からなくて混乱してるところにあの大サソリが襲ってきて。あ、遅れましたが助けてくれて、本当にありがとうございます」


ぺこりと頭を下げる。

なんと言う事だ、礼儀正しさを美徳とする僕が(例外有)お礼を言うのを忘れるとは、恐怖から突然開放されて頭がついていってない。


 「ふむ、たしかにこんな所に一人でその軽装じゃからな。変な奴じゃとは思っておったのじゃ。しかし、分からぬと来たか」


流石に信用してくれないか、そりゃそうだよな。

砂漠を一人歩いてますなんて自殺志願者か嘘つきのどちらかだろう。


 「はい。本当に、何故こんな所に居るか見当も付かずに困っているのです。変な事を言っている自覚は有りますが事実なんです」


 「おぬし、自分の国を言えるか?」


唐突に国を聞かれた、頭が回らない何の意図が有るんだ?

だが巨漢さんしか頼る相手は居ないので素直に答える。


 「日本です」


 「ほう、日本と来たか」


 「あ、日本知ってますか?良かった、外国や最悪異世界かと思ってたんですよ。そういえば日本語で会話してますもんね」


ん?だとすると。さっきのサソリはなんだったんだ?

あんなの日本に生息してるなんて聞いた事無いぞ?

まさかバイオハザードな事故が起きたのか?


 「ふむ、外国に異世界とな」


あれ?考え込んじゃったぞ?

不安になるから変な所で言葉を切らないで欲しい。


 「重ね重ねご迷惑をお掛けしますが、よろしければ近くの駅まで送ってもらせんでしょうか?もちろんお礼はします。何か用事が有る様でした、その後にお願いします。この通りです」


深々と頭を下げる。お願いです頼みます。


 「エキか、エキとはなんじゃ?」


必死な思いだったけど、返ってきた答えは想定してないものだった。


駅を知らない?

そういえば良く見たら彫りが深い顔立ちをしてる、外国の方かもしれない。だけど日本語を話していて駅を知らないって有りえるのか?


 「え?駅は駅ですよ?ステーション?電車やバスが止まる所です」


 「なるほど、嘘を付いてる様子では無さそうじゃな」


 「嘘ですか?」


駅の説明にどんな嘘の要素があるんだ?


 「そうじゃ、ワシはエキやらステーション等しらぬ」


 「本当に駅を知らないんですか?えーと、ご冗談?」


 「冗談ではない」


 「いや、日本に住んでいて駅を知らないのは無理が・・・・・・。まさかテレビとかが無いお宅でしょうか?」


 「そう、その日本じゃ」


 「はい?日本ですか?」


 「ワシは日本を知っておる、じゃが歴史の中でじゃ」


 「歴史?日本が歴史ですか?」


 「ワシが知っておるのは、今話してる言語を伝えたのが日本人の落ち人だという話じゃ」


 「落ち人?」


落ち武者の親戚か?

あと言語を伝える?

なんのこっちゃ?

しかし、この話の流れはヤバイ。


 「この世界でわな、唐突に何かが落ちてくる事があるのじゃ。化物やら訳の分からぬ物など実に様々での。その落ちて来る者の中には人も居る。そうして落ちてきた人間を落ち人とワシらは呼ぶのじゃ」


 「えっと?でしたら、まさか。ここは日本では無いって事ですか?」


やばい、絶望で顔が歪む。質問したけど答えは分かっている。畜生。


 「そうじゃ、ここは三つの国に囲まれた世界最大の砂漠であるゴズ砂漠。日本ではない、何処の国にも属しておらん死の砂漠じゃ」


信じたくなかったけど、やっぱり異世界なのか。

なんだよゴズ砂漠って牛頭天王の親戚か?

しかしどうするんだよ、学校帰りだったから学ランとカバンしか持ってないぞ。

サイフあるけど、この世界じゃ使えないだろうし。

いや日本語が通じてるんだから意外に使えるかな?

いや駄目だ、そもそもサイフの中身が少ない。


 「そうなんですか・・・・・・」


 「意外に平気そうじゃの」


全然平気じゃないです。

ただ嘆いても仕方ないから生きる方法を考えてるんです。


 「平気ではないんですが、冷静に考えたら日本ではないなと。薄々気づいていましたので」


 「そうか、それは助かるの」


 「助かるですか・・・・・・?」


何が助かるんだろう?


それはともかく、今の僕の生命線はこの巨漢さんだけだ。

友好的な関係を作りたい。

サイフのお金を上げたら芸術品とか言って喜んでくれるかな?


 「うむ、天から落ちてくる物は様々での。悪しき者や危険な物も落ちてくる。その点おぬしは善良そうな普通の落ち人じゃ。それで助かると言ったのじゃ」


 「なるほど」


この世界では落ち人って歓迎されるんだろうか?それとも邪魔者扱い?

巨漢さんは助けてくれたし説明もしてくれてるから、歓迎してくれてるんだよね?


 「天から落ちてくる物によって起きる事柄を天の試練とワシらは呼んでおる。これが中々厄介での運が悪いと村が人知れず無くなってる事もあるのじゃ。過去には国が一つ滅んだとも云われておる」


 「国一つが滅んだ、ですか。スケールがでか過ぎて想像がつかないです。相当酷い物が落ちてきたんでしょうか?」


 「そのようじゃな。だが何が起きて国が滅んだかは伝わっておらん。であるから、それらの悲劇を教訓に天の試練を早期に発見し解決する協定を国々が結び一つの組織を作った。もっとも、敵対的な国もあるでの。全ての国どころか半分にも満たぬ三天星サンテンセイが治める国しか協定には参加しておらんのが実情じゃ」


 「なるほど」


突然固有名詞を出されると困る、三天星って何だろう?

それはそれとして国を超えて一つの組織を作るという事は、それだけ天の試練とやらが問題視されてきたんだろうな。


 「そして何を隠そう、ワシはその国々が結集した組織”天浄華テンジョウカ”の一員じゃ。今回は、ゴズ砂漠に天から落ちてくる兆候が有ると依頼が来ての、それで調査に来た所おぬしが襲われておったのじゃ」


 「そうだったんですか」


偶然通りかかって助けてくれた訳じゃなく天の試練とやらの専門家だったのか。道理で的確に落ち着いた対応をしてくれる訳だ。


 「うむ。今の状況は大体分かったかの?」


 「はい、ありがとうございます。正直に言うと良く分かってませんが、この世界では割とある現象に巻き込まれて僕はこの世界に落ちてきた。という事は分かりました」


 「うむ、その辺りが分かっておれば良いじゃろう。それでの、おぬしが落ち人だと言うならば、何か異能が有る筈なんじゃが。何が出来る?」


 「はい?異能ですか?何の事でしょう?」


 「落ち人は何かしら特殊な力を持って生まれると聞く」


 「えーと、恐縮ですが。僕は学生ですので読み書きソロバン位は出来ますが、特殊な力といえる様な事は出来ませんです」


 「ほう学生じゃったか。だが異能は持って生まれた才能じゃ、鍛えて手に入るものではない」


 「持って生まれた才能ですか。異能ってくらいですから他の人には出来ない事ですよね?それですと僕が出来る事で、ほかの人は出来無い事なんて精々指パッチンくらいです」


 「ユビパッチン?なんじゃ、それは?」


パチンっと指を鳴らす。

ここまでは出来る人間は沢山居るだろう。

だが僕は両手で高速のビートを刻む事が出来る。

人に披露する機会は無かったけど、こんな場で出番があるとは。


そう思いながら一心不乱に両手を使いリズム良く指を鳴らす。

よし、今日の調子はいい。指が気分良くなめらかに踊ってる。

そのままビートを上げていきフィニッシュには超高速のビートを刻む。

よしパーフェクトだ、人前で緊張したけどやりきった。


 「こんな感じで演奏出来ます」


 「・・・・・・それは違うの」


呆れられた。

まあそりゃそうですね。

でも、しょうがないじゃないか他に特技なんて無いんだから。


 「ワシの知る限りだと、落ち人の異能とは超能力や魔法に近い」


 「超能力に魔法ですか?」


それは夢のある話だ、超能力や魔法が使えたらかっこいいだろうな。でも、指パッチンの演奏もかっこいいと思うんだけどな、駄目かな?


そういえば巨漢さんの戦闘力は超能力としかいえない動きをしていたな、あれも異能なのかな?


 「落ち人の伝承はいくつかあるが、こちらの世界に落ちる事で何かしらの異能に目覚めたという話も有る。おぬしも何かしら異能に目覚めているやもしれんぞ?」


それが本当なら嬉しい情報だ、ぜひ日本に帰る異能であって欲しい。


 「異能に目覚める、ですか。これといった自覚は有りませんが、何かコツとかそういったものってあるんでしょうか?」


 「うむ、異能は大きく分けると二種類有る、戦闘系と便利系じゃ」


 「戦闘系に便利系ですか。戦闘系はなんとなく想像がつきますが、便利系というのはどういった能力なんでしょう?」


 「ふむ、実は便利系というのは方便での戦闘に使えない能力を便利系と言っておるだけなのじゃ」


 「戦闘に使えないですか?」


 「そうじゃ、工夫すれば使えない事も無いだろうが。例えばだ今回の”天からの試練”この前兆の掴んだ異能が便利系じゃな。他にも有名なのでは離れた場所を繋いで一瞬で移動する事が出来る異能がある」


 「それはどちらも凄い能力ですね」


特に移動系の方は凄そうだ。この世界の交通手段は知らないけど日本でも瞬間移動なんて出来たらめちゃくちゃ重宝するぞ。


 「そうじゃな、この二つは便利系と呼ばれてる中でも特に重宝されている」


 「なるほど」


 「それでじゃ、異能とは個人の才覚に合わせて発現する。じゃからおぬしの異能は、おぬしに相応しいおぬしだけの異能になるはずじゃ。落ち人ならば何かきっかけさえ掴めれば使えるようになる。そのはずじゃ」


僕に相応しい僕だけの異能か。男の子としては憧れる響きだけど、ピンと来ない。


 「きっかけですか」


パチン


また、指を鳴らしてみたけど何も起きない。

特技というか得意な事なんて本当に指鳴らしくらい思いつかないんだけどな。


 「そうじゃな、おぬしは戦士では無さそうじゃ。だから戦闘系では無いじゃろう」


現代の高校二年生である僕は戦士という職業には就いてない。

当然ですね。

ゲームなら戦士でも武道家でも狩人でも何でもござれなんだけどな。


 「じゃからおぬしの異能は便利系じゃと思うんじゃが、おぬしは便利と聞いてまず何を思い浮かべる?」


便利か、それで思いつくのと言ったら。


 「コンビニですかね?」


そう言った瞬間、世界の雰囲気が変わった。


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