第4章
先ほど注文したダイエットコーラが届いたが、
飲むのは危険だと感じた私は晩御飯にも口を付けずに
深夜の1時45分にアラームを設定してから眠りについた。
体力を温存しておかないといけないと感じたからだった。
セットしていたアラームが鳴り、
ユキコが現れるのを待った。
きっかり深夜2時にとしこは現れ着替えを済ませると
スペースポート4番格納庫に向かった。
ユキコが持っているエルゴ協会のIDカードで
セキュリティはパスできた。
いったい彼女の本当の職業は何なのだろう?
格納庫には黒い3角形の見たことのない宇宙船が
収納されていた。
ユキコが乗降口の横のセキュリティパネルに右手をかざすと
ドアが開き。内部は見たこともない計器でいっぱいだった。
「早く、警備が来るまで1分もかからないわよ」
「緊急脱出ポットから射出するからベルトを早く締めて」
魂を置き去りにしたまま体だけが瞬時に移動するような
激しい重力加速度で、思わず気絶しそうになり、
ステーション3の緊急脱出口から、かなりの高速で射出された。
「大丈夫よ、ステーション3には軍事目的の宇宙船は一隻も
存在してないから、追っては来ないわ」
「何で君はそんなに詳しいんだい?」
「世間話は後にしましょう。問題なのはあなたの命と、
影の政府が何を知りたがっているのかってことよ!」
やがて窓から見えてきたのは月面ではなく、ステーション3
と同じく地球の周りを回っている、建設中のコロニーだった。
「さあもうすぐつくわよ。」
「月面じゃなくてごめんなさい。」
「あなたとの通信は影の政府に情報は漏れていたから」
「きっと彼らはアルキメデス付近でこのルナ2が来ると思って
待ちぼうけすることでしょうね。」
「そうだったのか、私はてっきり月へ行くとばかり思っていたよ。」
「味方を欺けないものが敵を欺こうったって無理よ。」
「こつちのコロニーには強い味方がいるのよ。今にわかるわ。」
建設中のコロニーのスペースポートにルナ2は静かに着陸した。
「まずはあなたの体調がまだ万全じゃないから、
私のマンションで休むといいわ。」
私はとりあえずエルゴ協会本部に
事件の詳細を報告してくるから、
部屋の中は自由に使ってもいいわよ。」
「セクシーな下着なんて干してないから安心してね」
コロニー内のマンションまで案内されて14階の
部屋を自由に使えと言い残し、私を一人部屋に
残したままユキコは出かけていった。
そういえばまだ夜中の3時半だし、
ユキコが帰るまでベットで眠ることにした。
女性の部屋にしては殺風景で、
老人ホームに似たような作りだった。
深夜に起きて謎のシャトルに乗ってここまで
たどり着いたが、自分はこれから先どこに向っているのか
まったく理解不明に思えて仕方がなかったが、
とりあえず。今はユキコが戻るまで安静にして眠ることにした。
気が付くと朝になっていた。窓から外を眺めるとコロニー内部の
照明設備は地球と同じ環境に調整されているらしく、
数時間前までは暗かったのに、今はとても外は明るい。
眼が覚めるとユキコはキッチンで朝食を作っていた。
「おはよう。よく眠れた?」
ベーコンエッグとトーストとサラダを2人分
テーブルに並べてコップに牛乳を注いで、
ユキコはテーブルに座った。
「早く顔を洗って。朝ご飯を食べる時間よ」
「うん、おはよう。」
「ところでここは君のマンションなのかい?」
「ちがうわよ。私がマンション買えるお金なんて、
あるわけないじゃん。」
私の両親のだけど、エルゴ協会の社宅みたいなものね。」