表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★星々の彼方への旅   作者: よしなが としひこ
10/11

第10章

南極にある旧ナチスの秘密基地は現在では軍事目的では

運営されていない。そこにはヒトラーの孫たちとその家族

や、友人たちが自給自足の暮らしをしていた。

気候は思っていたよりもかなり温かく、ヌーディスト・ビーチまであるのだ。

地上の楽園のような施設を作りたかったのだろう。

ヌーディストクラブで知り合った14歳のエイミーが語るところによると

南極基地の住民の9割が地球へ移住してきた太陽系の外の惑星から訪れた人々だという。

性的にはオープンな彼らは裸を人に見られても恥ずかしくないようだった。

彼らもコロニーで出会った銀河連邦副司令官カール・セロンと同じように

地球での地質調査を終えて地球を旅立つことを計画していた。


まだ処女で未経験なエイミーの悩みは周りの男性が

私としたがっていることだった。

男性の視線の大半は私の下半身に注がれていることに

腹を立てているらしのだ。

したくてしょうがない男達の欲望を沈めるためにも

これからは水着を着用するのだという。


「野生の猿のオスは種まきには熱心でも育てることとなると面倒になる生き物なのよ、きっと猿のオスも人間のオスも脳に欠陥があるんじゃないかしら。」

というのがエイミーママが地球の男を観察してきた結論だった。


彼女は故郷の星に帰還するための保存食を船内のキッチンで作っていた。

宇宙時代になろうとも船内で食べる食糧の備蓄が充分になければ

生きてはいけないからだ。


一週間後に、ついに地球を離れることになり、

ユキコも含めた女性だらけのメンバーに男一匹乗り込み、

エイミーの生まれ故郷である「喋る猫がいる。」という星へと向かった。

太陽系の外に出ていった人類で、

地球に戻ってきた者はごくわずかだという。

遠い宇宙を航海するには人間の寿命は短すぎる。


エイミーの星にたどりつき、楽園のような生活をしばらく楽しんだが、

地球時間ではどれほどの歳月が流れたのだろうか・・・・


やがてエイミーは大人の女性に成長した。


惑星エデンの素晴らしい文化を地球に伝えれば。


戦争や争い事もなくなるかもしれないが、

この星の存在を悪いものたちに知らせると、

この星を支配しようとするものも現れるだろう。


あれから約10年の歳月が過ぎたが今の地球は

いったいどうなっているのだろうか、

古代の預言者の言葉どうりだとすれば、

恐らく自滅の道を進んでいるのだろうか…………


銀河のなかの一千億もあろうかと思われる星の中で

生命があると思われる星を探し出す仕事についた私は

惑星エデンから20光年先に存在するブラックホールを見つけた。


ここを通過すれば銀河の外の宇宙に行くことが可能だが、

それは片道切符であり。

そこを通過すればもう二度と今の星に帰還はできない。

自殺に等しい行為だが、

過去に何人も銀河の外の宇宙へと旅立った男たちが

いたことが記録に残されていた。


「人生は、いつの時代だろうと片道切符なのさ、

どうせいつか死ぬ命であるなら見たことのないもの、

触れたことのない物を体験したい。」

という言葉を残し彼らは旅立った。


家族に別れを告げ、私も船内のコンピュータに

ナビゲーションされながらただ一人で銀河の外へと出ようとしていた。

銀河の外に旅立つ前に健康診断を受けたところ

身体的にはメタボリックな傾向はあるがさほど問題はなかったが、

心理面では性的欲求不満であると診断された。

医者の診断には間違いないと思う。

しばらく誰ともセックスしてなかったからだ。


ユキコにその話をしたところで、帰ってくる返事は予測できたので

エイミーに相談してみた。

22歳の大人の女性に成長したエイミーは子供の頃よりも陽気になり、

私の悩みを打ち明けると、クスクス笑うだけで、上手くかわされてしまった。

きっと心の準備がまだなのかもしれない・・・・


銀河連邦に所属する惑星エデン宇宙港で全財産をつぎ込んで

光速宇宙船を借りて光速宇宙船に乗り込んだ私は、宇宙に点在する

ワームホールをジャンプし、

2千7百光年の距離を移動し銀河の果てまでやってきた。


恐らく次ののワームホールを通過すればそこは銀河の外だろう。

3次元と4次元の狭間には数多くの星から

ここを通過した船が止まっているように見えた。

3次元空間における私の体はそこを通過するには弱すぎたのだ、

1分もかからないうちに私は気を失った。


時間が過去から未来に向けて一定に流れているという

脳の錯覚から開放された私は

時のない世界で意識を取り戻した。


銀河の外の世界には星がひとつも見えない。

でもこの暗闇の中でかすかに見える世界があった。


残りわずかな空気と食糧しかないこの状況で自分の死を予感した。

宇宙を創造した神がいるとすれば、

自分一人の生死など何も役に立たないであろう。

銀河の外で見えたものの実態がわずかに確認できた。

それは自分の乗り物の数千倍、数万倍もありそうな灰色の柱のようなものが暗黒の宇宙に浮かんでいた。

その物体の回りには金色の光にを放つオーラのようなものに覆われているように見える。とりあえずそこが私の到達できる終着駅に思えた。


それ以外の選択肢は何処にもない。

その灰色の柱に近付くにつれて、

この世に生命として誕生した瞬間から現在にいたるまでの記憶が

わずかな時間のなかで高速でフラッシュバックした。

私の人生の終着駅はここだったのだ。



つづく・・・・・





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ