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俺は今、バスの中にいる。
そう、お前に会いに行くために。
会いてぇよ、雪。
そうだよ、会いたいから会いに行く。
それが今まで出来なかった。
お前が俺を受け入れてくれるか恐くて、いつも足踏みしてた。
でも、お前が俺のことどう思ったって、俺がお前を好きなことに変わりはねえから。
雪、お前はいつも気づいてないフリしてるけど、それって自分を守るためだろ。
雪は恐がりだからな、俺に言われたくねぇかもしれないけど。
早く、早く。
雪に会いてぇ。
雪はなんて言うだろう。
俺はなんて言うだろう。
「雪の日に生まれたから雪って名付けたんだって。単純だよね、うちの両親」
「そうだな」
お前にはぴったりの名前じゃんか。雪みたいに白くてはかなくて。
掴んでも掴んでも消えていく、雪。ほんとお前ぴったりだよ。
それに雪って人の心躍らすじゃん。
なんか分かんねぇけど楽しい気分になるじゃん。
お前もさ、そこにいるだけで人の心、わしづかみにするよな。
少なくとも、俺はもう苦しい限界だよ。
お前のせいでもう息も出来ないよ。
「私、雪って嫌い」
「なんで。お前だって雪じゃん」
「・・・そうだね」
あの時、雪は何を思ったんだろう。
自分の運命を知っていたかのような返事でもあったよな。
なんでだろぅな。
さみぃ。
気が付くと、そこには真っ白な雪が降り積もっていた。
雪。
バスから降りて、雪の家に向かう。
いつもは雪の母親がバス停まで迎えにきてくれるが、今日はいなかった。
そうか。
今日で10年だもんな、雪。
雪、俺は10年たった今でもお前を愛してるんだよ。
バカだよな、俺。
でもよぉ、こればっかりは仕方ねぇんだ。
なぁ雪、お前はこの10年間、何してたんだよ。
俺をほったらかしにして、どこで何してたんだよ。
早く俺のところに戻ってこいよ。
俺、一人で頑張っただろ。
雪の言うとおり、頑張っただろ。
もういいだろ。
その時、小さな雪が俺に舞い降りた。
気が付くと俺は、真っ白な雪の中に埋もれていた。
俺の上には天使みたいな雪が降り積もっていた。




