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人が死んでいる。
呆然と、高校生らしき少女がその死体を見下ろした。
死体は腹部を大きく裂かれおびただしい血が土をにじませている。土は血を吸い、奇妙な色に変色してしまっていて、見る影もない。、
少女がごくりと喉を鳴らすと、はじめて悲鳴を上げた。
人は人を呪い、呪われたその魂はまた人を呪う。呪詛を吐き出すそれは、もう断ち切ることができないまでにもなっていた。
それを唯一断ち切れることができる少女がいた。
迅雷の日霊と呼ばれる少女――夜天光 躑躅。
天照る神の名において、光でもって人々の呪詛を断ち切るものを、日霊と呼ぶ。
すくなくとも、彼女はそのように育てられてきた。生まれたときからその役目を負い、毎日鍛錬にあけくれる彼女に、ある日転機が訪れる。
それは躑躅にとって、好機になるかはいまだ分からない。
その糸をたどるには、時期はいまだ――早い。