とある限界集落の会議室
文才無くても小説を書くスレで、お題を貰って書きました。 お題:限界集落
「最近の若いもんは……」
会議の席で、長き沈黙を破って誰かがそう呟いた。
その村の誰もが、それを言うべきではないと知っていた。
知っていて尚、そう呟いてしまう気持ちには共感していた。
老々介護。放置老人。限界集落。
その全てに心当たりがあり、その全てが対策だった。
人手が足りないからいざと言うときは老人が老人の相手をする。
人手が足りないから常日頃のことは老人は一人で対処する。
そして人手が足りないままだから、集落は限界に近づく。
死ぬことは定めだろう。恐れはあるが覚悟もある。けれど無為に失われる事への覚悟
までままならない。
助けてくれとは言わない。
葬儀の手配をしてくれる者が欲しい。
この地で家を買い。この地で墓を買い。この地に住まう。
例え諸々の文化が尽きようと、次の世代がこの地の土で育った作物を食むのならば、
それはこの土地を継ぐことと同義だといえよう。
そう、年老いた世代の見解は一致している。
だが、来ない。
交通の便が悪いのだ。
流通が滞っているので、生きる為に作付けに終われる日々を送ることになる。
病で死するは定命の者の定めと言えど、治せる可能性が日々高まっていく中で病を定
めだと達観できる若者は多くない。畢竟、病院のない村には若者は来ない。
気合でどうにかなるだろう。そんな根性論、トレーニング方法から敷地、努力の成果
を見せる舞台にルールで定められた範囲での採点以外では、過程も終わりも答えもない
人生にまで求めるものではなくなっている。
舞台も何もない。ルールも何もない。永遠に根性だけで筋トレをしていろと言われ、
一体何人がそれを成し遂げることができるというのか。
根性にひとかたならぬ自負を抱いてこの村にやってきた者も、この村で日々を過ごす
内に少しずつ元気が失われていき、そして「もう限界だ。もう無理だ」と言うのだ。
「まあ、仕方ないさ」
誰かがそう言った。
誰もがそう言うしかないのだと分かっていた。
「他に特色はないんだ」
「無理にしても続きはしない」
「だからこの村のままの姿でいるしかない」
「それが若いもんに辛い思いをさせるのだと言うのなら……」
口々に挙げられていく意見は、詰まるところこれまでの会議で何度も語られてきたこと
の焼き直しだった。
「もう少し、求めないようにするしかない」
そして当然の如く、結論もこれまで通りと同じになる。
だが、それは前進の為のもののつもりであった。
「もう少し老々介護の手順を見直そう」
若者が重責でつぶれないように。
「一人で行う日常の作業を見直し、行動の効率を上げ、負担を減らそう」
若者が労働でつぶれないように。
「これまで以上に限界に挑戦しよう」
そして若者の手本になるように。
会議に集った老人たちは、笑顔でバルクアップされた筋肉をヒクつかせ、お互いにまだ
まだ現役なのだと行動で示す。
村は貧しい。
だから人力で輸送し、人力で農作業を行い、人力で家を建て、人力で墓石を削りだし、
人力で熊などの害獣を追い払い、人力で道路の改修を行ってきた。
若者がきても介護で忙殺されることがないように、日々ボディバランスを気にして生き
ていこう。最近の若者はか弱い生き物なのだ。
そのアグレッシヴでマッシヴな言動こそが若者が逃げ出している要因だとは気付かず、
彼らは朗らかに笑っていた。
人体の限界に挑戦し続ける集落がそこにあった。
どのような面構えのマッシヴな御老方なのかは、読んでいただいた貴方の脳裏に浮かぶそれが答えです。
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99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/07/25(木) 10:24:38.59 ID:GvakuxCp0
お題下さい
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/07/25(木) 10:32:36.71 ID:某BNSKスレ民
>>99
限界集落
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/07/25(木) 12:57:00.86 ID:GvakuxCp0
把握