少年よ!入学じゃぼけ!
某年、4月8日午前7時20分、俺、鈴木啓太は桜木大学名物桜木坂を只今歩行中である。今日はまぁ、世にいう入学式というやつなのだ。
まぁ、なんだ。俺はどこにでもいるいたって普通の特に運動ができるとか、頭がいいとか、そういう取り柄もないふつーの大学生になるわけだ。そして、今日からわたくし、鈴木啓太が通います学舎はといえば、これまた、特に良い企業に就職できるとか、有名人が通っているとか、そんなものは一切ない、せいぜい市役所職員のようなぺーぺーだが、安定して暮らしていける公務員を数多く排出している。というところが取り柄の大学である。まぁ、偏差値もそれほど高くはなかったし、俺にはぴったりの大学だったわけだ。
ただ、なんだ。校舎にたどり着くまでの、異常に、長い、この坂を毎日登らなければならないと思うと少し憂鬱ではある。
そんな、長い坂を現在歩行中というのは先ほど申し上げた通りだ。
「啓太君おはよう!」
そんななか、だるそーに歩っている俺の背後から、もうそりゃイケメンな男が清々しい声で挨拶してくるではないか。まぁ、コイツは影宮徹という顔だけでなく名前までイケメンな男なのだ。
「そんなに疲れた顔してどうしたのかな?」
「うわっイラつくそんな清々しい顔で俺を見るな!」
「いやいや、啓太君は辛口だなぁ!」
そんなことを言いながらはにかむ、コイツを見ていると苛ついてくる。だいたい朝から両脇に美女抱えて登校するとはどこの富豪だ。
「聞こえてますよ、啓太君。これは紳士のたしなみですよ。啓太君。」
とんだたしなみがあったもんだなぁ、おい。
「それでは、まだ見ぬ子猫ちゃんが僕を待っていますので、では!」
そーだ、消えろ!速やかに!この女ったらしエセぺてん師が!毒リンゴ食って死んだ姫さんにキスして、お前も毒で死ね!
というような、にちじょーてき会話も終わりこれみよがりに咲き誇っている桜の枝を無差別にへし折るという、健全な大学生にあるまじき所業を行いながら、わたくし鈴木啓太はここ桜木大学への入学を果たしたのであった。
完