第二章【過去の罪】
俺に名は無い
両親は死んで、今はどこにいるのかもわからないからだ
故に名前もわからないままだ
どこにでもいるようなホームレス
今に至るまではそんな人生だった
俺は今に至るまで様々な仕事をこなしてきた
グレーな仕事…労働法を無視したような環境…お金を渡さず、ボロ雑巾のように労働者を使い倒す職場…
本当に様々あった
でも、ホームレスの俺を雇ってくれる場所はそんな環境しかなかった
そんな時、ある人が現れた
それが俺の初めての友人
“シオ“という女との出会いだった
シオ「ねぇ…大丈夫?」
名もない少年「ああ…?こんな暗い路地裏でこんなに汚ねえやつに話しかけるのは誰だ…?」
俺はそう言いながら視線をあげる
そこには美しい容姿の白髪の女の子が立っていた
シオ「汚くかったら話しかけたらダメなんですか?」
その女はそう言ってくる
名もない少年「別にそんなこと言ってないだろ?で?なんのようだ?」
本当に何のようで俺に接触してきたのか
俺はわからなかった
シオ「挨拶をしにきただけですよ」
そいつはそんなことを言ってくる
名もない少年「なんだ?煽りか?あぁ?」
捻くれ者の俺はそんなことを言う
シオ「どこが煽っているんですか?私は断じて!煽ってなんかいませんよ!」
絶対煽っている。間違いない。
シオは続ける
シオ「私は”シオ”!”シオ・レッド”です!ぜひそう呼んでください!」
そいつは名を名乗る
それに釣られ…俺も名を名乗ろうとする…が…
名もない少年「名を名乗られたら…俺だって名を名乗らざえなくなるだろうが…でも、俺には名前がないんだよ。両親がいないからな」
そう、俺には両親がいないゆえに名前がないのだ
シオ「じゃあ、私が名付けてあげましょう!!」
ブレティカ「はぁ?」
そりゃそうだ
初対面のやつから名前をもらうなんて思いもしない
名もない少年「お前…ままごとかなんかだと思ってのか?」
シオ「そんなことないですよ!ただ、名前がないのは何卒、不便かなぁと思いまして」
名もない少年「確かに不便だけれど別にお前から名を貰いたいわけじゃないぞ」
そういってみるがもう遅かった
シオは何かぶつぶつ言いながら喋り込んでいる
きっと、俺の名を真面目に考えてくれているのだろう
ぶっちゃけ、名前云々はどうでもいい
ただ、俺のことでこんなにも考えてくれている…
その事実が結構嬉しく思う自分がいた
シオは口を開く
シオ「ブレティカ!!ブレティカはどうでしょう?いい名前だと思いませんか?」
名もない少年「ブレティカ…いや、別にいいんだが…その…苗字とかはないのか?」
シオ「あ」
薄々感じでいたが…
多分こいつは馬鹿だ
俺は確信する
シオ「苗字なんてどうすればいいんですか!!私と結婚でもしろってんですか!?」
名もない少年「そんなこと言ってねぇし、したくねぇよ…」
シオ「ひどい!!」
俺は呆れる
名もない少年「はぁ…ちなみに?名前の由来は?」
シオ「はい!!血生臭いので血のブレッドから取りました!!」
名もない少年「やっぱバカにしてるよなぁ!?お前!?」
シオ「ブレティカさ〜ん」
鼻歌混じりに声が聞こえる
相手はもちろんシオである
名もない少年「今日も来たのか?暇人め。あと俺、まだ、その名前を認めたわけじゃないんだが…」
シオ「いいじゃないですか〜ブレティカ...私がつけてあげた名前ですよ?もっと嬉しがるべきです!」
名もない少年「俺は別に名前なんていらねーんだよ」
俺は淡々と答える
シオ「いやいや、名前は必要でしょうに」
シオはそう答える
ブレティカ「で?なんのようだ?」
シオ「ふっふっふっ…」
来た理由を尋ねるとシオは気味悪く笑う
なんだこいつ…
シオ「じゃじゃーん!」
そういいながら後ろに隠してあったものを見せてくるのだった
名もない少年「これは...?」
シオ「おにぎりですよ!おにぎり!まさか知らないんですか!?」
名もない少年「いや、知っているが…だからなんだ?」
おにぎりを出してきた理由はなんだろうか
まさか、ホームレスの俺の前でこれみよがしに食べるとか…そんなことか?
シオ「なんだってなんですか?今日はあなたにおにぎりをあげるために来たんですよ?」
名もない少年「マジ?」
シオ「大マジです」
まさか、シオが俺のためにおにぎりを持ってきてくれるなんて
名もない少年「いいか?俺は最近空腹続きだ。だから、今更冗談なんて言わないでくれよ?」
シオ「冗談じゃないですよ。はい、どうぞ」
そう言うとおにぎりを差し出してくるシオ
名もない少年「それじゃあ…遠慮なく」
俺はおにぎりを頬張る
名もない少年「…美味い!?」
シオ「私が作ったんですから、当然です!」
胸を張りながらそんなことを言ってくる
いや、それより、シオがこんな美味ものを作れることに驚いた
そう考えていた刹那
『グウゥゥゥ…』
突然、そんな音が鳴る
シオ「あ…」
音の発生源はシオだった
名もない少年「お前も…腹減ってるのか?」
俺は問う
シオ「仕方ないじゃないですか!あなたのこと考えすぎて自分は朝ごはん食べることを忘れちゃったんですから!」
名もない少年「仕方なくないだろ…」
俺は呆れる
朝ごはんを抜いて、他人の料理を作るやつがあるか?普通
名もない少年「半分食べるか?」
俺は半分食べたおにぎりをシオに差し出す
シオ「か、間接キス…」
名もない少年「嫌ならいいんだ、嫌なら」
シオ「嫌じゃないけど…」
シオはなぜ動揺しているのか
人が食べたものは食べれないっていうのか?
なんとも潔癖なやつだ
『グウゥゥゥ』
2度目の腹のうめきがなる
シオ「ああ!もう!お腹空いた!貰います!!せっかくあげたのにごめんね!」
そういいながら俺の手から半分のおにぎりを取る
そして、一撃で口の中に詰め込む
シオ「…!?ゲホッ…ゲホッ…」
名もない少年「言わんこっちゃない…」
本当に馬鹿なやつだ
シオ「私と勝負しましょう!」
あって早々、そんなことを言ってくるシオ
名もない少年「やだよ」
シオ「なんで!?」
絶対めんどくさいため、やりたくない
シオ「いいじゃ〜ん。ブレティカ〜やろうよ」
名もない少年「俺はブレティカじゃねぇって何度言えば…」
シオ「気に入っちゃったからさ…そういうことにしてくんない?」
名もない少年「いやだ」
盲点だった
こいつはどうせ断ってもうるさいってことに
めんどくさすぎることに
名もない少年「はぁ…一様、何がしたいかだけ聴いてやる」
シオ「そうこなくっちゃ!」
おれは仕方なくそう答える
シオ「あなたにアホとかバカとかいわれて実は私、心底腹が立つんですね。な・の・で!武術と学力!この二人で勝負しませんか?」
どうやらシオはバカといわれたことが心底腹立つみたいだ
ただし、俺の中で一つ疑問が生まれる
名もない少年「学力はわかるが…なぜ武術?」
そう、べつに武術で競う必要性はないのだ
シオ「はい!あり得ないと思いますが、万が一学力で負けても武力でボコせるかなぁと思いまして!」
名もない少年「なんだこいつ…」
俺は武術とかそう言った類にはかなり強い
だからこそ
名もない少年「お前…俺に武術で勝てると思ってんのか?」
そう言う
か弱そうな、それも女子
力の差はあるだろう
だが、俺はシオという少女を見誤っていたのかもしれないと
次の瞬間思うこととなる
シオ「あなたこそ私に勝つ気で?」
刹那、一瞬…ただ、すごい迫力が俺を襲う
俺は思わず、後退りしようとしてしまうほどに
シオ「もしかして…怯えてます?」
名もない少年「お前…何者だ?」
再度聞き直す
シオ「私はシオ。ただのか弱い女の子ですよ」
シオは当たり前かのようにそう言った
名もない少年「嘘だろ…」
数日後、シオは紙を持ってきた
どうやら、本当に学力勝負をするため、テストを持ってきたみたいだ
そして…俺は恐怖で怯える
その理由は
シオ「ほら!!私の方が賢いじゃないですか〜!」
そう、シオに学力で負けてしまったのだ
いや、この数日間で何回も解いていた可能性もあるが…
まぁ、シオの性格的にありえないとすぐに感じた
名もない少年「俺の頭が…悪すぎるのか?」
シオ「あのさ…私の頭がすごいいいとは思わないわけ?」
名もない少年「思うわけがないだろ?」
シオ「ひどい!!」
だが、実際にシオは頭が良かった
俺よりも
シオ「もう私のことをバカにできなくなりましたね〜お馬鹿さん?」
名もない少年「うぐ…うぐぐぐ…」
言い返せすことができない
事実であるから言い返すことができないからだ
名もない少年「一様…カンニングとかしてないよな?」
シオ「私はイカサマが大嫌いです。だから、そんなことあり得ません!」
当然、そう返すシオ
まさか…こんなにも頭がいいと思わなかった
名もない少年「まだだ…武術が…武術がある!!」
シオ「えー…女の子に暴力を振るうんですか〜?」
名もない少年「お前が武術で勝負しようといったんだろうが!!」
俺は言う
正直、自分自身、学力で負けるとは思わなかった
だからこそ、俺は武術で逆転するしかないのだ
名もない少年「とりあえず!さっさと戦うぞ!!」
シオ「この場所ならいいでしょう」
俺がシオに連れてこられたのは人気のない草原だった
名もない少年「ここで戦うのか?」
シオ「はい!ここなら滅多に人は来ませんし、見晴らしもいいので戦いもしやすいはずです!」
確かに、森の中とか街の中とかよりかはこの環境の方が良いだろう
名もない少年「で?何で戦うんだ?」
シオ「それは簡単!体術でバトルしましょう!絞技でも投げ技でもなんでも良いですよ!」
体術…
普通であれば、男が女に武術で勝てるわけがない
筋肉量などが明らかに違うからだ
それに俺は様々な死地を生き抜いてきた
少なくとも一般人よりはかなり強いだろう
つまり学力勝負のようには負けることはあり得ないのだ
しかし、シオと言う女
こいつは異質だ
だから、正直、イレギュラーなことが起きてもおかしくない
故に俺は慢心はせず、行こうと思う
シオ「さぁ、準備できましたか?」
名もない少年「いいぜ?かかってこいよ?」
葉を巻いた風が頬を掠める
そして、カラスがなく音で両者は動き出した
シオ「どうしたんですか?びびってます?」
名もない少年「相手を警戒するのは当然だろ?」
シオ「それもそうですね」
明らかに戦闘前と立ち姿が違う
その立ち方は強者のそれだ
俺が死地で見てきた強者よりも遥かに隙のない立ち姿
本当にこいつは何者なんだ?
このままじゃ埒が開かない
そう思い俺はかがんでシオの足を蹴ろうとする
シオ「そんな攻撃効きませんよ」
まぁ、なんとなく予想はついていた
シオは拳で殴ってくる
俺はそれを回避し、その過程で少し体を上げ
拳を繰り出す
『絶対当たる』そう確信した攻撃だった
名もない少年「…マジ!?」
寸前で避けられる
絶対避けられるような攻撃ではないはずだった
となると…まさか…“フェイント“か?
そんなことを考えているとシオは俺の思考を読んだように
シオ「そう…フェイントですよ。そんなことを考えていたんでしょ?」
次の瞬間、みぞおちに拳が飛んでくる
俺はそれをモロに喰らってしまった
名もない少年「グッ…」
俺は思わず倒れようとするが寸前で耐えた
驚いたのはそのパンチの火力
明らかに一般人がそれに女性の出せる火力ではない
名もない少年「ハッ…ハハ…お前ほんとに女か?火力がおかしいんだよ…」
俺はそう聞いてみる
シオ「私は女の子ですよ。少しトレーニングはしてますが…だって、自分の身は自分で守らないとですから…」
そういいながらシオはポケットからあるものを取り出す
それは“黒帯“だった
シオ「私は現在12歳でありますが、当時の私は柔道場に通っていました。私はね…あなたが思っているより強いんですよ?私は齢10という異例の速さで道場破りに成功した異例な存在なんですから。黒帯はその時の師匠にもらったものです」
10歳で道場破り…それはとてつもなくすごいことなんだろう
だが、俺はそこには驚かなかった
なぜかというと
名もない少年「お前…今、12歳だって?俺と同い年じゃねえか…」
シオ「驚くとこそこですか!?」
俺はこいつと同い年らしい
いや、正確に俺が12歳からはわからないけれど
大体、最後の記憶から逆算で出した年齢だ
それに驚きすぎて、道場破りとかぶっちゃけどうでも良くなってしまった
名もない少年「同い年なら…尚更負けられないな…」
シオ「すでに学力という面で負けているのに?」
名もない少年「それとこれでは話は別だ」
そう言うと俺はシオに突進する
とりあえず、今のシオには目に見える弱点がない
なら、しっかりと観察して、隙を見つける必要があるのだ
そして、シオから拳が飛んでくる
ん?
見つけた…シオの弱点
シオ「…!?」
刹那、今度は俺の拳がみぞおちにぶつかる
シオ「…やるね…その動きからするに気づいちゃった?」
名もない少年「ああ」
シオの弱点
“それは拳を繰り出す時に息を吐き出す“というものだ
一種の癖のようなものだろう
人間は息を吐く時、体がリラックスしたような状態になる
つまり、その一瞬だけ、ほんの少し…だが、大きな隙が生まれる
シオ「…ハハ…すごい観察眼…バレないと思ったんだけどなぁ…」
シオはそんなことをいってくる
こんな会話をしている場合ではない
シオは今、弱っている。
なら、今、畳み掛けるのがいいだろう
俺はそういうとシオの手を掴み
そのまま押し倒した
シオ「…な、何を…!?」
名もない少年「何って…動けないようにしただけだが…」
シオ「…あ…あわわ」
シオが目を逸らす
名もない少年「で?お前はもう動くことができないが、これからどうする?」
俺はそうシオに聞く
シオ「…ま…まいり…ました。」
そう降参宣言をするシオ
シオ「…」
名もない少年「…」
両者、黙り込む
先に口を開いたのはシオだった
シオ「い…いつまでそうするつもりですか!!早く離してください!!」
突如、目を逸らしながら大声を出すシオ
そんな姿を見て、俺は
名もない少年「お前、案外可愛いな」
シオ「ヘっ!?」
シオ「…可愛い…かわ…えっ…可愛い!?!?」
みるみるうちに顔が赤くなっていく
この発言は二つある
一つ目はシオに学力で負けて、なんかムカつくので恥をかかせたいと思ったからだ
こいつと関わっていて、数日だが、わかったことがある
こいつはプライドが高く、同時に乙女であるからだ
そのことについてはおにぎりのくだりでわかった
故に“可愛い“など急にそんなことを言われたら動揺を見せるだろう
と考えたからだ
俺には理解できないが、女性とはそういうものだとどこかで読んだことがある
そして、二つ目はシンプルにあの場でそう思ったから
あいつにいつも振り回されていて、顔を見る時間なんてなかった
だが、あの場所であの状況で改めて顔を見た時
純粋にそう思ったからだ
名もない少年「なんだよ。俺には自由に発言する権利もないっていうんですか〜」
シオ「そうじゃないけど、その、あぐぅ…」
変な声をシオは漏らす
シオ「とりあえず、離れて!!ね?早く!!」
名もない少年「いやだ」
シオ「はぁ!?」
今思うとこの後の発言は本当にガキだったなぁと思う
思い出すだけで火を吹きたくなるような感情に苛まれる
名もない少年「お前はすでに俺のもんだ。それなのに、なぜ、俺から話す必要があるんだ?」
俺はこの状況を楽しんでいた
この発言も拾った小説から思い出した発言
だから、乙女であるこいつには絶対効く
そう、確信したからだ
シオ「……な…な」
そんなことをぶつぶつ呟くシオ
そろそろネタバラシをしよう
名もない少年「嘘だよ。なぁシオ〜?恥ずかしかったか?」
今思うとクソガキだなぁと自分で言っといて思う
シオ「……許さない」
名もない少年「…え?」
シオ「乙女心で…遊ぶなぁ−!!!」
刹那、俺は空中に浮かび上がる
その後に俺は蹴り上げられたのだと気づく
その後の記憶は無い
名もない少年「…うっ…あぁ…?」
間抜けな声を出しながら目を開ける俺
目の前には星空が広がっていた
名もない少年「やっぱ、星座ってどう見ても名前通りの形には見えないよなぁ…」
ポツリと…どうでもいい独り言を呟く
名もない少年「帰るか…」
そう言いながら俺は立とうとする
その過程である少女の姿が見えた
名もない少年「…いたのか」
俺はそいつに話しかける
相手はもちろんシオである
シオ「…ばか」
小さくそんなことを呟くシオ
名もない少年「ごめんって…ほんの冗談のつもりだったんだよ」
シオは何も言わない
これは…かなりまずいかもしれない…
名もない少年「…スゥー…いや、マジで…すまんとは思ってる…あの時行った“可愛い“って言葉は一様…本心だからさ?な?」
シオ「…ばか」
くっ…全然機嫌を直してくれない…!!
どうしようかと…そう考えていた時…
シオ「私の家に来てくれたら…許したげる…」
名もない少年「…え?」
そんな予想外の発言に俺は困惑してしまう
シオ「ただいま〜って誰もいないんだけど…」
シオの家に帰る頃にはすでにシオの起源はだいぶ良くなっていた
名もない少年「そんなことを言うってことはどこかに出掛けてたりするのか?」
俺は聞く
シオ「…まだ…許してないから…」
名もない少年「はは…勘弁してくださいよ…」
俺はそんなことを言う
自業自得だと言うのになんとも傲慢なやつだ
シオ「座ってください」
気づけば居間に案内されていた
言われるがままに俺は居間にある椅子に座る
同時にシオも席に座った
何を話すのだろうか…そう考えていた…
そして、先に口を開いたのはシオだった
シオ「あなたと初めて会った時…両親がいないっていってたよね。実は私も同じなの」
衝撃的なことを告げる
名もない少年「…まじか」
思わず、そんな言葉を漏らす俺
名もない少年「そう思うと俺たちって案外おんなじような境遇なんだな。年齢は多分…一緒だし…」
シオ「ええ」
シオは続ける
シオ「私も同じような事を思いました。初めてあなたと話して、その話を聞いた時…何か運命を感じたんです。そして、私は思いました。あなたの孤独を私なら埋められるかもしれないって…そして…私の孤独も埋まるんじゃないかって…」
名もない少年「運命ねぇ…」
俺はつぶやく
シオ「私の両親は5歳の時、放火で死んだんですよ…両親の亡骸を見た時はひどく動揺しましたし、それは今でも瞼を閉じると時々、その光景が映るほどにね。しかも、まだ、あの放火魔は捕まっていないらしいです…そンなんだから、私はあの放火魔をまだ恨んでる…だから、私は柔道を学んだ。いつかまたあいつに会った時、復讐できるように」
そんなことを話し続けるシオ
正直、俺にはシオの気落ちはわからない
だって、俺は両親は生まれた時からいなかったし、それが普通だったからだ
故に俺に“大事な人を失う“という感情はわからない
名もない少年「俺は…生まれた時から両親がいない…だから、お前の辛さはわからない…お前の気持ちに寄り添うことは俺はできんぞ?」
シオ「本当に素直な人ですね。別にいいんです。実際、あなたと話すことで日に日に私の孤独は埋まって言っている気がするんです。ねぇ…あなたはどうなんですか?」
そんな事を聞いてくる
ぶっちゃけ…最近は充実した日々を送っているなぁとは薄々感じていた
理由はもちろんシオが来てくれるからである
会って数日だがこいつと話していると案外楽しいものである
逆にこいつと会えない夜の時間帯は少し寂しい
実はそんな理由もあって、こいつの家に来たのは単純にこいつと関われる時間が増えるため嬉しいと思う自分がいた
名もない少年「俺も…お前と話している時は大体そんな感じだ。楽しいんだよ。お前と話してると」
純粋に思った気持ちをぶつける
シオ「そう言ってもらえると…案外嬉しいですね!」
シオが少し元気になる
それをみて、俺は安堵する
シオ「あ…今、安心しましたね?私の機嫌が少し良くなったからって。しょうがないですね〜今日は嬉しいことをたくさんいってもらえたので特別に許してあげましょう!」
名もない少年「それは嬉しいこったな」
前から思っていたが…こいつ…観察力がすごいな…
ふと、今にかけてあった時計を見ると時刻はすでに9時を超えていた
名もない少年「…んじゃ…そろそろ帰るわ。帰るとこないけど」
俺はそうシオに言う
シオ「何いってんの?今日は泊まってくでしょ?」
名もない少年「…えっ?」
俺は早速風呂場に案内された。
シロ曰く、『汚い』らしい
まぁ、当たり前か
最後に体を洗ったのは5日前とかか?
ブレティカ「うぅ…あったけぇ…」
もしかしたら人生で初めてかもしれない
暖かい水の中に入るなんて
ブレティカ「体を洗うなんて地獄かなんかだと思ってたんだけど…俺がおかしかったのか…昔から銭湯とかから出てくる奴らは頭がおかしいんじゃねぇかと思っていたけれどまさかおかしいのは俺の方だったなんて…とほほ…」
シオ「あのさ…ブレティカ…一様夏なんだけど…暑くないの?」
暑い?全然、むしろ心地いいくらいの温度だ
名もない少年「俺はだから…はぁ…全然、むしろいい感じ?」
シオ「それほんと?一様真夏の風呂だよ?ほんとに暑くないの?」
名もない少年「暑くねぇって…」
そんなことを言いながら俺は風呂を出ようとする
この時間がずっと続けばいいなぁと思っていたが…入りすぎはよくないと聞くので念のためだ
そして、風呂場の扉を開ける
シオ「…あ」
名もない少年「…え」
言い訳をさせてほしい…
まず、この風呂場には二つの扉がある
風呂場に繋がる扉が一つと
そこにつながる脱衣所…そこから、居間行くためのところに扉が一つ
そんな構造だからさ
シオ「な、なんで出てきてんの!?!?変態!?!?えっち!!!」
名もない少年「扉の外から話してると思うだろうが普通!!」
思わず、近くに置いてあったタオルで俺のプライベートゾーンを隠す
シオ「そ、そもそも風呂場の扉はぼやけてても外が見えるんだから…私がいるってわかるでしょ!!」
確かにそうかもしれない、実際、この扉ならぼやけててもシオがいることくらいなら中からわかるだろう
ただ、一つ問題があった
それは…
名もない少年「そもそも…俺がそんな事を気にする奴だと思ってんのか!?」
そう、俺は戦闘時以外、ほぼ脳死で生きているような男だ
故に風呂場の外のこととかそんなことは考えない
シオ「知らないですよ!!もっと周りを見てくださいよ!」
ごもっともである
名もない少年「とりあえず…出てってくれよ!!」
シオ「言われなくても出て行きますよ!!」
シオが扉を開け、勢い良く扉を閉める
名もない少年「…はぁ」
最悪だ
脱衣所に置いておいた服を着て、俺は今に向かう
居間には料理とシオがいた
目が合う…気まずい…
シオ「もう…怒ってないですから…引きずっても仕方ないでしょ!あれは事故!!そう事故だから!!」
そんな事を言ってくる
しかし、俺の頭に突如…疑問が浮かんだ…
ありのままの疑問をシオにぶつける
名もない少年「ところで…お前なんであそこにいたんだ?」
シオ「へっ!?」
明らかに動揺している…こいつまさか…
名もない少年「…色欲だな」
シオ「違う!!違うから!!」
シオは叫ぶ
名もない少年「なぁ…シオ?」
シオ「…はい」
名もない少年「正直に言えよ?」
シオ「……はい」
名もない少年「覗きに来たんだな?」
シオ「…うぅ」
情けない声を上げるシオ
名もない少年「なんでそんな事をしにきたんだ?」
シオ「…だって」
この次のシオの発言に俺は驚く
シオ「気になる人のことを知りたいと思うのは普通じゃないですか!!」
名もない少年「……ん?」
気になる人…?
名もない少年「えーっと…それってどういう…」
当然の疑問だ
みるみるうちにシオの顔が赤くなる
シオ「…はぁ!?本当に…本当に本当に!!物分かりが悪い人!!」
そう言い捨て、どこかに行ってしまった
名もない少年「…飯冷めんぞ」
俺はそんなことを考えながらとりあえず、黙々とその料理を食べ始めた
そうしてすぐに朝がやってきた
昨日ははちゃめちゃなことが多すぎて時の流れが早く感じたのかもしれない
そうして、今、俺は玄関の前に立つ
シオ「もういっちゃうの?」
そんなことを後ろから行ってくるシオ
名もない少年「流石に居候みたいな生活をさせてもらうのはもうわけないしな」
シオ「別に私はいいよ?いつまでも家にいて」
名もない少年「はいはい、優しいってこった。でも、大丈夫だからさ。だから、また…遊びに来てくれよな?」
俺はそう言いながら玄関のドアノブに声をかける
シオ「遊びに行くに決まってんじゃん!!」
シオは俺に向けて親指を立てる
俺は意地悪に言う
名もない少年「それにもう裸は見られたくないしな」
と
シオ「うわぁぁぁぁぁああああ!!!なんで言うの!!!ブレティカのばか!!」
名もない少年「どーどー、シオさん。落ち着いてくださいな」
シオ「あやすな!!」
そんな会話を続ける
その後…ドアノブに力を込める
『ガチャリ』という音がなる
名もない少年「じゃあな」
シオ「うん!!また、6時くらい?に行くね〜!」
名もない少年「おかしい…」
6時に来ると聞いていたので実は微かに楽しみで心躍らせていた俺にある違和感が襲う
いつまで経っても“シオが来ない“のだ
なんだか期待してた俺がバカみたいだな…
と、そんなことを考えていた時
通行人A「大変だ!!あっちの家で火事が…火が出てるぞ!!」
寒気がした
その声を聞いた次の瞬間
俺は走り出す
走る途中で多くの通行人が困惑していた
その方向へ向け、俺は走る足をやめない
走っている途中…ただただ、俺は今考えていることを振り払う
俺は初めて神様に縋り、神頼みをする
そして…やがて…火元についた…
火元はある一軒家であった
なんの変哲もない…ただの一軒家
ただ、その家には見覚えがあったんだ
名もない少年「シオ!!!」
そう、その家は紛れもないシオの家だった
俺は火の中に飛び込む
通行人たちの『危ないぞ!!』という声を無視しながら
名もない少年「シオ!!!シオーーー!!!」
ただただ、シオの名を叫ぶことしかできない自分に嫌気がさしながら、俺は名を叫び続ける
皮膚に当たる火が熱い
だが、そんな事を気にしている暇じゃなかった
名もない少年「…!」
やがて、キッチンに1人の人間が倒れていた
名もない少年「…シオ!!」
言わずもがな、そいつはシオだ
俺はそいつを抱え、窓にタックルし、窓を割って外に出た
名もない少年「…シオ…シオ!!」
わずかに呼吸が浅い
もう少しで……なんて考えが脳裏を過ぎる
俺はその考えを首を横に振り消し去る
シオ「…ぁ…」
名もない少年「…!!シオ!!」
シオが口を開ける
束の間の安堵と緊張が俺を襲う
シオ「…うっ…はは…やられちゃったよ…」
そんなことを作り笑いで言うシロ
名もない少年「誰に…やられたんだ…」
目星はついているのに俺は問う
シオ「…あの…放火魔だよ…まさか…こんな偶然…あるんだねぇ…」
シロは俺の顔を見ていたが焦点が合っていないように見えた
俺が拳を握りしめる
シオ「…復讐なんて…考えないで」
名もない少年「…は?」
思わず、そう答える俺
シオ「…あくまで私の問題だから…ブレティカが…関与する問題じゃないから」
呼吸がどんどん浅くなっていく
名もない少年「このまま指咥えてお前の痛々しい姿をみてろってか?」
俺は怒鳴る
シオはすでに体の大半の皮膚が爛れていた
可愛い顔が台無しだ
シオ「そう…言うことだよ…」
シオはキッパリいった
シオ「その代わり…」
その後…俺はシオからあるものをもらう
それは俺にとっての宝物であり、
“呪い“だ
シオ「私の…苗字を…もらってくれない?あなたが名乗ってくれたら…私と言う存在はあなたと一緒に生きていけるじゃん…それって…すごいいいことだと思わない?“レッド“。“ブレティカ・レッド“。赤い血…。ハハ…似合ってる…じゃん…」
そんなことを言うシオ
名もない少年「なんだよ…その言い方…お前は死なない!!死なないんだよ!!!」
シオ「人である限り…私もブレティカも…いつか死ぬ…ここが…私の死期だったんだよ…」
そういいながら、目を閉じるシオ
シオ「…ありがとう」
そんな事を呟きながら
あー…もうだめだ…意識が朦朧としてる。
私、シオ・レッドはそんなことを考えていた
最後に好きな人の手に囲まれて…私のことを考えながら死ねるなんて…素晴らしいよね…
でも、欲を出すなら…もっと生きたかったなぁ…この気持ちを伝えたかったなぁ…
そんなことばかり考える
実はね…あなたに話しかけたのには他にも理由があったの
あなたを初めてみたのは街の中
そして、初めてあなたをみた時、見窄らしい見た目の男の子だなぁ…くらいにしか思わなかった…
でも、君がゴミを拾うのをみて…何かに惹かれたんだよね…
“ゴミを拾う“なんて…誰にもできて…誰にもできないことだから…
私、思ったんだぁ…きっと、優しい人なんだろうって…
だから、あなたに興味が惹かれたの…
で、あなたと話している間に境遇も似ているってことを知って…
気づけば…好きって感情が芽生えてた
ああ……可愛いって言われた時本当に嬉しかったんだよ?
唯一、この世界に未練があるとしたら…
…君に…ブレティカに…『好き』って言葉を伝えられなかったことだなぁ…
そこで私の意識は途切れた
名もない少年「…」
遠くから消防車の音が聞こえる
後ろからメラメラと火が燃える
そして…目の前には今は亡き少女が横たわっている
今にも話しかけてきそうに
ただただ…自然に
名もない少年「ごめん」
俺はそう告げると俺は護身用のナイフを取り出す
名もない少年「俺は…無理だ」
そう言いながら俺は歩き出した
名もない少年「ここか…」
ついた場所は放火魔が逃げ込んだ場所
俺にとって、特定なんて簡単なことだった
そして、中に入る
放火魔「なんだ?」
そんな声が聞こえる
放火魔「ナイフなんて持って物騒だなぁ?俺が誰かも知らずに」
次の瞬間…俺は一瞬でそいつに距離をつめ…
首元にナイフを突き立てる
放火魔「…な!?」
俺の早さに驚いてるみたいだ
手にはピストルが握られている
しかし、暗くて気づかなかった
放火魔「おい!!それ以上動いたらこのピストルで…」
名もない少年「黙れ。動いたら殺す」
俺は無慈悲にそんな事を告げる
流石にこの距離なら相手が腕を上げ、ピストルを撃つ前に首を掻っ切れる
放火魔「お前は…誰だ!?」
相手はそんな事を戯言を呟く
名もない少年「俺の名前?今から死ぬってのになんで知る意味があるんだよ?」
俺は続ける
名もない少年「…だが、冥土の土産に教えてやんよ」
俺は手に力を込めて言う
ブレティカ「“ブレティカ・レッド“。じゃあな」
刹那、俺はそいつの首を掻っ切った




