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タニアの言葉に、セリオの胸がひどく痛んだ。
(……俺のおかげ?)
そんなはずはないとセリオは頭を振る。
タニアが動いたから事件が発覚したのだし、ジャックスがいなければ、首謀者を捕まえることはできなかった。
セリオの口からは悔しげな声が漏れる。
「……俺は、ただ任務を遂行しただけだ。結局、多くの手を煩わせることになったし、決して俺の力ではない」
自身の無力さに打ちのめされるセリオに、タニアが声をかける。
「そんなことない。セリオが見つけてくれなかったら、あの子たちは……きっと、もう……」
タニアは言葉を詰まらせ、ぎゅっと拳を握った。
「セリオは、誰よりも必死だった。アタシ、知ってる。だって……自分の力を使い切るまで、倒れるまで頑張ったもの。セリオはしっかりと任務をこなしたんだよ」
その言葉に、セリオの心臓が跳ねた。
「だからね。事件が解決したのは、セリオのおかげ。アタシはそう思ってる。誰が何と言っても」
セリオはキュッと唇を引き結ぶ。
自分を責めていた心が、少しだけ解けた気がした。
タニアの言葉が、セリオの心に染み渡り、優しく包み込む。
「任務を一人で完遂できなかった俺など、あの方に見限られてしまうかもしれない」
自嘲の笑いを浮かべるセリオに、タニアは憤慨した。
「あの方って、オーナーのこと? そんなことさせないわ! もし、オーナーがセリオを悪く言うようなら、アタシが懲らしめてやる!」
きっぱりと言い切るその様は、いかにもタニアらしかった。
セリオは思わず吹き出す。
「あの方に口答えをするなんて……。でも、その時は頼むよ」
セリオの笑みを見て、タニアも安堵の笑みを零す。
二人が笑い合っているところへ、タイミングを見計らったかのように、ジャックスがやってきた。
「おー、セリオ。起きたか!」
ジャックスの豪快な声にタニアは驚いて振り返り、セリオは思わず姿勢を正した。
「この度は、師匠の手を煩わせてしまい申し訳ありませんでした」
セリオが深々と謝罪をすると、ジャックスは豪快に笑い出した。
「いいってことよ」
そう言いながら、ジャックスは弟子の様子を検分する。
顔色は悪くないし、受け答えもはっきりしている。事件の後遺症はなさそうで、内心ジャックスは安堵した。
ひとしきり笑った後、ジャックスは少しだけ声音を引き締める。
「諜報なんて仕事は一人で動くことが多いから、それが体に染み付いているのだろう。だが、お前は、もう少し周りを頼ることを覚えろ」




