5-10
「タームは基本的には使用を禁止されている。だから市場には出回らない。希少価値の高いものってことになる。現に、タームの闇取引は高値で行われる。そんな希少性が高く、高価なものを、いくら取引相手を誘うためとはいえ、君なら3日間も垂れ流し続けるかい?」
タニアはセリオの言葉に首を傾げる。
「高価なんでしょ? 勿体無いじゃない。アタシなら、そんなことはしない。取引相手に場所を知らせるためだったとしても、日にちと時間を決めて、無駄な使用を控えると思う」
タニアの答えに、セリオは大きくうなずいた。
「その通り。禁止物を密輸しようとする不届者でも、それくらいの損得勘定は出来るはずだ。仮に、取引相手がいつ来るかわからないからという理由で、3日間かあるいはもっと長い間、タームを焚いていたのだとしたら、密輸者本人が既に廃人になっている可能性がある」
「せっかく稼いだのに、それじゃあ意味がないじゃない」
タニアは呆れたように首を横に振った。
「そう。取引相手のためにタームを焚き続けるのは、リスクが高すぎる。でも、実際にはそれが行われている。それはなぜなのか?」
タニアに問うというよりも、セリオは自分自身に問いかけるように呟いた。
タニアはセリオの言葉の意味をしばらく考えていたが、やがて閃いたとばかりに口を開く。
「ねぇ。もしかして、相手は誰でもいいんじゃない? ……あ~、でも取引をするには密売人はその場所で待っていなくちゃいけないから、結局ダメか」
自分の出した答えに自分でダメ出しをしながら、タニアは難解なパズルを解いているかのような表情で再び考え込んだ。しかしセリオは、そんなタニアの呟きを聞き逃さなかった。




