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セリオはその可能性をタニアに伝えた。それを聞いたタニアは、なるほどと頷いた。そしてさらに質問を続ける。
「ところで、なぜあなたはタームのことを知っているの? あなただって、この国の人でしょ?」
「俺は、つい先日まで隣国に居たんだ。だから、知っているだけだ」
セリオは淡々とした口調で答えた。タニアは、そうなんだと呟くが、その顔には疑念の色が広がっている。
「でもさ、そんな危険なものをこの国に持ち込んだ人がいたとして、同じ時にそれを知るあなたが現れる。これって、なんだか出来すぎている気がするのだけど?」
タニアの探るような視線がセリオに刺さる。しかし、それでもセリオは表情を変えない。
「俺を疑っているのか? だとしたら、見当違いだと言っておく」
「本当かなぁ?」
「俺の素性など、師匠にでも確認すればはっきりする」
セリオは真っ直ぐにタニアの目を見つめ返し、淡々とした口調で返す。その言葉にはどこにも揺らぎはなく、嘘や誤魔化しの色がないことがわかる。タニアは、セリオの目をしばらく見つめていたが、やがて諦めたようにふっと笑った。
「それもそっか。疑ってゴメン」
タニアの謝罪をセリオは無表情で受け流す。
「それで? 東の森でタームが使われていたから何だって言うの? 誰かが密輸してきてこの国で広めようとでもしているとか? まぁ、それはそれでヤバイことだけど」
タニアは、冗談めかしてそう告げる。しかしセリオは表情一つ変えずに答えた。
「その可能性もゼロではない。だが」
言い淀むセリオにタニアは首を傾げる。
タームが密輸され、国で広まることは確かに問題だ。だが、その目的を密輸と決めつけるには早計すぎる気がした。もしそうだとしたら、人気のない東の森でわざわざタームを使う必要はないのだ。街中で広めたほうが、より確実にタームの中毒性は広まるはず。
そう考えると、タームをこの国に持ち込んだ人物の思惑は別のところにあると考えるほうが自然だと思えた。
難しい顔をしてそう話すセリオをよそに、タニアからは軽い調子の言葉が飛び出す。
「そっかぁ。違うかぁ。じゃあ、誰かをおびき寄せるためとか?」
セリオはタニアの言葉にピクリと反応する。そして、少しの沈黙の後口を開いた。
「……どういうことだ?」
セリオはじっとタニアを見つめた。その目は真剣そのものだ。タニアはセリオにじっと見つめられ、少し居心地の悪さを覚える。
「え? いや、ただ何となくそう思っただけだから」




