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(アレを多く吸いすぎたか……手遅れかもしれないな)
セリオは、意識の無いタニアを静かに見つめた。
(こういうことになるから、誰かと行動を共にするのは嫌なんだ)
セリオは心の中で吐き捨てた。
一人で任務についていたのなら、もっと確実な情報を手にすることができていたはずだ。こんな中途半端な状態で調査を切り上げる羽目になるとは。
セリオは唇を噛み締めた。静かに横たわり固く目を閉じているタニアを冷めた目で見る。
力もないのに首を突っ込んだ結果。自業自得だ。
そうは思いつつも、セリオの胸中には自責の念が渦巻く。胸の中に苦いものが広がって、思わず顔をしかめた。
考えなしのタニアの行動にどうして自分が振り回されなくてはいけないのかと、腹を立てる一方で、意識のないタニアを放っておくことがどうしてもできない。
(師匠に連絡を入れたほうがいいか)
そんなことを考えているうちに、タニアが身じろいだ。そしてゆっくりと瞼を開く。その瞳には光が戻りつつあったが、まだ意識が混濁しているようだ。
セリオはタニアの意識がはっきりするまで何も言わずに待った。しばらくそうしていると、やがて意識がはっきりしてきたようで、タニアはハッとした表情で飛び起きた。
「ここ、どこ?」
タニアはキョロキョロと辺りを見回した。セリオは、そんなタニアに淡々とした口調で告げる。
「君の家だ」
タニアの顔色がサッと変わった。
「まさか私、また……」
森での出来事を思い出そうとするように、タニアはうつむく。しばらくすると沈んだ声で続けた。
「家に居るってことは、あなたが連れ帰ってくれたの?」
「ああ」
「そう……ありがとう」
タニアは力なく笑った。セリオは、そんなタニアを静かに見つめる。そして、少し間をおいて口を開いた。
「これでわかっただろう。君には何も出来ない。力もないのに無鉄砲に動くからこうなる」
セリオの語気が強くなる。タニアはビクリと肩を震わせた。
「……ごめんなさい」
消え入りそうな声で謝罪する。しかし、セリオは追及の手を緩めない。
「これに懲りたら、もう首を突っ込まないことだ」
セリオの突き放した物言いに、しばらくうつむいたまま沈黙していたタニアだったが、やがて顔を上げると意を決して口を開く。
「それは、できない」
タニアはセリオの目をしっかりと見て答えた。その目には強い意志の光が宿っているようにセリオには感じられた。予想だにしていなかった返答に、セリオは眉をひそめる。




