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タニアがセリオに苦手意識を持ったことになど全く気がつく様子もないジャックスは快活に笑っている。
ジャックスが認めている人物ならば、そこまで危険人物ということもないのかもしれないが、それでもタニアはなるべくセリオと関わりたくなかった。だから、出来るだけセリオを視界に入れないよう、真っ直ぐ前を向き、ジャックスとの会話にだけ意識を集中させた。
「それより、オジサン。昨日の件はどうなったの? 男の子の捜索は始まった?」
「ああ、それなんだがな」
タニアの問いに、それまでガハハと楽し気に笑っていたジャックスは、難しい顔になる。
「一応、両ギルドに捜索依頼は出した。だが、昨日も言ったように、冒険者ギルドも傭兵ギルドも人手不足でな。今朝の時点では、いい報告はまだなかった」
ジャックスの言葉に、タニアは唇を噛んだ。
「そっか。やっぱ難しいのか……」
「ああ。だが、そう気を落とすな」
ジャックスはタニアを励ますように言うと、側に控える弟子に視線を移す。そして、バシリとその背を叩いた。
「足りない人手を補うために、こいつがオーナーから派遣された。こいつならきっと、何か手がかりを掴んでくれるはずだ」
ジャックスの言葉に、タニアはチラリとセリオを見る。セリオはすまし顔のまま。そのどこか余裕そうな態度が鼻につく。タニアは小さくため息をついた。
(オーナーの懐刀だっけ? ……こんな細腕のヘラヘラしたヤツに何が出来るっていうのよ?)
タニアは、内心でそう毒づいた。しかし、まるでそのタニアの心の声を読み取ったかのように、セリオはにっこりと笑って見せる。
「あの方の満足する結果を出す。それが俺の史上命題だからね。まぁ、君よりは確実にギルドの役に立つと思うよ」
セリオの人を食ったような物言いに、タニアはムッとした。しかし、セリオはそんなタニアを見てケタケタと笑うだけだ。そんな様子にジャックスは呆れてため息をつく。
「セリオ、そう言う挑発はやめろ」
ジャックスの言葉に、セリオはまたもすまし顔に戻る。どうやらセリオは師匠であるジャックスには頭が上がらないらしい。ならばと、タニアはジャックスに向き合った。
「ねぇ。オジサンはこの人の師匠なんでしょ? つまり、オジサンはこの人より強いってことだよね? だったら、オジサンが捜索に出てくれればよくない?」
タニアの提案に、ジャックスは少し困った顔をした後、大きなため息をついた。そして、ゆっくりと首を横に振る。




