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ジャックスの説明に、タニアは眉間に皺を寄せる。
「ねぇ。この人がオーナーってことはないよね?」
視線をチラリとセリオに向け警戒心を露わにするタニアに、ジャックスは不思議そうな顔をする。
「こいつは、ただの諜報員だ。オーナーじゃねぇぞ。どうしてそう思った?」
「だって、オジサン。前に、オーナーは性格に難がある人だって言ってたじゃん」
即座にそう答えたタニアに、ジャックスはガハハと笑い声をあげた。
「ああ、そうか。そうだったな。だが、こいつのことじゃない。セリオはオーナーのいわゆる懐刀だ」
ジャックスの言葉に、タニアは目を大きく見開く。懐刀。それはつまり、オーナーの腹心であるということだ。
驚きに固まるタニアを、セリオは面白そうに眺めている。相変わらず柔和な笑みを浮かべているセリオの表情を見て、タニアは顔を引きつらせた。
彼の裏の顔を見た後では、その笑顔が逆に不自然に映る。笑顔というのは本来は相手に好意を表すものであるはずだ。しかし、なぜかこの青年の笑顔には違う意味があるような気がした。
ムスッとした顔でタニアが何も言葉を発せずにいると、ジャックスは困った顔をする。
「おいおい。ギルドの仲間なんだ。上手くやってくれよ」
ジャックスのその台詞に、タニアはセリオを視界に入れないようにするため、プイッと顔を背けた。
(こんな得体の知れない奴と、仲良くなんか出来るわけない)
そんなことを思っていると、セリオがヘラヘラとした笑みを浮かべて話に割り込んできた。
「ねぇ。師匠。オーナーって誰のこと?」
「ん? ああ、そうか。セリオにも伝えておいた方がいいな。オーナーってのは、アイツのことだ。外で、ギルドとアイツのことは口にしない方がいいからな。便宜上、オーナーと呼ぶことにした」
ジャックスのその答えに、セリオは目を大きく見開く。そして、すぐにそれは愉快そうな笑みに変わった。
「それ、あの方は了承されているの? 難色を示されそうだけど」
「アイツは何にだって嫌な顔をする奴だからな。まぁ、本当に気乗りしない時ははっきりとそう言うから、大丈夫だろ」
ジャックスはそう言って、またガハハと笑った。タニアはそんな二人の会話を黙って聞いていた。
何にだって嫌な顔をする? 気乗りしない時ははっきりと言う? オーナーって、そんなわがままな人なの? アタシ、そんな人の下で仕事をしていくんだ。
二人の会話からオーナーの人物像を垣間見たタニアは、少し狼狽えた。




