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セリオのその答えに、ジャックスは大きくため息をついた。
「よりにもよってお前を寄越すとは。もっとまともな奴がいただろ」
タニアはそんな二人の様子を黙って見つめることしかできなかった。
セリオは立ち上がると、何事もなかったかのように服の埃を払った。そして、ニッコリと人懐っこい笑みを浮かべた。
「そうは言いますけど。今回の件、俺で良かったと思いますよ。この人、隙だらけですから。他の人だったら、一体どんな扱いをされていたかわかりませんよ」
そう言って、セリオはタニアのほうにチラリと視線を向ける。ジャックスも釣られるようにタニアへ視線を向けると、やれやれといった表情でため息をついた。
「タニアはお前たちと違って、何の訓練も受けていないんだ。隙があるのは仕方がないだろう」
ジャックスの言葉に、セリオは驚いて目を見開く。
「何も? 本当に? それでどうして……」
「俺が推薦した」
セリオはポカンとした顔でジャックスを見つめる。そんな弟子をジャックスはフンと鼻であしらった。
セリオは無言でスッと立ち上がる。そして、静かにタニアの側に歩み寄った。無表情のまま自分を見下ろしてくるセリオにタニアは怯えたが、セリオは構うことなくしばらくの間黙ってタニアを見つめていた。
「ふ~ん。やっぱり隙だらけだ。使いものになりそうにないけどな。まぁ、洞察力だけはマシな方だけど」
ようやく発したセリオのその言葉に、タニアはピクリと眉を動かした。タニアの反応には気をとめず、セリオはジャックスを振り返る。
「師匠。本当に、この人で大丈夫なんですか? 足手まといは勘弁してほしいんですけど」
セリオの言葉に、ジャックスは即座に首を横に振る。
タニアはそんな二人の様子を眺めながら、ムカムカと腹がたってくるのを感じた。
「ねぇ、ちょっと」
タニアは痺れを切らし、椅子から立ち上がった。声は低く、しかし確かな怒気を帯びていた。
「さっきから二人だけで話しているけど、アタシにもわかるように話して。オジサン、この人、一体誰なの?」
タニアの圧に二人の男が一瞬黙り込む。セリオは先の展開を師匠に任せるように、チラリと視線を投げた。セリオの視線を受けて、ジャックスが呆れたように言う。
「……セリオ。お前、素性を話していないのか?」
「ええ。名乗りはしましたが」
「ったく、お前って奴は」
ジャックスはカシカシと頭を掻いた。
「すまなかったな。タニア。セリオは諜報員。このギルドの仲間だ」




